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転校してきた許婚

宜しくお願いします


新連載です

光範(みつのり)様、この公園で遊びましょう」

「うん、そうだね、なーちゃん」


 僕は子供の頃を思い出していた。その子はとても可愛らしい少女で、控えめで優しくとても気が利く。


「あ~あ光範様ったら、こんなに汚して~」

「えへへっ、拭いてくれてありがとう、なーちゃん……」


 ……


「ミー兄、ミー兄ったら。朝だぞ、起きて~」

「……え? あぁ、留美?」

「もう、こんな可愛い妹が起こしてあげてるのにその反応の薄さは何よ~?」


 彼女はおたまを持って、ムッとした表情でドア前に立っている。


「朝からそんな要求は勘弁してくれ……。それよりもうご飯か?」

「うん。ご飯出来たから、ミー兄を起こしに来たの」

「どうして料理を作らないお前がおたまなんか持ってるんだ?」

「ん? ミー兄を叩き起こすため」


 まじか、こいつ、怖っ。

 それより僕はどうやらさっきまで夢を見ていたようだ。懐かしい思い出、小さい頃に遊んだ少女との思い出。

 彼女は今でも元気にしているだろうか。


「どうしたのミー兄? やたらもの思いにふけったような顔して?」

「あ、いや……ちょっと懐かしいことを思い出していたんだ」

「ふーん……。ね、それよりどう? この制服姿は?」

「何だよ……、入学してもう2日経つっていうのにまだそんなこと言ってるのか?」


 僕の妹である留美は肩まで伸ばした黒髪に綺麗な髪飾りをつけた美少女で、うちの高校にかなりの成績で入学したほどの成績優秀者だ。


「何よ~。やっとミー兄と同じ高校に行けて、可愛い制服が着れてるんだから、やっぱり嬉しいものは嬉しいんだもんっ」

「はぁ、そうですか」


 そして僕、岸田光範はベッドからよいしょと起き上がり、彼女と一緒に階段を降りてダイニングでご飯を食べる。

 彼女とは4年前に互いの両親の再婚で家族になった。そして僕はこの春から高校2年生になり、彼女は高校1年生。要するに彼女は僕の義妹だ。


「ミー兄」


 といつも親しみを込めて言ってくれる。中学の中頃までは少し疎遠気味ではあったが最近は仲が良い、というか少し近いくらいの間柄だ。

 そして僕は制服に着替えて玄関に行くと、留美がもうそこでスタンバっている。


「さぁ、ミー兄行こ~」

「おう」


 しかし一転して彼女は玄関を出ると急に機嫌が悪くなる。なぜならそこの前に僕の小学校からの幼馴染である吉田結美(ゆみ)が待ってるからだ。


「遅いよミー君。幼馴染を待たせるなんて良い度胸じゃない」


 彼女は少し茶髪がかって髪の先がウェーブしているショートヘアで、目がぱっちりとした学年でもトップクラスの美少女で、成績は中ぐらいだが、かなりのスポーツ少女だ。ついでに巨乳である。


「雌牛」

「は? なんですって?」

「なんでうちのアパートの前にいるのよ。この雌牛が」

「ミー君とは小学校から一緒に通っている仲よ。貴女のような新参者がしゃしゃり出るところじゃないわよっ」

「な、何ですってー!?」


 朝から二人して喧々囂々とケンカをする。去年までは留美が中学生だったので、そこまでではなかったが、今年から三人とも同じ高校だ。行くところが同じだからずっと険悪な空気が続く。

 はぁ、まだ起きて1時間も経ってないからか頭に響くな……。

 僕は二人をほっといて、さっさと行くことにした。


「あ、待ってミー君(ミー兄)」


 そして登校中、二人は僕に物凄い接近している。というか僕を間にして二人がくっ付いて来るからいささか歩きにくい。しかも一方(結美)は胸が大きいものだから、むにゅっと僕の腕に当たる。


「むっ、その下品な乳をミー兄に当てるな!」


 結美はむっとしていたが、その後でニヤリと笑いながら、


「貧相な胸だからって妬かないの」

「何ですって!?」


 ぬーとお互い睨み合う。

 別に留美は貧相な胸ではないのだが、結美が大きい分そう見えるのか。

 そして登校している同じ学校の他の生徒達は僕達の方を見て、羨望の眼差しやひそひそ話がある。

 朝から嫉妬や険悪な空気はまったくもって勘弁してほしいな……。

 そして睨みながら留美は1年のクラスに向かい、僕と結美は2年の階に向かう。


「まったく、朝から勘弁してほしいよ」

「だって~、あの子がケチつけてくるんだもん」

「それはそうだが……」


 僕はこれ以上の返事をせず、結美とクラスに向かう。彼女と同じクラスでグループはそれぞれ違うが、周りから腐れ縁公認されているから男子からのヤキモチは()()()()ない。(ちょっとはあるな~)

 そして僕の中学からの友人である優二がからかいに来る。


「相変わらずの仲良しさんで。結婚まで秒読みですか~?」

「うるさいよっ」

「可愛い義妹もいるし大変だな」

「……まあな」

「おい、それより聞いたか、光範?」

「何が?」

「うちのクラスに転校生がくるそうだ」

「へぇ?」

「それもかなりの美少女だそうだ」

「ほう?」


 やはり僕も男なのだろう。あれだけ身近な女子のケンカを見ていても、転校してくる女子が美少女だと聞くと気になるものだ。


「元々県外の子だったらしい」


 県外……と聞いて、少し気持ちがざわっとする。そう言えばあの子も県外だったことを思い出す。親父の友人の子で、あだ名はなーちゃん。本名は南美(なみ)。今日久しぶりに夢に登場した僕の……、


「おーい、席に着け~。今から転校生を紹介するぞーっ」


 担任の後にガラッとドアが開く音が聞こえたと思ったら、おぉっと歓声が上がる。


「おぉ、すっげー美人!」

「きゃー、すごい綺麗~」

「千葉県から転校してきたそうだ。おそらく周りに知り合いはいないだろうから、皆仲良くやってくれ」

「皆さん初めまして、私は上村南美(なみ)って言います。宜しくお願いします」


 え? 上村……南美?

 教卓の方を見ると、彼女は背中まで伸びた綺麗な黒髪に、目はきりっとしつつもどこか品のある感じだった。


「じゃあ、上村の席は~……」


 と担任の松崎が言った時にタッと彼女は僕の処に走ってきて、突然抱きついて来た!


「お久しぶりですっ。光範様っ!」


 そう転校してきたその子は僕の許婚だった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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