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留美と遊園地 後編

3人が邂逅して……?


18話です

「痛~~……」

「お、お前達……」

「……」


 二人は手で服についた葉っぱを払いながら立ち上がる。彼女達は帽子と眼鏡をした程度の比較的容易な変装をしており、すぐ見破ってしまった。

 い、いやそれよりも……、


「ど、どうしてここに?」

「……えーと、それは~」


 二人は目を反らしながらとぼける。

 どうして二人は僕達がこの場所に来てることを知ってるんだ??


「……す、すみません光範様。いてもたってもいられず、真美子(留美の母)さんにお聞きしました」

「……ママっ!」

「……」

「そ、それより二人してこんなひとけの少ないところでなにしているのよ!? …さ、はやくミー君ここから出よ」

「あ……」

「ちょっと結美さん! そのいやらしい手をミー兄から離して!」


 留美が僕と結美の握っている手を強引に引き離す。


「ちょっ、留美ちゃん!? なにして……」

「今日はミー兄と二人っきりで楽しむ時間なの! ちょっと邪魔しないでよ!」

「別に二人の干渉しないなんて約束まではしてないわっ」

「~~~!」

「だからミー君、とりあえずここから出てい……」

「わっ!」


 とその時、留美は強引に僕を引っ張ってこの場所から連れ出す。


「あっ、光範様」

「ちょっとっ!?」

「お、おいっ、留美?」

「……」


 留美は何も答えず終始無言で遊園地内を早歩きで歩く。結美達は等距離を保ちながら僕達を追う。そして留美は突然ピタッと足を止める。僕は何事かと思って彼女を眺めていると、次は僕を握ったまま突然走り出して、僕を連れて観覧車の中に入る。


「あっ!」

「しまったわ!」


 と二人の声が聞こえ、彼女達は僕達と同じゴンドラの中に乗ることが出来なかった。僕は二人を目で追っていると、留美が甘い声で僕を呼ぶ。


「ミー兄……」

「え?」


 僕が振り向くと、彼女は唇を尖らして、目を瞑った状態でぐっと顔を寄せてくる。僕は露わに肌を露出した彼女の肩をばっと押さえ、必死に距離を保つ。


「お、おい留美っ。落ち着けって」

「……」


 しかし留美は諦めることなく、頑張ってぐぐっと体を押し寄せてくる。とはいえ留美は女子だ。筋力差は歴然だから体重をかけてきているとはいえ、僕は押し返せる。

(よしこのまま保てば、大丈夫だ…)

 とそしたら彼女の目から一筋の涙が頬をつたる。


「……!」


 僕はそれを見て思考が停止した。

 いままで僕は留美の兄として恥じないように奮闘してきた。新たな兄妹として家族を壊さないように。しかしもうそこまでしなくていいのか。彼女を妹としてではなく、僕は一人の女子として見るべきなのか。留美を悲しませてまで兄でいる必要はあるのだろうか。

 そして僕は力を徐々に抜いていった。


 どんどんどん!!


 びくっとして振り向くと、隣のゴンドラに南美と結美がこちらを凝視していた。南美は悲しそうにこちらを見て、結美はゴンドラの窓を強く叩いていた。僕ははっとする。

 なーちゃん…………。

 そしたらなぜか彼女は力をどんどん抜いて、僕から離れて椅子にどんと座った。


「……あーあ、これじゃあムード台無しじゃないっ。最悪っ、もういいや」

「……」


 そして僕達は観覧車のゴンドラから降り、留美はぐーと気持ちよさそうに伸びをする。

 ったく、あんな涙を流しておいて、……なんなんだ一体。


「あんたねー! ほんと油断も隙もないんだからーっ」


 結美がぷりぷりと怒りながらこっちに近づいてくる。そうしたら留美がその言葉に合わせて、


「……ふーん、油断も隙もないっていうのはね、…こういうのを言うのよっ」

「ああっ!」

「え!?」


 留美は僕をぐいっと引っ張って、僕の鼻の隣辺りにキスをした。


「!??」

「私のことちょっとぐらい意識してよね、ミー兄っ」

「あー! ちょっと何して……待ちなさーい!」


 結美はスキップして逃げる留美を追い、僕はそれを眺めながらただ茫然とする。


「光範様……」

「は、はいっ!?」


 南美が僕の隣に立って、正面の少し下に向いて眺めていた。


「どうし……」

「私のこと……また置いていかないで下さいね……」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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