表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/42

写真デート 後編

南美とほほえま展開です


21話です

「で、どこ行くんだ?」

「森山公園に行こうかなと」

「あぁ、良いけど。近いな」


 森山公園はうちの町内で一番大きい公園だ。木々が生い茂り、たくさんの緑に覆われて、町民には人気のスポットだ。そしてうちから歩いて7分弱と行ったところだから比較的近い。


「お気に召しませんでしたか?」

「いや、そういうわけじゃないけど。写真撮りにいくぐらいだから、少し遠くに行くのかと思ったよ」

「それは留美さんや吉田さんがお昼までに部活から帰ってくると思いますので、それまでにアパートに戻ろうと思いまして」


 なるほど。確かにあの二人にバレると、なに言われるか分からんからな。


「けど普通にここから2、3個先の駅まで行かないと、プチ旅行にもならないぞ?」

「けど光範様、このままいては夏休みを自堕落に過ごしてしまうだけですよ?」

「え?」


 僕はぎくっとする。

 

「この4ヶ月ほどで分かったことですが、光範様はかなり出不精です」

「……」

「確かに光範様と一緒に旅行はしたいのですが、するとなると時間と資金がかかります。それではなかなか行けません。近くで良いので、光範様と一緒に歩きたいのです。それにここは光範様が育った町、尚更一緒に歩いて肌で感じたいのです」


 なーちゃん……。


「それに部屋でこもってばかりいては体に良くないので、散歩ついでにもなるかと思いますし」


 まったく本当に隅から隅まで気が回るんだから。


「分かった。そこまで言われたらもう断れないよ。じゃあ行こうか」

「はい♪」

「カメラは僕が持つよ。重たいだろ?」

「ありがとうございます」


 そして僕は南美から1眼レフカメラをもらい、それに付いたヒモを首にかけていると、彼女はつつつと僕の隣に添うように寄って、そっと腕を当ててくる。

 僕はなにも言わず、ただ声をかけた。


「行こうか」

「はい」


 こうして僕と南美との新たな思い出作りが始まった。……が午前中とはいえ流石は夏だ。直射日光が強いし、蝉の声がうるさい。ただ風がさっきより強くなったので、歩いても多少は心地がよい。


「もうすぐ着くな」

「はい、そうですね~」

「なんだ。場所知ってるのか?」

「はい、先にリサーチして……いえ、何でもありませんっ」

「?」


 それにしても久しぶりに来た。中学生以来だろうか。相変わらず緑がいっぱいで広くて壮観だ……。

 ミーンミーンミーンミーーン、ジージージージー……。

 しかし、いややっぱりというべきか、蝉の音がうるさい! そして歩いて来た時よりの倍ぐらい音が大きい気がする。


「うるさいな~」

「さて光範様、公園を回りましょう」


 南美は子供のように嬉しそうにはしゃいでさっさと行く。僕は

やれやれと思いながら公園の中に入り、彼女と木々の風景が良かったので、ふとカメラを構える。そしたら彼女が慌てて言った。


「あ、駄目ですよ光範様!」

「え?」

「私は光範様と一緒に写った写真を撮りたいんです。私だけのはあまり撮らないで下さい!」


 少し不満だったが今日の主導権は南美なので、なにも言わないようにした。


「で、公園内のどこから行く?」

「あ、ちょっと待って下さい。写真にあうスポットがあるので」

「?」


 南美は突然ポシェットのポケットから大きな用紙を取り出してそれをじっと眺める。どうやら手作りの地図のようだ。しかも『巡りマップ』って書いてあるし……。


「この公園ではこことここですね」

「…準備万端だな」


 そして彼女ははっとして何かに気づいたのか、ばっと用紙を折り畳み鞄に戻した。


「べ、別にわくわくし過ぎて、昨日の夜ぜんぜん寝つけられなかったことなんてありませんでしたよ!?」


 顔を紅くして照れる南美。

 可愛い……。

 そして僕達はそのスポットに行って一緒に写った写真を撮った。


「どうですか、お味は?」

「うん、美味いよー」


 この公園には休憩出来る場所があるので、南美が作ったバナナパンケーキを二人で食べる。


「なーちゃんの鞄からは何でも出てくるなー」

「……用紙のことは忘れて下さい」


 そう言いながら恥ずかしそうにうつむく。時間もそろそろ12時を回ろうとしていた。


「そろそろ頃合いの時間だ」

「もうそんな時間ですか。そろそろ帰らないといけませんね」


 またいつでも来られるとはいえ、南美は少し寂しそうだ。


「なーちゃん」

「…はい、何でしょう?」

「また来ようよ」

「はい、そうですね。もちろんです!」


 そして公園の中を帰りしな、南美がまだ来てないことに気づく。そこから僕は振り返ると、麦わら帽子を右手で押さえてスカートを少しなびかせながら、彼女が木に生えた白い花々を眺めていた。その姿がとても画になっていたので、カメラを構えてパシャリと撮った。


「あ、撮りました!?」

「あ、ごめん。ついっ……」

「もー、あれだけ撮らないでって言ったのに! ……綺麗に撮れてますね」

「モデルが綺麗だから」

「え?」


 僕は自分の発言にはっとする。今めちゃくちゃ恥ずかしいこと言ったぞ!


「今なんて言いました?」

「…や、何でもない」

「えー、なんて言ったか、もう一度言ってくださいよっ」

「何でもないって!」


 僕は照れながら、絶対に彼女と顔を合わせないように顔を背けた。


「光範様」

「……あんだよ?」

「仕方ないので、この写真は保存しときますね♡」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

ブックマーク、評価を頂き励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