球技大会 その1
夏休み……の前のイベントと言えば?
14話です
期末テストも終わり、残すところ夏休みだけだっ! ……とその前にまだ学校行事が残っている。それは、
「よしっ! もうちょっとで球技大会ね!」
結美がはやっほーとはしゃぎながら、僕達と一緒に登校する。うきうきがものすごく伝わって、僕はほとほと参る。なぜなら球技系のスポーツだけはかなり苦手だからだ。
正直ボールが嫌いなのだ。当たると痛いんだもの……。
「どうかされましたか、光範様?」
南美は僕の顔色をうかがいながら心配そうに言う。
「……あ、いやー」
「あー、ミー君は子供の頃からボールを使うスポーツが苦手なのよ」
「まあ」
「……誰のせいだと思ってるんだよ?」
かなり小さいころだ。幼稚園か、小学1年生あたりだっただろうか。近所友達連中と公園で野球をやったのだが、結美の打ったボールが僕のお腹に直撃したのだ。
それだけじゃない! サッカーだって体育の授業の時に、こいつが蹴ったボールのパスがかなり速くって、対処しきれず顔面に当たったりした。
もっと言えば中学のテニスの時に、僕のいるところに目がけてスマッシュを打ち込むから、みぞおちに当たったりしたもんだ!
「あれ……そうだったかな~?」
「そうだよ! お前はスポーツのことになると、すぐ熱くなるんだから!」
「そりゃそうでしょ!? 競技は本気で闘わないと面白くないもん!」
「大体お前はーー……」
僕は珍しくやんややんやと結美とケンカをする。あーだこーだとお互いに昔の話を持ち出しながらしばらく言い合っていると、南美がくいっと僕の袖を引っ張ったと思えば、ぷくっと頬を膨れた顔をして、
「光範様……吉田さんとばかり話さないで下さい」
か、可愛い……。そして留美も寂しそうに僕の背中のシャツを引っ張る。
「そうよミー兄。私のことも忘れないで」
「え? あぁ、留美もごめんごめん」
そうして僕達はいつものように学校へと向かった。クラスに入ると、夏休み前の最後のイベントだからか、もう球技大会一色の盛り上がりであった。
そしてそれぞれやりたい球技を選び、誰がするのか決まっていく。で、僕は流れのままに身を任せてソフトボールになったのだが、南美と結美はと言うと、
「なんであんたもバレーなのよ?」
「仕方ないじゃない。得意な競技がこれしかないんだから」
二人ともバレーボールになって、しかもスポーツが得意だからか、同じチームになっていた。互いに機嫌悪そうだか、果たして大丈夫だろうか?
そして授業終わるごとに部活の合間をぬって球技大会の練習が始まる。僕はクラスで一番最弱のチームCだ。スポーツ苦手勢が集まっているので、ボールが飛んでいく方向がバラバラでひどい連携だ。まともにできるのはキャッチボールぐらいである。しかし僕としては同志が増えたような気がして嬉しかったりする。
「光範様~」
「あー、なーちゃん」
「お疲れ様です。はい、タオルです」
「ありがとう」
南美からもらったタオルは柔軟剤のおかげか、とてもふわふわっとして気持ちがいい。
「そっちはどうだ? 大丈夫か?」
「そうですね~。……気分が向いた時に是非見に来て下さいよ」
「うん、分かった」
「そろそろ練習に戻るので、では後ほど」
「はいはーい」
そしてびゅっとボールが僕の顔を横切り、壁にダンッと大きい音をだして当たる。
「あ、ごめん。力いれすぎた」
僕はさっきまでバラバラだったチームメイト達の連携が一つにまとまっているのを感じた。
それから数日が過ぎた。僕は案の定帰宅部の性か筋肉痛である。僕の部屋にこんこんとノックをして、留美がサ○ンパスを持って部屋に入ってくる。
「ミー兄大丈夫?」
「痛い……」
「そう言えば南美さんは?」
「日頃スポーツしてないから、球技大会の練習めちゃくちゃ頑張ってる……」
「そか。ところで背中が痛いの?」
「うん……」
そしてピタッと冷たいシップが背中に付き、しゅ~とした気持ち良さが背中から感じる。うい~、気持ちがいい。
「ソフトボールどう? いけそう?」
「う~ん、打つのは大丈夫なんだが、キャッチと送球がまだ駄目だな」
「ふ~ん、そかっ」
「それはそうと留美はなんの競技を選んだんだ?」
「あれ、まだ言ってなかったっけ? バレーボールよ」
「え? お前も!?」
「お前も!? ……って他に誰がバレーなの?」
「……なーちゃんと結美」
「! ……」
そして留美はしばらくう~んとした顔になる。
「留美……?」
「……ねえ、ミー兄。…………もし私のチームが勝ったら」
「?」
「今週の日曜日にこの前約束した遊園地デートをするっ!」
「……え?」
そして留美の日曜日の遊園地をかけた球技大会が始まった。
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