うっかり昼休み
コーヒーの眠気覚まし効果は何とか昼休みまで続き、俺と柊は昼休みまで居眠りで注意される事はなかった。
それは良かったのだが、またしてもピンチがやってきていた。
俺にでは無く柊に。
俺は普段から昼休みは購買か学食を使っている。
理由としてはわざわざ弁当を1人分作るぐらいなら学食で買う方が圧倒的に安い。
学食に限って言えば出来たてが食べられるのも圧倒的にいい。
だから俺の中で昼休みと言えば学食に行く混んでいたら購買で残っているパンを適当に見繕って食べるというのがいつもの流れ。
「風馬行くか!」
「そうだな」
こんな感じに友人の安田をに誘われ俺は学食に向かうために席を立った。
教室から出る途中教室の真ん中に出来た弁当組の女子トップカースト達の横を通る。
「えぇ!? ひなっちお弁当忘れたの? めっずらしー」
「ちょっと寝坊しちゃって」
「じゃあ購買行くの?」
「うーん」
「ひなっち、まさかの学食デビュー!?」
柊とその友人の女子2人とその友人的なポジションの女子が柊を中心に集まっていて、そんな会話をしていた。
柊はしきりに俺を気にした様子でチラチラ視線を感じる。
そういえば柊って弁当組だ。
それは料理のうまさや手際の良さからも察することができる。
しかし、言われて見ればそうだったってぐらいの仲だったので、すっかり柊の昼ごはんのことを忘れていた。
今朝は寝不足だったし、朝ごはんの用意は柊が怒ってやってくれなかったから俺がやったし。
朝、弁当を作ってはいなかったわけだ。
さっき一緒に眠気覚ましした時もなんだかんだ眠気がピーク過ぎて、会話は少なかったし頭も回ってなかったから昼休みの事は話せていないかった。
やはり、今日は大人しく寝よう。
と固く心に誓いながら安田に背中を押されつつ教室を出る。
「なんだよ安田。そんなに押すなよ」
「なんか知らないけど今日の柊さん達めちゃくちゃオレたちのこと睨んでぞ? だから面倒が起きる前に出ようぜ!」
柊には悪いが、連絡先も知らないし学校では、今まで通り話しかけられないので、ここは我慢してもらうしかない。
あっ、そういえば柊のスマホって水没したままだったな。
ずっと一緒にいて連絡に困らなかったからこれも忘れていたが、連絡が取れないのは同居する上で不便すぎる。
放課後、修理に出せるようなら携帯ショップに行くかどうか聞こう。
流石に今日みたいなことが起こるとも限らないし。
起きた時も連絡さえ取れれば簡単に解決できる。
柊、今日のところは我慢してくれ。
そう心の中で思いながら教室を出る。
その瞬間の柊の顔はとても儚げまで切なそうだった。
昼休みは安田の最近見た可愛い制服女子の話と、明け方までやっていた格ゲーの意見交換などをして戻ってくると、教室の雰囲気が若干わるくなっている気がした。
なんというか若干空気が重くなったように感じる。
その空気の重さは、教室の真ん中の女子の辺りから発せられているようだ。
「うぅお腹空いたぁ」
「わたしのお弁当半分わけてあげるって言ったんじゃん」
「半分も貰うの悪いじゃん。いつもアヤだってお昼食べた後にまだ食べられるって言ってるじゃん」
「ひなっちになら半分ぐらい別にいいのに。普段お世話になってるんだもん」
「ほんとに大丈夫だから!」
「じゃあさ放課後どっかよってく?」
「ごめんカレン。放課後親戚のお兄さんと会う予定があるんだけどその時にご飯食べる予定だから今日は、すぐに帰らないと行けないんだ」
ちらっとこちらを盗み見る柊。
友達のアヤは不思議そうに首を傾げたが、俺には柊の真意が汲み取れてしまう。
放課後ご飯を奢れと。
何故かそう思うか。
まず柊の親戚なんて聞いたことがない。
そんなに親しい親戚がいるなら大雨の中公園のベンチに居ることもなければ俺の家に来ることもない。
それに今の柊の連絡手段は水没しているし、日曜日は買い出しでずっと一緒いたから親戚がこっそり会いに来た可能性もない。
つまりこの親戚のお兄さんは俺を指す隠語と解釈したわけだ。
言いながら思い切りこちらを睨むように見ていたからそれも判断材料になっているが。
「ひ、ひぃ。風馬また睨まれたぞ?」
「あぁ、なんだか空腹で機嫌が良くなさそうだな。目をつけられる前に座るか」
素早く席に着くとそのまま午後の授業が始まる。
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