シロイルカのぬいぐるみ⑧
小さく硬いもの。
ビー玉、石ころ……
軽くてかたくないもの。
布きれ、紙……
わたしは、一時間目の社会の時間、ノートの隅に思いついたものを書いていった。
何か想像が膨らむかもしれない。
例えば、宝物のビー玉を奪われそうになって、ぬいぐるみの中に隠したとかなのかな。
誰に奪われそうになったんだろう。
ううん。その前にもっと大問題があったよ。宝物のビー玉の入ったぬいぐるみを捨てちゃ意味ないよ。
難しい。
あ、じゃあ次は石ころを考えてみよう。……これもだめみたい。ビー玉とおんなじだと思えちゃう。
布きれだって紙だってよくわかんない。
いらないならそのまま捨てちゃえばいいよね。
「……九州地方は、こんな形をしています。では、ここの県は何県かわかりますか?」
「はいー! 佐賀県です!」
やまねちゃんが手をあげてすぐ質問に答える。
「あ、惜しいですね、福岡県です」
「あれー?」
福岡県はわたし知ってた。だけど佐賀県って何……? どこにあるのかな。
わたしは地図帳を開いてみた。
あ、福岡県のとなりだ。これはやまねちゃん、確かに惜しかったね。
それにしても47都道府県なんて、たくさんすぎる。覚えるの大変だよ絶対。ぬいぐるみの持ち主なんて考えてないで、勉強しなきゃだよね。
わたしは遅れていた板書写しを頑張って進めた。
社会のテストまで悪かったら、大変。またお母さんに怒られるから……。
一時間目が終わったら、次は体育なので、みんな着替えるために更衣室に行く。
わたしとりすちゃんとやまねちゃんも、更衣室に行った。
わたしは運動も苦手だけど、今やってるマット運動は、少しましになった。
ななはちゃんが教えてくれたおかげだと思う。
ななはちゃん、ありがとう。そう思って、わたしはななはちゃんをなんとなく探す。あれ、いない。
「よしいこうー。体育館」
「早めに行って体育館のボールで何本シュートいれられるかゲームしようよ〜」
りすちゃんとやまねちゃんは、体育着も赤白ぼうしもちゃんと身に着けてて、準備万端みたい。
わたしも大体着替え終わった。
なんだけど。
「りすちゃん、やまねちゃん。わたし、ちょっと教室戻ってみたい」