シロイルカのぬいぐるみ④
誰もシロイルカのぬいぐるみを取らないまま、放課後になった。
「まだあるよーこのクラスの人のじゃなかったのかもー」
やまねちゃんが、シロイルカのぬいぐるみ頭を撫でる。
「そうだね〜」
りすちゃんも一緒に撫でる。
「でも、わたしたちの教室の近くのごみ箱にあったよ。なんでだろう」
「わからないけどー」
わたしは思う。もし、このシロイルカのぬいぐるみを捨てようと思ってた人がこのクラスにいたとしても、こんな教室のうしろにでーんって置いてあったら、多分取りに来ない。
もう一回ごみ箱に捨てに行こうとしても目立っちゃうし。
だから、このままだと絶対に持ち主が見つからない。
でも、もともと捨てようと思ってたんだから、それでいいのかもしれない。
だけど、シロイルカのぬいぐるみは、縫い直されている。前も考えたけど、それは大切にしてたからだと思う。
だとしたら、急にぬいぐるみを捨てたくなったってことだと思う。
そうだとしても、今はこのまま置いておく以外にすることが思いつかない。
「ま、とにかく、今日は児童館でぬいぐるみ作ろうよ〜」
「そうだね。シロイルカのぬいぐるみはここに置いておくしかできることがないし」
「だねー、じゃあ行こう」
わたしはりすちゃんとやまねちゃんと出発。児童館でぬいぐるみづくり。わたしの大好きなこと。
だから弾むぬいぐるみのように足取りが軽くなっていたのに。
「柴崎さん」
「はい、先生、さようなら」
「えー、ちょっと教室に残ってくれますか。この前の算数のテストの補習をしたいです」
「……」
うわ、算数の補習なんて……一気につらいことになったよ。