球技大会 その2
男・光範、見せます
15話です
1日目、まだ日が南中まで昇りきっていない時にうちのチームの試合が始まった。朝とはいえ、もう夏らしい暑いなか僕は汗をかきながら、バッターボックスに入りバットを握りしめる。
「がんばって下さい光範様ー」
「ミー君、がんばー!」
クラスメートの女子が応援してくれる(とくに南美と結美は声が大きい)。そしてさっきうちのチームで前打者の上城君がまさかのヒットを打って、今一塁にいる。しかしその前の山上君が1アウトになったため、こちら側が攻撃出来るのは、もう残すところ2回までだ。
さて、どうしたものか……。僕は上唇を舌で少し嘗めながら考えを巡らす。……しかしまぁ、なんにも浮かばないのでピッチャーのボールに集中することにした。
シュッ。
一投目ピッチャーが投げる。
ビシュッ!
そしてまず一回目にバットを振った僕は壮大に空振りをする。
「あんっ! 光範様~、がんばって下さーい」
「そうよミー君! 男を見せるのよー!」
……なーちゃんと結美が見てるんだ。ここは一発頑張らないとなっ。
そして二球目が来る。しかし僕の振ったバットが当たらずまたストライクになってしまった。
あぁ~、という味方からの落胆気味の声が聞こえる。
くそ、駄目かな……。
僕は半ば諦めながらピッチャーを見る。はあ、やはり球技は向いてないと思いながら、バットを握る。そしてシュッと三球目が来る。
「光範様ー! 今です!」
はっ、と思いながら僕はおもむくままにバットを振った。
カキン……!
◇◇◇
「……まさかあそこの場面で2アウト三振になるとは思いもしませんでした」
「……詰まって凡ゴロになってしまったからな~」
そう、あの試合で僕は全く活躍出来ずに、三振かゴロしか結果が出せなかった。そして我々のチームは案の定1回戦敗退になった。僕は少し落胆した程度だったが、南美は結構不満げだ。
「光範様でしたらもう少しお強いチームに入れたでしょうに。そうすれば活躍しているお姿を見れたというもの」
「まあまあ、そう言うなって。僕はもう試合がないんだ。後はクラスの応援をするのみ。だから二人の応援に行けるから気にするな」
「! そ、そうですね。それはうれ……ありがたいです」
「そうよーミー君! 私達の試合を見ててねっ」
「おう! 分かった」
分かってはいたが……、かなり強かった。さすがはクラスの選りすぐりのチームだ。向かうところ敵なし。特にチームプレイが上手い。相当練習したんだろう。役割分担がちゃんと出来てる。しかし……、
「は? なんであそこでトスしないのよ!」
「いや、あそこは貴女が取るところだったでしょ!?」
……ときどきあの二人がケンカするから、なだめる周りは大変で僕は少し申し訳なかった。
そして試合休憩になり、各自昼飯をとる時間になる。僕は南美と結美と一緒にクラスで食べることにした。彼女達の友達は別のチームだったり、別の競技に出てたりしてタイミングが難しいからである。
ついでに優二はスポーツ万能野郎だからソフトボールのチームAに所属し相変わらず黄色い歓声を浴びながら活躍していた。
「あー、勝った後のご飯は美味しいわー!」
「ふっ、そうか」
「もうそれより上村さん! もう少しあんたが前にいないと、私の場所が分かりにくいわっ」
「なに言ってるのよ。貴女が私の後ろに来すぎなの!」
「そんなことないわ。私のテリトリーはあの辺よ!」
「まあまあ、二人とも落ち着けって」
「あ、そう言えば留美さんのチームも勝ってるそうですよ」
「え!?」
僕は少しドキッとして、ついミートボールを落とした。
「大丈夫ですか、光範様?」
「え? うん、大丈夫」
「どうしたのミー君。少し動揺してたけど?」
「いや、別に?」
「?」
そして順調に試合が終わり、バレーボールとソフトボールの各チームAがそれぞれ残った。
次の日、昨日勝ち残ったそれぞれのチームAの試合を僕は応援しにいく。そしてソフトボールもバレーボールも準々決勝は無事に勝った。
「次は準決勝ね」
「そうね」
「えーと次は……あっ、留美のチームだ!」
留美のチームも勝ち進んでいたのだ。(ソフトの試合を見に行ってて知らなかった)
僕は少し困惑する。別に留美と遊園地に遊ぶのは構わない。楽しく遊びたい。しかし留美はデートと言った。そう言われると、義理とはいえ兄として少しモヤモヤする。別にそこまで気にしなければいいだけの話なのだが、少し気にしすぎか?
「光範様。どうし……」
「あら、南美さんと結美さんじゃない?」
「!」
「留美さん」
「留美ちゃん」
「ここまで勝ち進んでたのね」
「えぇ、そうね」
「ここまで勝ち進んですごいじゃない。留美ちゃんそんなにスポーツ得意だっけ?」
あ、そう言えばそうだな。
「ふふっ、見てなさい。今回は勝たせてもらうから」
「?」
「この試合に勝ったら、ミー兄とこの日曜日遊園地デートするから!」
「!?」
「え!?」
「……」
「ほ、本当ですか光範様!?」
「本当、ミー君!?」
「え? ま、まあ……」
「そういうことだから、じゃあね、お二人さん。アディオ~ス♪」
そう言って去って行く留美はなんかラスボスっぽく見えた。そして二人は静かにうつむいている。
「お、おい二人とも大丈夫……」
「吉田さん、この試合負けられないわ」
「あら、奇遇ね。私もそう思っていたところよ」
「……え?」
「負けられないわっ!」
二人してふふふと笑いながら、タッグを組んだ。
ど、どうなるんだ一体~……?
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