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4人で過ごす日常

10話です


あれから二ヶ月が経ちました

 南美がこっちに引っ越してからもう二ヶ月が経つ。早いもので彼女がここにいるのが当たり前になってきた。最初は反発していた留美や結美もそこまで彼女と激しいケンカはしなくなった。それぞれの生活リズムが出来たからだろうか。

 とはいえ僕のことになると、とたんに三人は朝からやっきになる。今日も今日とて朝からまいった。


「おはようございます(おはよー)、光範様(ミー兄~)!」

「……おはよー」


 もう少し寝たいが、ここ最近は二人にいつも7:00ジャストに起こされる。なぜこの時間に指定したかというと、南美と留美が僕を起こすのに、どちらかより早く起きて僕を起こしにくるからだ(大体は南美が留美よりも起こすのが5分早い)。まるでイタチごっこ状態だ。しまいには朝5:30に起こされる始末になった。

 さすがの僕も勘弁してほしいので、7:00に時間指定したのだ。お互いなぜか渋っていたが、なんとか承諾してくれた。


「本当に()ぎ……南美さんは朝から明るいから困るわ」


 それはお前もじゃないか。


「6:30になったら、もうミー兄の部屋の前で待機してるんだから」


 朝から二人が僕の部屋の前で賑やかに騒いでいるのは知っているぞ?


「朝から()()()()本気出さないと大変よ!」


 朝から元気だとお兄ちゃんも大変だよっ。

 そして支度をして玄関を出ると、南美と結美がケンカしながら待っている。


「それはあんたがっ……あ、おはよう。ミー君っ」

「おはよう……」

「ちょっとそれよりミー君! 上村さんが『温泉旅行したい』って言ってたけど、その話をしたわけ!?」

「いや、なーちゃんが結美との思い出の中で一番印象的なことって何って訊いてきたからなっ」

「じゃあ、あの話もしたの?」

「あの話?」

「一緒に混浴温泉に入ったこと……」

「わーー!! そこまでは言ってないぞっ!? しかもあの時はお互いまだ小3ぐらいで、よく似た体型だったじゃないか!」

「えー!? なによそれー!? もう小3にもなれば男子と入るのはそれなりの気持ちがないと入れないわっ!」

「そ、そうなのか?」

「そうよ!」

「え? なんなのそれ!? そんな話聞いたことないんだけど!? ミー兄、なに? このメス牛と一緒に同じ温泉に入ったわけ!?」

「誰がメス牛よ!? 誰が!?」

「そのデカ乳を持つあなたに決まってるじゃない!?」

「なんですって!?」

「落ち着けって二人ともっ」

「ミー兄(ミー君)は黙ってて!」

「はい……」


 そして僕がこの二人から少し後ろに下がると、僕の肩に手の感触が伝わりながら、後ろから冷たい声が聞こえる。


「光範様……」

「はい……」

「その話詳しく教えて下さいね」


 顔は笑っていたが、目はまったく笑っていなかった。


「え、いや、それはだからね……? その何というか~、あれだよっ、結美とは家族ぐるみでよく近くの旅行とか行ってたから、その流れというか~、その延長線ですよ?」

「ふーん、なら……」

「?」

「……私とも良かったら一緒に温泉へ行きましょうね?」

「え?」


 急に顔を紅く染め上げる。怒ってたわけじゃないのか?


「あぁ、それはもちろん構わな……」

「だからって怒ってないわけじゃないですからねっ」


 つねっと僕のほっぺをつねる。


「ひたっっ」

「顔を赤くして……、怒ってないと思ったでしょ? 油断大敵ですよ」


 えぇ~~、まじかーっ。


「あー! 結美さんと言い合ってる間にミー兄とイチャついてるー!!」

「まったく、貴女って油断も隙もない女だわっ!」


 と、こんな調子でいつも学校へ向かっている。そして昼休みになると、優二と静かに食べる。(時折、南美と結美の目線がちらちらと入るが)


「相変わらずおモテになるなー、光範くん」

「お前と違って顔ぶれはいつも同じだけどな」

「ふっ」


 こいつはかなりのイケメンだから校内でも指折りにモテる。靴箱にいつもたくさんのラブレターが入っており男の憧れだ。しかし、


「そんだけモテるのに、なんで彼女のいた数は3人なんだよ?」

「ん~、全員が全員好みじゃなかったし、それにあんまり知らない相手といきなり付き合いたくないだろ?」

「ん……まあそりゃあそうだけど、知らない相手でも可愛い女子なら、好きですって言われると嬉しいものだけどな~」

「まったく……しいものだよ……」

「え? なんて?」

「何でもないっ、溺愛男子には分からない話だよっ」

「なんだそれ?」


 そして放課後、留美と結美は部活なので、南美と二人で一緒に僕は帰る。


「いつもこの時間が待ち遠しいです」

「そうか」


 最近この時間は南美の過去の話を聞くことにしている。知らない彼女のことを少しでも知るために。


「……そしたら香織ったらお気に入りのシャツを蝉におしっこかけられたって、ギャーっと大騒ぎしましてっ」

「そうかそうかっ。それは災難だったな~」

「はいっ、そうなんですよ~」


 まったくわんぱく女子達は元気で面白いなっ。


「あの、光範様……」

「ん? どうした?」

「今日は光範様の過去を聞きたいです」

「僕も大した話なんてないぞ?」

「そう……ですか?」

「……」


 いや、ないことはなかった。しかしこの話は……、


「光範様」

「……?」

「少しあそこの公園にでも寄っていきませんか?」


 そして僕達はその公園に寄った。


「懐かしいなこのブランコっ。よく乗ったものだ」

「そうなんですか?」

「あぁ、結美とよく遊びに来た場所だ」

「ふーん、そうですかー」


 あっ、しまった。なーちゃんがむくれてしまった。


「あー、ごめんごめん……」

「ツーン……」

「……」

「……」


 そして僕はキーコーキーコーとブランコを漕ぎながら、あの話を南美に語ってみた。そうそれは母が亡くなってからのことだ。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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