南美の旧友 その1
南美の親友達がこっちに訪ねてきます
24話です
暑さが日に日に増すにつれて、蝉の音が大きくなり、暦の上ではもう8月に入る。
結美も一人の女子として意識するようになってから数日が経つ。もう幼馴染だけの関係でなくなった。それに妹の留美とも……。
「あーー、一体どうすれば~~!!」
僕はこれから先どうすれば良いか分からず、ただひたすら自分の部屋で一人頭をかきむしった。
「ふん、ふん、ふ~ん♪」
朝の10時を過ぎ、いつものように南美と近場を散策しにいく。そして彼女はいつもよりいくらか機嫌が良い様子だった。
「どうした? 何か良いことでもあったのか?」
「あ、分かります?」
「まあな」
「実はですね~……」
「?」
どうやら近いうちに向こうに住んでいた頃の友達がこっちへ遊びにくるらしい。
「そうか。わざわざ別の県から」
「そうなんですよー。友達3人で来るらしいです」
「なるほど、それじゃあ目いっぱい歓迎しないとな」
「え? 良いんですか?」
「もちろんさっ」
「光範様……」
彼女は足を止め、目をうるうるさせながら頭を下げる。
「なーちゃん!?」
「不肖南美、至極感動しております!」
「待て待て、大したことは出来ないぞ!?」
「そのお気持ちが嬉しいのです」
「なに言ってんだ。許嫁だろ? さ、頭を上げろ」
「はいっ」
そして昼過ぎまで僕達は一緒に町の名所写真を撮りながら近所巡りをした。それから数日経ち、南美の友達がこっちに来る日になった。集合場所は市内の駅前で、僕は朝から頑張って身なりを整えた。
「留美、ちょと出かけてくる」
「ん? どっか行くの?」
「あぁ、知り合いと市内になー」
「……ふーん。いってら~」
そして玄関を出ると南美が黒のタンクトップと青のジーンズを着て、少し暑そうに手を仰ぎながら待っていた。
「お待ちしてましたわ。光範様」
「さあ、行こうか」
「はい♪」
こうして僕達は市内の駅前に向かった。駅前に着くとさすがは県の中心地、そこそこ人はいる。都会ほどではないにしても、賑わいはある。こうしてしばらく待っていると、
「南美~~」
「きゃー、南美ちゃ~ん」
という声が聞こえる。おしゃれな女子3人が喜びながら小走りでこっちに来る。
「あっ、さつき、ふみ、はづき~~」
南美も彼女達の方へ走って、一緒にはしゃいだ。
「久しぶり~、元気してたー?」
「そっちこそどうよー? 相変わらず元気ー?」
「元気、元気! 南美も全然変わってないじゃない!」
「そりゃあ、まだ4ヶ月しか経ってないし!」
「まぁ、そりゃそうよねー」
きゃはは~と4人集まって楽しそうに笑っていた。
「で、その許嫁の人はどうなの? いい人?」
「あ、ここに来てくれてるわ」
「え? …どこどこ?」
三人はキョロキョロして僕を探す。
「この人が光範様よ」
「あ、初めまして、岸田光範です。宜しくお願いします」
彼女達は初めきょとんとなりながら僕を見る。そしてこの変な空気に気づいたのか、友達の一人がしゃべる。
「……あ、初めまして。南美の親友の藤さつきです!」
「私は七夕ふみです」
「私は入道はづきです。宜しくー」
藤さんは眼鏡をかけた長髪の真面目そうな感じで、七夕さんは前髪長めの少し内気そうな感じで、入道さんはベレー帽を被ったゆるふわな感じの人だった。
「皆さん、これからの予定はどうしますか?」
「…えーと、いくつか行くところは決めてますけど?」
「それでは僕が皆さんの行きたいところにご案内しましょう」
「え? あ、はい。宜しくお願いします!」
こうして僕達は市内の色んな場所を回ることになった。
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