後輩に正体がばれた?
僕と本木津は、駅に到着してから、別れた。
しかし、僕は、ここからフードにマスク姿で、塾の自習室に行く。特に今日は塾の授業もあるので、なおさら行かなくてはならない。
トイレでパーカーを着てフードとマスクを装着し、塾に向かう。
ちなみに目的は、万が一誰かに勉強している姿を見つかってもそれが僕だとばれないようにするためだ。文化祭実行委員会の中では、こんな田舎の駅から通っているのは僕と本木津だけだが、全校生徒となればちらほらはいるはずだ。思わぬところからキャラを取り繕っていることがばれたらたまらない。
塾の自習室に入ると、僕はあたりを見回した。本木津はいなかった。
僕は少し息を吐いてから、あいている席に座った。
しかし、しばらくすると。
お、おい……まじか。
向かいに座ってきたのは、本木津だった。この状況になるのは三回目だ。田舎の塾だけあってそんなに大きな自習室ではないからこれは偶然か……?
僕はとにかく、目が合わないように目線を下にした。
くそ、でもやっぱり集中できない。
ちらりと僕は本木津の方を見た。
本木津は、紙にまた、グリップ付き鉛筆で何やら書いていた。
なになに?
『恋愛の話。 先輩って彼女とかいますか?』
明日はそういう話が来るのか……。
僕は、少しドキッとして、だからのどが渇いたなって思った時、自然とマスクを外して、ペットボトルのお茶を飲んだ。
お分かりだとは思うが、ペットボトルのお茶を飲むと、顔は上を向く。マスクは外れている。
しまった。
僕はそう思い、目の前の本木津を見た。
目が合った。僕の顔を、凝視していた。
「よ、よお。ここでも会うなんて、思わなかったな」
僕が言うと、本木津は、慌てて紙をしまった。
「あ、これは、なんか架空の世界でのお話のプランで……」
そんな隠したって、もう僕は結構見ちゃってるけど。ごめん。
僕は心の中で謝った。
が。
本木津が僕を見て、おかしそうに笑っているのに気づいた。
「『今さら気づいてももう遅い。内容知っちゃってるぞ』ってところですかね」
「あ、ま、まあ」
「でもですよ。それは私が言いたいですよ、先輩。先輩のキャラづくりの作戦、私は知ってますよ? それこそ、今さら気づいてももう遅い。内容知っちゃってるぞ、です」
いたずらっぽく笑って、ラメ入りのグリップ付きの鉛筆をくるりと回した本木津は、大人びた魔法少女のようだった。