優二からの助言
久しぶりの親友登場です(決して忘れた訳ではありません!)
27話です
「よっ」
「おう」
連日のように真夏日が到来する中、僕は親友に呼び出された。そこはなかなか洒落た喫茶店で、コーヒーの良い香りが室内に漂っている。
「こんな店よく知ってたな」
「親父がコーヒー好きでな。色んな喫茶店を知ってるんだ」
「そうなのか。なかなか洒落てて良いな」
「だろ?」
「で、どうした? 用事って」
「最近全然お前とからんでないから、誘ってみただけさ」
「なるほど」
親しい友から呼び出されるのは嬉しいことだ。もちろんあいつらといるのも楽しいが、女には女なりの良さが、男には男なりの良さがそれぞれあると思う。
「お待たせしました。オレンジジュースと、コーヒーブラックです」
「相変わらず子供舌だな~w」
「うるさいな~。コーヒー苦手なんだから仕方ないだろう」
うん。オレンジ100%なのか、搾りたての感じがして美味しい。
「で、最近彼女達とはどうよ?」
「ぶっ。……いきなりどうした!?」
「お前のあの許嫁がこっちに到来して初めての高校の夏休みだ。何も起こらないはずはないだろ?」
う……このタイミングで……、相変わらず鋭いなー。
「じ、実は……」
僕は夏休み直前の留美と夏休み入ってからの結美から猛烈なアプローチがあったことを話した。
優二はズズズッとコーヒーをすすりながら考える素振りをする。
「……」
「……」
少し無言が続いた。
「どうし……」
「まあ、要するにいままで家族として見てきた可愛い義妹と、幼少の頃からずっと兄弟同然に過ごしてきた幼馴染に手を出そうか考えているわけだな?」
「お、おいっ。人聞きの悪い……」
「まぁ、しかしこの状況を乗り切る妙案がないわけではない」
「本当か!? なんだ、教えてくれ!?」
「決まっている。男の夢であるハーレムを作ることだ」
「……帰る」
「待て待て。お前をあんだけ慕っている子達と4Pできるまたとないチャンスだぞー?」
「馬鹿か!? そんなことしたら殺される!」
「けど少しはしたいと思うだろ?」
「……」
とりあえず僕はさっき立ち上がっていた体勢から座り直した。
「けど4Pはとにかく駄目だ」
「えー、修羅場見たいなー」
「楽しむな」
そして優二はコーヒーをすすってから言う。
「じゃあ、ちゃんと一人を選べるのか?」
「……」
確かに考えてなかったわけではない。しかしそれだと……、
「……それだといままでの関係でいられなくなるってか?」
「!」
図星を当てられ、僕はばっと優二の顔を見る。
「まぁ、お前の考えそうなことだな。あいつらとは仲良い分尚更だろう」
「……」
「しかしそれは彼女達のことを考えていると見せかけてお前のエゴだぞ?」
「! そ、それは……」
しかし言い返す言葉が出てこなかった。
「もう時は進んでいるんだ。前までの関係には戻れないさ」
「うぅ……」
「ハーレムが嫌なら、ちゃんと彼女達の中から一人を選んでやれ。それがお前のできる彼女達への誠心誠意の形だ」
「そ、それは……そうだが……」
「それも一つの優しさだぞ」
「ん……」
「もし一人を選んで関係が断ってしまったら、お前達はそこまでの関係だったということだ。そこはもう諦めろ」
「む……」
「残酷だが、それが彼女達のためであり、お前自身のためだ」
「……」
僕は何も言えず、ただ机の線を眺めるだけだった。そして飲み終わった後、遊ぶ気分にならなかったので僕達は早々に別れた。
帰りしな、僕は優二との話を回想する。
──時は進んでいるんだ。前までの関係には戻れないさ
──ちゃんと彼女達の中から一人を選んでやれ。それがお前のできる彼女達への誠心誠意の形だ
──それが彼女達のためであり、お前自身のためだ
「はあ……」
そういえば喫茶店から別れる時、あいつは冗談まじりにこんなことも言っていたな。
『ハーレム作りたかったらいつでも言ってくれ。相談にのるぞ?』
馬鹿野郎、そんなありもしないことを言うんじゃねー!
……。
しかしいつかはしないといけない決断。もしちゃんと選んでしまったら、あとの二人はそれから一体どうするんだろうか……。
もうお別れになってしまうのだろうか。
僕は一人勝手に妄想してなぞの寂寥感に包まれていると、もうアパートに着いていた。
「……ただいま」
「光範様」
「ミー兄」
「ミー君」
「……え?」
「お帰りなさい(お帰り~)」
なぜか2人までアパートの部屋の中にいた。
「お前らどうして……?」
「何言ってるんですかー。今日は4人で一緒にゲームする日じゃないですかー」
「え? あ……」
そういえばそうだったな。
「だから皆で揃って……え、ちょっと泣いてるんですか!?」
「え?」
「なんかもう既に目が真っ赤な状態だけど……」
「いや、これはその~……」
「神谷(優二)君と何かあったんですか?」
「え? いや、別に?」
僕はふいっと彼女達から目を反らす。僕が急いで涙を拭いていると、
「……許さない、神谷のやろー。ミー君を泣かしやがってー」
「え?」
「そうね。光範様の親友と思って、すっかり油断していたわ」
「え? お前ら?」
「よくは知らないけど、イケない人ね」
「え? え?」
「今から神谷狩りに行くぞーー!!」
「おー!!」
「お、おいっ! お前達落ち着けーっ!?」
僕はなんとか彼女達をなだめた。
まったくこいつらはと思いながらも、いつまで続くか分からないこの関係のケジメをちゃんと3人のために決断しないとな……。
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