ペンギンさんのぬいぐるみ①
「おはよう~」
「おはよー今日は一時間目は理科―!」
わたしがピンクのランドセルを背負って教室に入ると、教室の隅でぬいぐるみを作っていたりすちゃんとやまねちゃんが元気にあいさつしてきた。
「おはよう。一時間目は理科室だっけ」
「そう、理科室だよー」
やまねちゃんが答えてくれる。
それと同時に、校内放送が鳴った。
『一時間目の準備をしましょう。今日も楽しく過ごしましょう。今週の目標は、ものを大切にしようです……』
今日も学校生活がこうして放送とともに始まる。
わたしは柴崎えりか。小学三年生。りすちゃんとやまねちゃんと一緒のクラスで、一緒に手芸クラブに入っている。
最近夢中なことは漢字で、前まで苦手だったけど、今は六年生の漢字の先まで行った。
だから、最近新聞が読めるようになってきてうれしい。けど、学校で読むと電車の中のおじさんみたいだから、朝か夜読むことにしている。
それはそれとして、一時間目が理科室なら急がなくちゃいけない。
私はランドセルを開けて、筆箱と理科の教科書と、理科のノート (緑色)を出した。
「理科室いくよ~」
「私たち歩くから、早歩きできてねー」
「うん。いまいくよ」
わたしはりすちゃんとやまねちゃんに、返事をして、ランドセルを教室の後ろのロッカーにしまいに行った。
ランドセルについた給食袋がロッカーからはみ出して垂れ下がってないことを確認したわたしは、教室を出る。
走るとよくないからちゃんと早歩きで進んでいると、理科室の手前の渡り廊下のところで、りすちゃんとやまねちゃんに追いついた。
「追いついたよ」
「ナイスタイミングだね~」
りすちゃんがわたしを振り返って笑った時、わたしはりすちゃんのむこうに、ぬいぐるみが落ちているのに気が付いた。
「あ、ぬいぐるみが落ちてる。 ペンギンさんのぬいぐるみだ」
「ほんとだー」
やまねちゃんが拾いにいった。
落ちていた場所は渡り廊下のすみ。手すりの端っこの真下。
ストラップ型のぬいぐるみだった。
わたしは、やまねちゃんの手の上の、そのぬいぐるみをのぞきこんだ。
小さな葉っぱがついていた。何の葉っぱかな……。少なくとも私が知らない、葉っぱだった。
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