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1話~転生~

眠りから覚めると、そこは真っ白な空間だった。


「あれ? ここどこ??

ちゃんと布団で寝たはずなんだけど・・・・・・」

まだ眠い目をこすりながらヒナタはそう呟いた。

(夢でもみてんのかな・・・・・・)

そう思いつつも周りを見渡す。

果てしなく続く真っ白な空間。

周りには何もなく、ヒナタだけがポツンとそこに座っていた。

「おーい、誰かいますかー?」

とりあえず、叫んでみる。

しかし、返事は帰ってくることはなく、

自分の声が虚しく響く。


(夢ならもうちょっとマシな夢見ろよ、俺。

かわいい子といい感じになるとか、宝くじ当たるとか・・・・・・

夢の中までも平凡ってか、何も無いのかよ・・・・・・)

ごく普通の生活を送ってはいるが、

多少の欲はヒナタにもある。

普段の生活では、自ら刺激を求めるような勇気はないが、

夢の中ぐらいなら、と考えてしまうのである。


「明日もまた仕事あるし、この夢は何もなさそうだし、

寝るしかないか・・・・・・」

夢も平凡だと諦めながら、

また同じ日々を繰り返すことをわかっていても、

ヒナタはとりあえず眠ることを選択した。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぉい、起きろ。」

「・・・・・・ヒナタ、起きるのじゃ。」

耳元で声が聞こえる。

「なんだようるさいなぁ。

まだ寝かせてよ・・・・・・」

「いいから早く起きるんじゃ!!」

びっくりするぐらいの大声で、

俺は飛び起きた。


「全くここでそこまで熟睡できるとは・・・・・・

どんだけ神経図太いんじゃ。」

目の前には白い髭を蓄えたじいさんが、

俺を呆れた顔で見ながらそう呟いていた。

「おじいちゃん、どちら様?

なんで俺を起こしたんでしょう?」

状況をよく分かっていなかったが、

自分自身を落ち着かせるためにも、

とりあえず当たり障りのないことを質問した。

起きたその場所は、また真っ白な空間だった。

しかし、先程とは少し違っており目の前に、

じいさんが1人とどこにでもありそうな和室があった。


「わしは神様じゃ。

お前は転生者に選ばれたのじゃ。

喜べ!」

いきなり何言ってんだこの爺さんは。


起きてすぐによく分からない場所で、

よく分からないことを言われ、

全く状況が理解できない。

(うん、たぶんまた夢見てんだろ。

今日はほんとに変な夢みるなぁ。

疲れてんのかな。

とりあえずまた寝よ・・・)

「おいおいおい、寝るなって言うとるじゃろが。

だいたいここは夢の世界なんかじゃないわい。

現実じゃ。」

「こんな変な場所で、

変なじいさんに話しかけられて、

夢じゃないわけないだろ!」

「変なじいさんじゃと??

神様に向かってなんて失礼なやつじゃ。」

「いやいや神って何だよ!

だいたい俺は自分の部屋で、普通に寝たはずなんだよ?

それなのに起きたらこんな場所で、

いきなり転生者に選ばれたって信じられるわけないだろ!」

「・・・・・・まぁたしかにそうじゃな。」

納得したように爺さんは和室の方に向かった。

慣れた手つきでお茶を準備している。

「いやいや、何呑気にお茶飲もうとしてんの?

早いとこ状況説明してくれない?」


俺は少し苛立っていた。

この意味がわからない状況に。

そんな俺をまるで気にせず、

目の前でお茶を準備するじいさん。

「よし、準備出来たぞ。

お前もこっちに来てとりあえず茶でも飲め。」

今度は俺が呆れながら、渋々と和室に向かった。

それからじいさんは、俺の状況を説明し始めたのだった。



「まずここは神界じゃ。今はわしだけじゃが、

他にもいろんな神がおる。」

「いきなりそんな事言われても、

信じられないって。」

「まぁまぁ、ちと黙って聞いておれ。」


また突拍子もないことを言い出したと、

食ってかかる俺を宥めるように制しながら、

神と名乗る爺さんは話を続けた。

「神の間では千年に一度、人間界から1人選別し、

異世界へと旅立たせるという大事な大事な儀式があるんじゃ。

それにお主が選ばれたというわけじゃ。」

「めちゃくちゃ雑な説明じゃないっすか?」

「神聖な儀式によって選ばれたものは、

転生者として新たな世界へと旅立つ。

もちろん今までと全く違う世界じゃから、

多少のサービスはしてやろう。」

「もう俺の話スルーし始めてるよね?」

「喜べ!これからは素晴らしい人生が、

お主を待っておるぞ!!」

「待っておるぞ!!じゃないわ!!

全然説明になってないって!!」

「文句ばっかり言いおって・・・素直に喜べばいいものを・・・」

「いやいやいやいや、喜べるわけないでしょ?

俺は普通に生活してただけだよ??

