結美ん家
今回は結美のターンです
22話です
僕は朝の空いた時間に南美と一緒に出かけるのが、ここ最近の日課になりつつあった。
そして昼になると、義母が作ってくれていた昼ご飯を暖めて留美と一緒に食べる。しかしあれ以来どこか女らしい仕草をしてくる時があるので、どうしても妹を僕は女として意識してしまう。だから兄としての沽券(いや、股間か?)を守るためにそそくさと部屋へ戻る。
「はぁ……」
僕はため息を吐きながら、気ままにネットサーフィンをしていた。そしたらスマホのバイブ音が鳴る。見ると結美からの連絡だった。
(なんか懐かしいな)
『家にスイカがたくさん届いたから食べに来ないって母さんが』
という内容が着ていた。
「結美んところのおばさんか~。そう言えば最近会ってなかったな~」
結美ん家によく遊びに行ったとき、彼女のお母さんにはいつも面倒みてもらってたし、家族ぐるみで遊んだ時も一緒にバーベキューとかしたし、そしてうちの母が亡くなって我が家が疲弊した時も、かなりお世話になった。
かなり恩義のある人だ。いくら返してもし尽くせないぐらいだ。それにスイカ……、食べたいな~。
「よし、久しぶりに結美ん家に行くか」
そして僕は出かける準備をして、留美に出かける旨を伝え、結美の家に向かった。彼女の家は歩いて10分ほどのところにある。
元々彼女は僕と同じアパートに住んでいたが、小学校の3年ごろに彼女達家族は今住んでいる一軒家に引っ越した。
僕は気ままに伸びをしながら歩いていく。そして考え事をしていたら、彼女の家に着き、チャイムを鳴らす。
「あら、光範君。いらっしゃ~い」
「あ、こんにちは」
出てきてくれたのは久しぶりの結美のお母さんだった。数年ぶりに会ったが、少し膨よかな体形は変わらず、前のイメージのままだった。
「待っていたわ。さ、どうぞ上がって」
「あ、失礼します」
そしてリビングに行くと結美がラフな格好で椅子に座っていて、大きいスイカがででんと机の上に置かれていた。
「やっほー」
結美が手を振りながら、軽く挨拶してくる。
「おう」
「もうミー君遅いよー」
「え? 連絡来てからそんなに時間かかってないと思うが」
「結構待ってるのよ」
一体どういうことだ?
「実は……」
おばさんからその事情を聞いた。
「なるほど、大きすぎてスイカが切れない……」
「そうなの~。いま女しかこの家にいなくて」
「友君は?」
「それがまだ帰ってないの~」
友君、名を友喜と言い、結美の2歳下の弟だ。
なるほど、それでここに呼ばれたのか。
「ごめんねー。男手がなくて」
「いや、大丈夫ですよ。任せてください」
そして僕はスパスパとスイカを等分に割った。
「おー」
「流石は男の子ね~」
二人は歓喜の声を上げて拍手するから、なんか僕は愉快な気分になった。
「さあー、一緒に食べようミー君♪」
「おう」
そして僕達は甘くみずみずしい新鮮なスイカを頬張った。しばらくして僕がまだ食べている時に結美が訊いてくる。
「食べ終わった?」
「んー、まだあとちょっと」
「それなら少し私の部屋で遊ばない?」
「え?」
いや、まだ食べ終わってないんだけど……。
「え? もうちょっと食べたい」
「えー、良いじゃーん。来てよ~」
「えー……」
まだ食べたいのに……。
そう思っていたらおばさんが僕を優しく勧めてくる。
「余った分は冷やしとくから、またお腹が空いたら食べに来たら? そうしたらまた冷たくて美味しいわよ」
……おばさんがそういうなら。僕は渋々その提案を受け、結美の部屋に行くことにした。
「お邪魔しまーす」
入るとそこは前より整理された部屋になっていた。中学校のまでの印象だと、趣味系のもので溢れかえり、結構歩くのが大変だった気がする。それに前まで無かったなんかふわふわしたような、いわゆるファンシーグッズまである。
趣味を否定するつもりはないし、しかも少女まんがオタクだが、こんな可愛らしい趣味あったっけ?
「さ、入って」
「あ、うん」
「何して遊ぶ?」
「いやー、急に呼ばれたから、特にはまだ……」
「じゃあさ、映画見ない?」
「お、それは良いね~。何見る?」
「ジョンソン・ウィリアムスが出ている最近のアクション映画買ったんだ~」
ジョンソン・ウィリアムスとはヨーロッパのアクション俳優である。また結美は大の映画好きなのだ。
「おー、良いね。さすがのチョイスだ! 見よ見よっ」
こうして僕達は彼女のノートパソコンで映画を見ることにした。
「イヤホン使って」
「はいはい」
そうして僕達は互いに近づいて、一本のイヤホンを片耳ずつに付けた。そしてその映画を見るのだが、僕はど迫力の音響でとても臨場感があり、ものすごく興奮する。
「あー、ジョンソン危ねっ!? ひやー!」
「ふふっ。映画の時は相変わらず大きな声出すわね」
「え?」
「昔から映画の時はよくはしゃいでたじゃない」
「そうだっけ?」
「で、そのあと映画シーンのマネしたりとかさ」
「あー、そうだった。懐かしーな」
「あ、そうそう。他にも子供の頃によく色んなごっこ遊びとかしたわよね?」
「あぁ、そうだった。そうだった」
「特にお医者さんごっこしたの覚えてるわっ」
「そうか~、懐かしいなー!」
「…じゃあ……久しぶりに……する?」
「ん! …………え?」
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