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夜明け

 ドクンドクン。

 突如ベッドに入ってきた熱源に心臓が跳ねるのがわかる。

 柊のやつ、あれだけ男を警戒するような素振りを見せていたのに一体どう言うつもりなんだ!?

 聞き出したし気持ちはあるが、寝たフリをし続けると決めた手前ここで振り返ったり起き上がったりはできない。

 ぐっと堪えるために目を強く瞑る。


 「うん。やっぱこっちのが落ち着く」


 柊は俺の背中に自分の背中をつけるとほっとため息を漏らした。

 薄いシャツを2枚隔ててもはっきり伝わってくる柊の体温。

 俺よりほんの少しだけ高いそれにまたドキッと心臓が跳ね、背中の接触した部分が痺れたような錯覚を覚える。

 そんな風に俺がドギマギしている中、柊は気がつくと寝息を立て初めていた。

 すぅーっと規則的な寝息が絶えず聞こえる。

 背中合わせなので顔は見えないけれどしっかり寝付いているだろう。

 そうなると起き上がってしまうのは良くない。

 起こしてしまう可能性があるからだ。

 柊は家に入れなくなってから1晩寝ずに過ごしていただろうし、どこかで仮眠していたとしても安眠は出来なかっただろう。

 表には出していないだけで不安と恐怖で精神的にも辛かったのかもしれない。

 やっと寝たばかりの柊を起してしまうのは良心が咎めたのだ。

 おかげで俺は寝不足になってしまったがな。



 翌朝。

 俺は、眠気と疲れがまとわりついた状態で目を覚ました。

 日曜日という事でアラームはかけてなかったが、物音が聞こえたのだ。


 「ん?」


 そういえば昨日の夜中にベッドに潜り込んでいた柊が居なくなっている。

 バレたくないからベッド戻ったのだろうか?※変だよ?

 そうだとすると俺は気づかなかった事にしてあげた方がいいかもしれない。

 なんて考えつつ朝のルーティーンである顔を洗うためにキッチンに向かった。

 言い訳させて貰うとバスルームに洗面台はついているのだが、いちいち朝からバスルームに行くのが面倒くて気がついたらキッチンで顔を洗うようになっていったのだ。

 朝食の用意のついでに顔を洗えるから楽できておすすめ。

 

 「あっ。東君おはよう。すごい顔になってるから、顔洗ってきたら?」

 「あぁ」


 顔を洗うためにキッチンに立ち入ると柊に手を掴まれた。

 物理的な刺激で、眠気が吹き飛んだのと同時に柊の身体がすぐ近くにいることに驚く。


 「なんでキッチンに入って来るの? やっぱり普段キッチンで顔洗ってるんでしょ?」

 「え?」

 「え? じゃないわよ。やっぱりそうなのね。キッチンに洗顔フォームがあるから変だなぁとは思ってたけど、キッチンは料理を作るところなんだから顔はちゃんと洗面台で洗って。はいこれ持って」


 洗顔フォームを持たされバスルームに強制的に移動させられる。

 なんか朝から怒られたなぁ。


 顔を洗ってスッキリ目が覚めると再びリビングに戻る。

 そこにはやっぱり柊がいてキッチンでなにかしているようだ。


 「あっ、朝ごはん軽く作ってみたんだけど……」

 

 テーブルに並べられているのはトースト、ミックスベジタブルとオムレツ。


 「これどうした? 家に卵なんて、なかった気がするが?」

 「東君さ、冷蔵庫の下にあるドアなんだと思ってるの?」

 「冷凍庫だろ? さすがにそれくらい知ってるぞ」


 俺は別に料理ができないわけじゃない。

 真面目に練習してないのと上達するための師匠がいないだけだ。


 「東君って冷凍庫全然整理してないでしょ? だから朝早く起きて整理したの。これから使うことになる冷蔵庫の容量を見たくて。そしたら賞味期限ギリギリの冷凍のオムレツとミックスベジタブルが出てきたからもったいないから朝ごはんにしたの」


 あー、そういえば冷食半額セールで安くなった冷食3ヶ月ぐらいもつからとかいって大量に買った事あったよなぁ。

 連日食べて数日で飽きてそのまま忘れされていたな。

 毎日開ける上の方と違って下の方って用がないと開けない。


 「なるほどな。それは朝からお疲れ様」

 「別に同居人として当然の役割を果たしただけよ」


 口では澄ましたように言っているが、そっぽ向いた顔は少しだけ赤くなっているを俺は見逃さなかった。

 ほぼ毎日褒められる学園のアイドルでも嬉しいんだな。


 朝食を食べ終えると1度お互い部屋に戻る。

 これから柊の同居するに当たって必要な日用品と服を買いに行くのだ。

 しかし着替えてリビングに戻ってきた柊の表示よは不満げ。

 俺を見るなり睨むように全身ファッションチェックされているようだ。

 しかし俺はいつものジーンズにパーカーの無難なファッションをしているから並んで歩けない程の酷さはないはずだ。


 「さっきからすごく不服そうな顔だがなにかあるのか? 自然乾燥だから縮んだりしている事はないと思うが」


 「違うわ。私が制服なのは着替えがこれしかないから仕方ない。今から服を買いに行くんだからそこに不満はないわ。ええ、ないわよ。私が不満に思っているのは東君なんで私服なのかって事なのよ。私だけ制服だとすごく目立つとは思わない?」

 「でも普通に休みに制服着るの意味わからなくないか? 警戒はするけど学校の人間に見られたりした時休みに2人揃って制服来てたら怪しすぎるだろ? それに服買ったらすぐ着替えるんだから俺が制服来てたら後々俺が目立ってしょうがないだろ」


 柊が制服なのは最初の服屋までの予定だ。

 そこで私服に着替えるんだから、そこまでの辛抱だ。


 「そ、そうよね着替えればいいのよね! さすがに休日に1人だけ制服なのは恥ずかしいからちょっと怒っちゃったわ。ごめんなさい」

 「早とちりもいい所だ。全く。俺がずっと制服で連れ回すわけないだろ? 一応同居してるってことは誰にも秘密にするんだから」


 柊は家を追い出される前の生活を維持するために俺の家に来たのだ。

 だからそういうバレる可能性があるリスクは極力避けて行くつもりである。

 それが今のところ俺と柊のなかの大きな約束事だ。

 なので欲望のまま制服で連れ回すつもりは全くない。


 「そうだ。東君パーカーって他にも持ってたりする?」

 「ある。というか着てる服のほとんどがパーカーだから」

 「そう。なら白いヤツ貸してくれない?」


 言われた通り白のパーカーを手渡すと、柊はさっと制服の上に羽織った。

 夏服の上にパーカーを着ると途端にオシャレに見えてくるから不思議だ。

 ワイシャツが隠れたからなのかは分からないけど、一件制服を着ているとは思えない。

 さすが学校のアイドルだ。

 モデルがいいから制服とパーカーでもすごいオシャレなアイテムに見える。

 全ての準備が整った所でようやく買い出しを始めることができる。

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