表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/9

ゲーム大戦争。罰ゲームもあるよ!

 日付が変わって、一応の月曜日。

 そろそろ寝なければ寝坊するかもしれないと言うのに俺も柊も寝ずに争っていた。

 

 「柊そろそろ寝た方がいいんじゃないか? 段々と眠気で操作がおぼつかなくなってきているだろう?」

 「いいえ、まだよ。私はまだ戦えるわ」


 今、俺たちがやっているのはムキムキの男達で殴り合う格闘ゲームの新作。

 買い出し終わりにポストを確認すると、ネットで注文したやつが届いたので、早速プレイすることにした。

 柊が風呂に入っていて妙に緊張したのを新しいゲームをやる高揚感で中和しようと言うのもあったが。


 一通り操作を確認してCPUで試した後何となくでネット対戦をしていると、思いのほか白熱してしまい柊に風呂に入るよう言われるまで止められなかったほどだ。

 仕方なくゲームを放置して風呂に入って戻って来ると柊がCPUと戯れていて、対戦する流れになった。

 妹や友人とゲームをよくやるので、コントローラーは2つあるし、断る理由もないので受けることにした。

 柊は思ったよりも飲み込みが早く、1時間もしないうちに実力が拮抗し段々と白熱していった。

 白熱してくると是非とも勝ち越して気持ちよく寝たい欲求が湧き出るのは必然。

 しかし下手に実力が拮抗しているせいで勝っては負けてをずっと繰り返してなかなか終わらせるタイミングを掴めないでいた。

 このシリーズはかなりやりこんでいる身として負ける訳には行かない。


 「東君こそ反応が鈍くなってるから寝た方がいいんじゃないの?」

 「はぁ? 俺はゲームで完徹を何度もしている男! まだ日付変わった程度でへばるほど柔くないぞ! この通りまだまだ元気だ。……くらえ!」

 「あっ、卑怯もの!」


 よそ見した瞬間を見逃さず、俺は必殺技を叩き込み無事勝利をおさめた。

 

 「よし、そろそろ寝るか」

 「勝ち逃げなんてずるいわ! もう1回もう1回だけお願い」

 「明日……じゃない今日は学校あるんだしもう寝ないとな!」

 「あら? ゲームで何度も完徹している柔じゃない東君なんじゃないの? あれれ?」


 安い挑発なのはわかっている。

 だが男として1度言ったことを撤回するような行動は良くない。

 だからここは向こうに戦いから降りるように仕向けるべきだ。

 正直またちょっと上手くなってきているから、次やったら負けるかもしれないからな。

 ほんとに恐ろしい。

 初心者同然だった柊に負けで終わるのは嫌なので何としても勝ちを死守したい。

 

 「受けてもいいけど、やっても何の得もないないからなぁ」

 「なによ? 何か要求するつもり?」

 「別にそんなことは言ってないが? 何の得もない勝負を受けようとは普通思わないよなぁ?」

 「いいわよ! 罰ゲームでもなんでも負けたら一つだけ言うこと聞いてあげる。逆に東君が負けたらなんでもゆうことを聞く。ルールはこれでいいわね?」


 なんかゲームから降ろすのに失敗してしまった。


 結局対戦は続行され、お互い負けたくない気持ちが先行しガード中心の戦いになり、先程までの盛り上がりとは打って変わって地味な読み合いが展開された。


 「ビビってないで男らしくかかってきなさいよ」

 「罰ゲームがかかってるんだ慎重にもなるだろ」


 俺だって素直に断って勝ちの余韻にひたって寝たかったよ。

 柊がここまで負けず嫌いだとは予想外。

 ほんとに俺は柊のことを何も知らないんだな。


 「罰ゲーム……東君は勝ったら私に何をするつもりなのかな? ……もしかしてえっちなことをしようと思ってるんじゃない?」

 「なっ……」


 落ち着けこれは柊の精神攻撃だ。

 惑わされるな。

 同様したら負けだ。


 「否定しないってことは、そうなんだ」

 「ち、違うぞ!」


 一瞬動揺して、コントローラーにカードを入力していた指が離れ、操作していたキャラが無防備になった。

 柊はその一瞬の隙を狙ってコンボを叩き込んできた。

 もちろんすぐにガードを入れようとしたが、既に遅かったようだ。

 ダメージを多く与えたおかげで必殺技ゲージが溜まって、そのまま必殺技まで当てて来て見事にHPを削り切られた。

 画面上にはKOの文字が浮かんでいる。

 

 「やったー勝てたぁ」

 「なん……だと」


 俺は負けたのだ。

 

