南美の旧友 その2(後編)
なんかギャグっぽくなりました
25話です
わざわざここまで来てくれた南美の大切な友達に喜んでもらうために、僕は彼女達がリストアップした場所を案内する。とはいえ流石は南美の友達か、、デパートや名物だけでなく城跡や神社といった市内の旧跡、名所までリストアップしていた。
そして僕はそのリストに添って、さまざまな場所を案内した。彼女達は感嘆した表情で史跡を見ていた。また僕は彼女達のカメラ係を担当し、彼女達が気に入った場所を背景に4人の記念写真を収めた。
「光範様、光範様」
そしたら南美が僕に近づき、ぼそっと話しかける。
「ん? なんだ?」
「なかなか私達も一緒にここまで来れません。だからせっかくなんで気になる場所があったら、一緒に写真撮ってください」
「え? ……あぁ、そうだな」
彼女達が別のところを見ている時に、こそっと南美と二人で想い出写真も撮った。
そして県内名物のデザートを食べたり、ここで一番大きなデパートにも行く。彼女達は意外にもそこの中にあるゲームセンターで大はしゃぎしていた。
「よく中学校の帰り道に、みんなとプリクラ撮りに行ったわね~」
「うん、そうそう。そしたらさつきがさ~、彼氏がそこのゲームセンターに来てたから、急に態度が淑やかになってたよね?」
「そんなことあったね~」
「あった、あったww」
「ちょっと南美、ここまで来てその話!?」
「ふふ、ごめんなさ~い」
友達をからかう彼女が新鮮で僕は少しびっくりした。いつも僕のことを気にかけて、周りへの配慮を怠らない彼女が旧友の前では気を張らずに楽しんでいる。僕は彼女のまだまだ知らない一面が見れてとても嬉しかった。
そしてデパートの中のレストラン行って、僕達はしばらく休憩する。そしたら僕はトイレに行きたくなった。
「なーちゃん、…ちょっとトイレに行ってくる」
「あ、はい」
僕は用を足しに行った。それにしてもトイレがかなり遠くて、まかしそうになった。
(今日は皆楽しんでくれたかな?)
僕は心の中でそう気にしながら戻っていると、レストランからだろうか、なにやら他の声にまじってケンケンした声が聞こえる。
なんだと思いながら戻ってみると、南美が席から立ち上がって結構大きな声で怒っていた。
「どうしたなーちゃん!?」
「なんでそんなことも分からないの!?」
「おい、落ち着けって!」
「! 光範様……」
彼女は少し目をうるうるしていた。彼女の友達は驚いた表情で固まっていた。
「何があったんだ?」
「この子達が……光範様を愚弄しまして……」
「え!?」
「愚弄だなんて……それは言い過ぎよ南美……」
「そうよ南美ちゃん。他のお客さんもいるし落ち着いてっ」
「……」
彼女はストンと席に座る。それから皆から事情を聞くと、つまりこういった内容だそうだ。
「あれが例の許嫁君なんだ。悪くはないけど、あまり冴えた感じの子じゃないわね」
「うん、確かに。南美ちゃんが言ってたイメージとは大分違って、普通の男子ねw」
「そうよ~。南美ちゃんが言うからどんだけ凄い男子と思ったから気合い入れてきたのに~、ちょっと拍子抜けね~」
…………
「でしょ? みんな光範様のこと物凄い馬鹿にしてるでしょ?」
「……」
(いや、なーちゃん!! そう思ってくれる気持ちは嬉しいけど、どんだけ僕を盛って話してたんだー!?)
「あの、どういう風に聞いてたんですか?」
「えーと、彼は物凄い男前になって、キラキラ、ピカピカしているに違いないとか」
「私はだれかれ構わず優しくて、クラスの人気者になってそうって聞いてました……」
「勉強出来て、スポーツも万能で女子達からたくさんモテモテになっていると思う~とか~」
「……」
南美とは7年会ってなかったから、その歳月を経て僕のイメージが凄くなってる……。
「はあ!? それのどこが間違っているのよ!? そりゃあ多少スケベで鈍感なところもあるけど、私にとっては最高の男子よ! 他のどこ探してもこんな人いないわ! 私の光範様を馬鹿にしないで!」
「なーちゃん……」
……何だろう、嬉しいと同時にとても恥ずかしい。彼女の愛がすごい……。とにかく事情は分かった。この場をどう上手く収拾するべきか……。
と色々考えていると、どこからかこっちに向かって声が聞こえた。
「そうよ、その通りよ!」
「ミー兄はイケメンよ!」
明らかにバレる変装で留美と結美の二人がなぜかここにいた。
「お、お前ら……」
「ミー兄、ごめんね~。気になったからつい」
「そう私達は上村さんがミー君に不埒な真似をしないか監視していたの。でもね今回ではっきりしたわ」
結美は南美の手を取る。
「貴女は私の良き強敵よ」
「吉田さん……」
南美と結美と間で謎の友情が生まれる。留美もなんか頷いてるし、そして一方の南美の友人達はきょとんとしているし。
……なんだこれ?
「じゃあ帰りましょうか」
「……そうね」
南美は結美に連れられて、この場から帰ろうとした。
いや、待て待て! 収束収束!
そして僕は南美とその友人達の間を取り持ち、なんとか修復した。それから少しうろうろ回っていると、もう夕方になり、彼女達を駅前に連れて行く。
「あの、あの時は仲を取り持って頂きありがとうございました……」
「……」
南美はまだご機嫌斜めのようだ。
「いや、なーちゃんにとって貴女達はかけがえのない友達。ここで変に気まずくなってはいけないと思いまして……」
しかもなんか僕が原因みたいだし……。
「光範君……」
「……ふ~ん、南美ちゃんのために動くなんて、なかなかやるわね~」
するとゆるふわ系の子が僕に近づく。
「出た。はづきの男好きがw」
「貴方、南美ちゃんのこと好き?」
「え?」
いや、急にそんなこと言われても……。他の子達が見てる前で……。
「……大切な……い、許嫁と思っているさ」
「ふ~ん……それっ」
「え?」
彼女はあろうことか僕のほっぺにちゅっとした。
「ちょっ……はづき!!?」
「えへへ~っ、さっきのお礼~♡」
そして彼女はそそくさと駅の中へと行った。
「ちょっと上村さん、あれは一体どういうことよ!??」
「知らないわよ!! こっちが訊きたいくらいよ!!」
「私が頑張ってキスしたところより良い場所に……」
僕は茫然とし、後ろの三人は焦燥し、駅前に立っている目の前の二人は呆れていた。
「じゃあ私達は帰るので、お世話になりました」
「……あ、はい。こちらこそ」
「もうっ!!」
「…………あ、それと南美?」
「何よ!?」シャー!!
「佳純がそっちの高校の転入試験受けるみたいだけど知ってた?」
「…………え?」
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