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Present For Me

作者: 雫

さっきまであなたと雨宿りをしていた

そういえば今朝の天気予報で

「今日は通り雨に出会うことでしょう。」

って言っていたのを思い出したから

私たち、やむのを待ったの

それって…私も何かに出会えることなのかな、

なんて少し期待もいれて。


待っている間…空が黒かった

というよりお陽さまが、そうだったの

雲の陰に隠れた、っていう感じがした

実は結構恥ずかしがり屋なのかな、お陽さまって。

いつもあんなに堂々と空を横切っているのに

実は性格って…人と似ているのかな

何だか、好きだな。ふわりと温かいんだもの。


近くのお店の屋根のしたで

私は地面(じおもて)を見ていた

大粒の雨が落ち葉に強くたたきつけるところ

花びらひとつひとつに雨が滴り落ちてゆくところ

そしてあなたの横顔も。


あなたはずっと空を見ていた

ただ暗いのに、

それでも何かを探すようにずっと見ていた

暗闇の向こうにあなたは何を求めているんだろう


あなたの視線がくるっと動いて…私も気がついた


空がからりと晴れたことに

太陽がもう一度、地を照らし始めたことに


湿った土を右足で踏みしめ

にっこり笑ってあなたと歩き始めた

散歩は好き。

あなたと散歩しているとき

とても静かで優しい…その空間が好き

その空間が、ときが、なおさら自然の姿を

私の中で映えさせるの


だけど…あなたは今まで何を聞いて、知ってきたの

あなたは今までどんな風に歩んできたの

ほんとは…知りたくて仕方なくて。

何より…あなたがこんなに世界をきれいに見せてくれるのはなぜなの


でも この静かなときの流れ、壊したくなかったの

この時間がどれだけ大切かを自身で知っているから

知らなかったときに…何度も泣いたね、私。

いつの間にか、あなたにたくさん教わっていたんだね


私たちふたり、歩いているとき

あなたは再び空を見上げた

私もつられて…見てみた


さっきまではあんなに暴れていた雲たちが

喚いたり怒鳴ったりしているように世界を轟かせた雲たちが

今は何にもなかったように静かで

ほんとうに不思議ね…


あなたは空のどこを見ているんだろう

私は、あの雲の少しおくのところを見ているけれど


雲がね、何かの形に似ている気がして

それで私の目にとまったみたい

動物のような、もののような…うーん、何だろう


だけど…どんなときでも私の隣で

ときどき、遠くをぼうっと見つめている

あなたが気になるんだ


ねぇ何を見ているの…?


「見て。」

不意にあなたが言った

あなたの視線の先を見たから

あっちの方だとは分かるけれど…?


「どこを見ているの?」


あなたは指さした

それは…さっき私が見ていた雲のおく、

だけどそこに今は虹があった


あれ、さっきはなかったはずだけれど…

その虹は本当に輝いてた

そしてそれが

この雨と、あなたがくれた、

優しいプレゼントのような…そんな気がしたの

何か根拠があるわけではないけれど


もしかすると…

朝の天気予報がそれを予感させたのかな。


「ありがとう」

ふっとあなたに呟いた


ううん、言いたくなったんだ、あなたに

あなたが何?と疑問がありそうな顔をして

私の方を見た

私はちょっと目を反らしてまた空を見上げたら

虹は変わらずそこにあった。きれいなまま。


それはまるで

大切なものがずっとずっとあることを

心の中では在り続けるんだっていうことを

証明したがっているように…


そのものたちがそこにあるためにも

小さくてもこの手で守ろうと

このプレゼントを輝かせ続けたいと

そう空に…空にだけ伝えた


あなたには、今度ね

私からの大きなプレゼントで贈るね

今はありがとうの言葉だけを、あなたに。


―Thank you for your present. I hope your happiness.―


2008年9月に作り上げた作品。

高校の文化祭のときに発表した作品です。

どこかに保存しておきたくて今回記載。

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