漠然たる思い出
13話です
また夢の話から始まります
また夢を見た。南美と昔の話をするからか、ときどきあの頃に関連した夢を見る。
「光範様ー、見てください。蝉ですよ~」
南美は可愛らしい白のワンピースを着て、天真爛漫にはしゃぎながら、僕と一緒に野中を駆けめぐる。
「おー、これはでかいな~。クマゼミだなー」
「どうします? 捕りますか?」
「うん、捕ろう!」
「はい、そうしましょう。○○っ、虫捕り網貸して!」
「うん、分かったわ」
そして南美はその子から虫捕り網を借りて、溝をまたぎ木に止まっているクマゼミにひたひたと近づく。
「よーし、もう少し……」
そしたらクマゼミが木から離れ、ひゅっと水しぶきをとばしながら飛ぶ。
「きゃっ! おしっこ!」
そして南美が後ずさりし、溝に足を引っかける。
「わっ!?」
「あっ、なーちゃん!」
見事に南美はこけて、とんと道路に尻もちをつく。
「痛ーい! ……」
「な、なーちゃん、大丈夫?」
「は、はいっ。大丈夫で……、いたた……」
そしたらさっき虫とり網を持っていた子だろうか、その子がすごい睨みをきかせて叫ぶ。
「あんたが悪いのよっ! ○△さんに蝉を捕らそうとしたからこけたんだから!」
「え? だってそれはなーちゃんと一緒に捕ろうと思ったから……」
そしたらその子はどんどん怒りの表情をあげ、背景は暗くなり、そして彼女は悪魔みたいになっていった。
「なんですって~~、この貧弱ヤローー!!?」
「わーーっ」
そして僕ははっと目を覚まし、ばっと起き上がる。少し額には汗が滲んでいた。少し怖い夢を見た。
あれは……一体……?
とはいえそんな気分に長く浸る余裕はなく、本日3日目のテストを受けるべく、皆と学校に行く。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン……。
「よーし、用紙を回収するぞー」
「わー、ひーっ……」
クラスの悲鳴や叫び声のがやがやした感じを聞きながら、本日のテストが終わった。
「はぁ、終わった……」
僕は机に項垂れながら、ぽつんとひとりごとを言う。
(まぁなんとか、60点ていどは取れたかな?)
「お疲れ様です、光範様」
南美が短いスカートを少しなびかせて、程よい太ももを見せながら、こっちに歩いてくる。
「あ、おう…」
「うふふっ、光範様~っ♡」
南美はしゃがみ込み、机の高さに目線を合わせる。お互いに目が合って少し恥ずかしい。
「あ、あんだよ…?」
「別に、何でもないですよ~」
「……」
「二人してなにしてるのかしら~~?」
嫉妬むき出しの声が聞こえたので、少し顔を上げると結美が口角を引きつりながら、じっとこっちを見ていた。
「まー、けど……」
「?」
「こっちもテストで疲れたわー」
「!?」
彼女はひゅっと後ろに回って、僕の背中にのしかかってきた。むにゅーと弾力性のある胸が急激に背中へ伝わってくる。
(あ……、おう……)
「あっ、ちょっ……!」
「あ、そうだっ」
「……!?」
「?」
「まだテスト勉強まで少し時間があるから、ちょっと気晴らしにどこかに行かない?」
「行くってどこへ?」
「うーん、近くの喫茶店とか?」
「喫茶店か~、悪くないな。構わないぞ? なーちゃんは……」
「私も行きます!」
彼女はぷくーっとほっぺを膨らましながら同意する。ふふっ、可愛い……。
「じゃあ留美も……、あ……」
そうか、あいつは……、
「? 留美さんがどうかしたんですか?」
「いや、あいつは近く難関大模試を受けるから、勉強してるんだった」
「あぁ、そうなんですか」
「なら三人で行こう!」
そして僕達は帰宅近くの喫茶店『ル・モンジュ』へと行った。
「あー、疲れたわー」
「外は暑いから気持ちいー」
「……」
じゃんけんで席順を決め、四人席に僕の正面に南美が、そして僕の隣には結美が座る。だからか南美はまだ座ってから一言も発していない。
「なにか飲み物頼もうぜ」
「そうね、そうしようか」
「…あ、メニュー取りますね」
「あ、うん、取ってくれ……」
そしてふと、今日見た夢を思い出す。
──蝉を捕りますか?
──あんたが悪いのよっ……蝉を捕らそうとするから……!
「……」
「はい、光範様。……光範様、どうかしましたか?」
「……あ、いや何でもない」
「?」
そしてメニューを決め、しばらく僕達はだべだべと話をするが、僕はその夢のことから離れられない。どこか心の中で引っかかりがある。
「……大丈夫ですか、光範様」
「え?」
「返事が少し上の空ですよ。なにか悩み事でもあるんですか?」
「あ、いや……」
別に悩み事ってほどでもないが……、あの頃のことがまだぼやっとして、ちゃんと思い出せない。……少し嫌な思い出のような気もする。
そしたら南美が僕の手をぎゅっと握ってきて、
「大丈夫ですよ、光範様。いつでも相談にのってくださいね」
「なーちゃん……」
彼女の手の温もりを感じながら、僕は気持ちが穏やかになる。
「あ……」
「そうよーミー君! 私達は子供の頃からの幼馴染同士なんだから、いつでも話を訊くわよっ!」
バインとした彼女のおっぱいが僕の肩と手に当たり、子供の頃とは明らかに違う幼馴染のおっぱいの感触に下半身が疼く。
おふ……っ!!
「あー、ちょっと吉田さんずるいわー! 光範様から離れなさいっ!」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
「続きが読みたい」「面白い」と思った方はブックマークや広告下の☆☆☆☆☆の評価で応援していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!