写真デート 前編
夏休み到来で光範と南美は?
ついに20話です
誰も夏季の補講はなく、無事1学期の終業式が終え、学校の休みの中で一番長い夏休みが始まった。
「いえーい! 夏休みだー!」
……となるはずもなく、朝からクーラーの効いた自分の部屋で僕はベッドの上に横たわる。
「ひ……暇だ」
時間は午前10時。やることがなければ結構暇な、いや自由な朝の時間帯だ。
別に夏休み始まって早々宿題をやりたいと思うはずもなく、好きことをやろうと思っても、今やりたい事とはなんか少し違うように感じる。
僕はこうやってただ虚無な日々を過ごして、死んでいくのかと横になりながら黄昏れる。そんなつまらないことをだらだら考えていると、
ピンポーン。
我が家のチャイムが鳴り、僕の部屋へ慎ましく響く。
「はーい」
僕は誰だろうと思いながら部屋から出る。今、家には僕以外誰もいない。父と義母は仕事で留美は部活だ。暇だからか、布団から起き上がる体は軽かった。
「はーい、はい。今、開けますよー」
さてさてどんな人が僕の相手をしてくれるだろうと少しわくわくしながら、カギを開ける。
「はい、おはようござ……います……」
そこに立っていたのは清楚をまさに体現したような美少女だった。その娘はくるぶし辺りまである淡い水色のワンピースを着て、女子らしい洒落た麦わら帽子を被っていた。
「なー……ちゃん……?」
「おはようございます光範様」
僕はつい彼女のその美しさに見惚れてしまった。
「……」
「どうかしましたか光範様?」
「…あ、いや何でもない。さぁ、上がって」
「あ、いや、その……」
なぜか彼女は少し躊躇いながら、一向に玄関へ入らない。いつもなら言わなくてもぴょんと入ってくるのに一体どうしたのか?
「どうかした?」
「あの……少し一緒にお出かけませんか?」
「え?」
僕はさすがに戸惑った。なんの理由があって、こんなクソ暑い日に外に出るんだ……。ドアを開けてるだけで風は少しあるとはいえ、それ以上に外の暑い熱が入ってくるし……。
「ど、どうして?」
「いや、それはですね~……」
彼女にしては珍しく目線を反らしながら、はっきり言わず、少々落ち着きがない。なんとも不思議な感じがした。
なんだろうと思いながら視線を下げると、彼女は右手にカメラを持っていた。なんか良さそうな1眼レフカメラだ。
「このカメラどうしたの?」
「あ、これは父のカメラなんです」
「ふーん、おじさんの……」
全体に黒く光ってなかなか渋く、彼女の手には少し大きい高級そうなカメラだった。
「この前実家へ戻った時に持ってきたんです」
「あ~、あの時に……」
「……」
うーん、しかしこれ以上の返事がない。一体どうしたいのか。いや~、それにしても暑いな~。さすがにドアを閉めたい。
「とりあえず一度中に入らない?」
「あ! いや、その……写真を撮りたくて……」
「写真?」
「……はい」
写真を撮る? ……あっ。
「もしかして僕と一緒に出かけて、写真を撮りたいの?」
「はい、そうです! 光範様と一緒に想い出の写真を撮りたくてっ。……駄目でしょうか?」
なにこれ? 可愛い!! どうしたのうちの許嫁!? いつも以上に可愛いじゃないの?! ……しかし外はこんなに暑い。……いや、とはいえだよ……僕の許嫁がそんな上目遣いで僕を見てしまっては……、
「……分かった良いよ。ちょっと着替えてくるから待っててね」
「! はい!」
こうして僕達は二人で外に出かけることになった。
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