1学期最後のテスト勉強
12話です
留美が鬼になります
6月も終わりに近づくと、学生のある本分が近づいてくる。
「ここは3^2x+6^x……だから、X=3^xと置いて……」
「あー、つまんねーーっ。勉強やだな~~」
そう期末試験が近づいてきたので、テスト勉強が始まったのだ。
「もーっ、ミー兄うるさい。しっかり頑張って!」
「そうですよ光範様。ここで諦めたら、次は50点切りますよ」
「あうぅ……」
南美はそういうだけあって、留美ほどではないが成績優秀である。というかそもそも転校出来るレベルがあるのだから当たり前か。しかし一方で……、
「えーと、ステゥーデント スタディー……ジャパネゼ ヒストリー……」
とかなり日本語英語で言うやつがいる。そう結美だ。スポーツはかなり得意で総体でも活躍するほどなのだが、とくに英語はからっきしだ。前まで成績は中の辺りだったが、最近勉強がついていけているか心配になっているレベルに来ている。
「お前本当に勉強は駄目だなー。さすがにそれはジャパニーズだろ?」
「あっ、そかっ。ジャパネーゼか。そうだわ。ここは伸ばすのね」
「……」
駄目だこいつ。また英語は赤点をさまよいそうだ。
「……てか、こんなの勉強してなんの役に立つんだ? 指数なんて、いやそもそも二次関数なんて、生活しててどこで使うんだよ?」
「そうよそうよっ。英語なんて日常生活で全然使わないじゃない!」
「……」
南美と留美は互いに首を振りながらため息を吐く。
「いいミー兄? 基礎勉強は役に立つかどうかじゃないのよ。……いや、そもそも数学は理科系や工学系の基礎だから、役に立たない訳じゃないんだけど」
「……」
「わ、私は文系だから英数なんて使わないと思うんけど!」
「……吉田さん。そもそも共通試験受けるなら、両方必要よ?」
「あうぅ……」
そして僕と結美はしおらしくなりながら、しぶしぶ二人から交互に教わっていた。
「今回も南美さんがいて助かるわ。ときどき私一人で二人を教えていた時があったから大変で大変で」
「お役に立てたなら良かったわ」
二人が仲良く話してるところを僕は端から見てて、少しほっとした。それから1時間ほど経った辺りであろうか、南美が申し訳なさそうに言う。
「あら、もうこんな時間。済みません、光範様。私、明日の学校ための用事がありますので、この辺で中座させていただきます」
「あ、うん、分かった。お疲れ~」
それから15分経っただろうか。隣に座っている髪の先が可愛らしくウェーブしている茶髪のショートヘアーの女の子が震えている。
「むきゃー! もう、やだっ! 今日はここまでにして、もう帰るからっ!」
「お、おい、まだp5しか進んで……」
「じゃっ、またっ! 友喜(結美の弟)をいじめてくるから!」
そう言って、結美はさっさと帰っていった。
「……ほんとに帰ったよ。さて……僕も今日のところは終わりに……」
「ミー兄……??」
はっと殺気を感じた。その先を見ると、眼鏡をかけた留美が目を笑わずに口だけ笑っていた。なぜなら勉強にかけては鬼の教官化するからだ。
「なに本を片付けているの?」
「いや、僕もそろそろ帰らないと……(な~んて)」
「どこに行くの? 貴方の家はここでしょ? 冗談言ってたら、今日の課題を増やすわよ?」
「……あ、はい」
「まだ数学が終わってないわ。残りp20!」
ひえ~~。
それから3時間しただろうか、教官の鬼のような叱咤激励を受けながら、僕は数学の勉強をした。
「はい。なんとかp20クリアしたわ。お疲れ様~」
「ぷしゅ~~」
僕は机に項垂れた。机は冷たくて気持ちいい。今僕を癒してくれるのは机くん。君だ……、
「ミー兄……」
「はい、何でしょう長官?」
「え、なに言ってるの? あの気晴らしにさ……、少し散歩しない?」
「え?」
そして留美と二人でアパートの近くをうろうろする。
「うーん。夕方でももう暑くなってきたなー」
「そうね~。けどまだ風が冷たくて気持ちいいわ」
「で、どうして珍しく散歩なんか?」
「ふふーん、それはね~。あ、あそこあそこっ」
彼女は僕の手を捕まえて、向かう先に走って連れて行く。細長い手で少し華奢な感じはあるが、昔と違ってもうしっかりとした手だった。
「ここは……」
そう、そこはアイス屋さんだった。こんな近くに新しそうな店があったのか。全然知らなかった。
「ミー兄はなに食べる?」
「えーと僕? 僕は~」
僕はシングルのバニラを頼んで、留美はチョコ、むらさきイモ、きな粉味をどかっと乗せたアイスを頼んだ。
「よく食うなっ。そんなに食べたら、夕ご飯食べられないぞ?」
「糖分がほしーのっ」
そう言って、でかでかとしたトリプルアイスをもらい、近くのベンチで二人して座った。
「どれどれっ。うん、甘くて美味しーな」
「でしょ? この前めるちゃんと行ったんだー」
「それ、どこから食うんだよ?」
「うーん、悩み中」
「そんなことしてると溶けるぞ?」
「あっ、早く食べないとっ。っぱく。んー、チョコが甘くて美味しー」
「やれやれ」
「まだここのバニラ食べたことないんだけど、少し欲しいな」
「ん、ほれ」
「ん、ありがとっ」
僕は自分のスプーンでバニラをすくい、留美の口に運んだ。
「んー、ほどよく甘くて、上品ね~」
「全くそうだな」
「私のも少し食べて? こんだけ食べたら、さすがにお腹が冷えそう」
「ったく、仕方ないな~。イモも~らおっ」
「あっ、もうミー兄ったら。まんなか先にいったら、バランス悪くなるじゃない。私と一緒の辺りをまず食べてよ」
「はいはい」
そして僕は留美の分のアイスを二人で一緒に食べた。
「あー、食った食った。結構腹が膨れたなっ」
「本当ー、ママに怒られそ」
「義母さんになんて言うか……」
「おこられるのはミー兄だから」
「おい、何でだよっ」
僕達はハハハと笑う。
「さて、そろそろ帰るか」
「え……うん……」
「どうした? 元気ないな~。腹が痛くなったか?」
「違うわっ。ただ、もう少し二人でいたいな~と思って」
「……いつでも一緒にいるんだ。またここに来たり、どっかで遊んだりしたらいいだろ?」
「そうねっ。昔みたいにまた市内の遊園地にでも行く?」
「おおっ、そうだな! たまには二人で仲良く遊びに行くか!」
「約束よ? ミー兄、すぐ約束すっぽかして、ネットの世界に入るんだから」
「分かってる、分かってる。ちゃんと約束だっ」
「うん!」
そして約束したあと、彼女は僕の袖をそっと握る。
「ミー兄……」
「ん? どうした?」
「私の傍に……ずっといてね?」
「……当たり前だろ? ずっと家族なんだから」
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