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後輩と二人きり

 それから三十分後。


 僕は、本木津と二人で電車に乗っていた。


 僕は、今日本木津が話かけて来る内容が、大体わかっている。


 塾の自習室で本木津が「武田先輩と話したいことリスト」を作っているのが見えてしまったからだ。


 毎日、一時間半くらい本木津と一緒に帰るわけだから、話すことがなくなるのもよくわかるし、実際そうなってる。


 だから、僕は前にも言ったように、本木津に話す内容を考えるのに時間を取らせてしまっていることが、申し訳ないと思っているのだ。


「先輩。私、この前、とっても美味しい……」


 たぶんんパンケーキの話だろうな。


「あっそうです。パンケーキ食べたんですよ」


「おお、どこのお店?」


「駅の近くです。私と先輩の家の最寄り駅の近くです」


「じゃあ、学校の人は誰も知らないわけだ」


「そうです。だから、先輩にしかお勧めできないのです。でも、本当においしくて、しかもおっきいのでおなか一杯になります!」


「そうか。今度行ってみようかな。名前はなんていうの?」


「名前! なまえは……い、いま調べます!」


 本木津はスマホを素早く取り出して、素早い指の動きを画面の上で見せた。


 話したいことリストに、名前までは書かなかったのだろうか。それとも書いたけど忘れて、僕の前でリストを出すわけにもいかないから、調べているのだろうか。


「あ、これです。ありました」


「どれどれ」


「ほら、こんなかわいらしいHPもあるんです……あっ」


 本木津の指が別のタブに触れ、別のサイトが表示されてしまった。


 そこには……


「『好きな人と緊張せずに話す方法を徹底解説』……?」


「あ、これは、き、きにしないどいてくださいな、あははははのは」


 す、すごい焦ってんな……。


 まあそうなるかな確かに。


 で、それにしても、本木津には好きな人がいるのか。

 

 しかも、その人と話してると緊張すると……。


 僕と話している時は緊張しているようには見えない。今は焦ってるけど。


 まあ、僕ではないのかな。


「あ、先輩、失礼しました。このHPです」


「お、ありがと……南口徒歩3分か。近いな」


「そうなんですよ。あの、よかったら今度……」


「そうだな、今度行ってみるよ」


「あ、はい、いってらっしゃい」


「うん……」


 そして会話が途切れた。会話って難しいなほんと。




 

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