 「罰ゲーム罰ゲーム。何してもらうかな」

 「俺に何をさせる気だ?」

 「そんな不安げな目で見られると悪いことしてるみたいじゃん。東君が仕掛けて来たのにずるいわ」


 全くもって間違ってないから言い訳ができない。

 どんな罰でも甘んじて受け入れるのが男だ。

 1度言った事は守る。


 「さ、さっさと罰を言ってくれ」

 「うーん。そうだねぇ。罰与えたいんだけど、東君がどんなものが好きなのか嫌いかも分からないし。あっそうだ、じゃあ1番恥ずかしい思い出これにしよう!」

 「恥ずかしい思い出?」

 「そう! みんなで罰ゲームする時もこれなら準備無しでできるし打ち解けて仲良くなりやすいし」

 

 なるほど。

 友達が多い分罰ゲームも手馴れてるわけか。

 だからなんでも言うこと聞く罰ゲームにビビらなかったわけか。

 納得だ。

 場数が違ったわけだ。


 「恥ずかしい思い出なぁ。中学時代の話なんだけど、俺の下駄箱にラブレターが入ってたんだ。俺にも春が来たって喜んで内容見たら。その時仲良かったバスケ部の男子がいたんだけど、そいつに渡して置いて欲しいって手紙でぬか喜びしたとか?」

 

 俺の中ではかなり恥ずかしいエピソードではあるが、柊がこれで納得するかどうかが少し不安だ。

 リア充の恥ずかしいエピソードはもっとレベルが高いかもしれないしな。

 ちなみにこのバスケ部の友人とその娘は見事付き合い2ヶ月で別れた。

 人を使ったんだからもうちょい長く付き合えよ。

 

 「それは何とも悲しい話だね」

 「同情すな。恥ずかしいエピソードとして話してるんだから」

 「あっ、そうだったね。うん、合格! それじゃあ明日も早いし寝よ?」

 「あぁ」

 

 1時を回った所で俺達はようやく寝る準備をしてお互い部屋に戻る。

 俺は一応アラームをセットするとしばらく布団に潜っていたが、そっと起き上がりリビングに向かう。

 

 「やっぱ、負けたまま寝るとか有り得んわ。発売日当日だしまだネット対戦、人いるだろ」


 一応柊に配慮してヘッドホンをつける。

 それからコントローラーを手に取りソファに腰掛けゲームを起動した。

 ネット対戦はこの時間でも1秒もかからずマッチングするが、深夜になるとガチ勢しか残っていないのかなかなか勝つことができない。

 どっぷりと夜が深け、2時を過ぎ3時を超えそろそろ4時になり日が上り始めても勝てていない。

 3時を過ぎた辺りからマッチングに露骨に時間かかるようになってくるし、マッチするのはホシリンとか言うネカマぽい名前のやつだけ。

 しかもめちゃくちゃ強い。


 「あー、なんでこいつとしか当たらないんだ。もういいってホシリン。可愛くねぇからどうせネカマだろ?」


 次第に愚痴も増えるし、寝不足で操作も雑になって凡ミスが増えていく。

 寝ればいいのはわかっているが、負けたままログアウトすればまたムカムカしてベッドから飛び起きることになる。

 だから何としても勝たねばならんのだ。

 そして5時を過ぎるとホシリンとしかマッチングしなくなり6時で初心者とマッチングしてパーフェクトゲームで勝ち、この不毛な勝つまで寝れない企画は幕を閉じることができた。


 嬉しさでバンザイをしているとぽんと肩に手が乗った。

 恐る恐る振り返ると、目の下にくまを作った怖い顔の柊がいる。


 「ひ、柊? おはよう。いつからそこにいたんだ?」

 「おはよう東君。質問の答えは3時過ぎからかしらね? ちょっと部屋の外に出たらリビングから音が聞こえて来て覗いたら誰かさんがずっとゲームしてたんですもの」


 声の端々からは何故か怒りのようなものが見え隠れしてきている。

 夜更かししてゲームは確かに良くないことだが、柊が怒る理由は無いはずだ。

 念の為確認しておこう。


 「もしかして怒ってます?」

 「別に怒ってないわよ。部屋に東君がいなかったおかげで寝不足になったとか、そのせいでちょっと機嫌が悪いとか全然ないもの。えぇ怒ってませんとも。怒ってはいないですけど朝ごはんの用意はしませんので」


 それ怒ってるんじゃないか?

 喉まで出かけた言葉を無理やり飲み込む。

 柊は眠りを妨げたら機嫌が悪くなるパターンの人間なのだろう。

 今日の夜はゲームを控えて柊に安眠してもらおう。

 なんて事を考えていたせいで俺が部屋に居ないことが柊の寝不足に繋がるという疑問に気づかないでいた。

執筆の励みになります!


ブクマと☆の応援をお願いします!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