いきなりそんなこと言われて信じられるわけないって!」

「もう決まったことだから諦めるのじゃ。」

「はい、そうですか・・・ってなるわけないだろ!

そんなの勝手に決められてたまるか!

いったい何様のつもりなんだよ!?」

「神様じゃけど。」

「ぶん殴ってやろうか!!」

ダメだ、この爺さん。

どうにもこの爺さんとは会話がうまくいかない。

(だいたい転生者ってなんだよ・・・

じゃあ転生する前の世界の俺はどうなってんだ?)

「あ、お主は前の世界ではもう死んでおる。」

「えっ?なんで??

てか、なんで考えてることわかんの?」

「神様じゃもん。」

「じゃもん、じゃねえよ!

だいたい死んでるってどういうことなんだよ!?」

「転生するものは一度死ぬと決まっておるのじゃ。

大丈夫、眠るように孤独死したから。」

「いやいや大丈夫じゃねぇ!

何勝手に死んだことになってんの?

だいたい孤独死ってなんだよ??」

「だってぼっちだったじゃろ?」

「いきなり傷つけてんじゃねぇ!」


神様が言った一言に大きな精神的ダメージを

受けながらもヒナタは信じようとしなかった。

「勝手に死んだことになって、

はいそうですかってなれるわけねぇよ!

早く元に戻してくれ!」

「何をそんなに嫌がっておるんじゃ・・・」

「いきなり死んだことになってるからだよ!

これから過ごすはずだった俺の人生はどうなる?」

わあわあと喚き散らす俺に、

神は静かに、しかしハッキリと聞こえる声で言い放った、

「また平凡な代わり映えしない生活をしたいのか?」


神様の言葉に、俺は何も言い返せなくなった。

「お前はごく普通のどこにでもいるようなやつじゃった。

凡人中の凡人じゃ。それにぼっち。」

「おい、ディスってるだろ。」

「転生したらリセットできるぞ?

大金持ちになれるかもしれんぞ?

ハーレムを作れるかもしれんぞ?

自由気ままに生活ができるかもしれんぞ?

今までお主がつまらないと思っていた生活から、

おさらばできるのじゃぞ?」

「ディスったことはスルーかよ。」

そう言いつつも神様が言う言葉一つ一つが、

心の中にグサグサと刺さっていった。



今まで大きな波もなく、ただなんとなく過ごしてきた毎日。

このまま普通に生きて、普通に歳をとり、

普通に死んでいくんだと思っていた。

この生活に絶望していたわけではない。

しかし、この先何年も同じ生活が続くことに、

嫌気がさしていたことも事実だ。


神様は俺にリセットできると言った。

今の生活がなくなってしまうことに、

不思議と恐怖や後悔はなかった。

自分でも驚く程に、刺激を求めていたらしい。


「やっとその気になったようじゃの。」

神様は少し笑顔になりながら、

俺にそう声をかけた。


「いいですよ、転生します。」

覚悟を決めたように、

しかし若干浮ついた心で、

俺は神様に返答した。


「それで転生はどんなとこにするんですか?」

「お主が今まで生活していた世界とは、

まるで違う世界じゃ。

多くの魔素に満たされており、

様々な種族がある。」


神様の説明に俺の感情は、

さらに高ぶっていった。

「まじで?ゲームとかの世界みたいなの?

じゃあ俺も魔法使えるようになる??

エルフとか獣人の子とかと知り合える??」

「おいおい、急にテンション上げすぎじゃ。

じゃが、そういうことになるの。」


今までゲームや漫画の中で見たような世界。

小さい頃は本気で憧れもした。

しかし、大人になっていくにつれて、

現実を見るようになった。

ゲームや漫画の世界は、

現実では起こり得ることがない、と。

そう思っていたことが、

今まさに現実になろうとしているのだ。

テンションが上がらないわけがない。


「ヤバイヤバイヤバイ・・・・・・

ほんとにあるんだこんなこと。」

「さっきまで怒り狂ってたとは思えん反応じゃのう。」

俺の急変っぷりに神様は驚きつつも、

説明を続ける。

「これから転生するお主には、

転生特典として特別なスキルを与える。

転生先では誰も持っていないものじゃからな。

ありがたく思うのじゃぞ?」

「スキルとかいいですね!

まさに転生って感じで!」

待ってましたと言わんばかりに、

ヒナタは食いつく。

神様はヒナタの急変を、

もう気にしてないかのように続ける。

「まずは基本スキル。

生活するのに必要な、最低限のものじゃな。

ただお主の頑張り次第で進化もしていくぞ。

そして特別スキル。

こちらは言わば儂からのギフトじゃな。

さっきも言ったが特別なものじゃぞ。」

そう言いながら神様は、

1枚の紙を渡してきた。



基本スキル

・言語理解

・地図作成

・鑑定

・アイテム収納


特別スキル(ギフト)

・獲得経験値5倍

・魔力消費量2分の1

・スキル制限解除

・好印象



「どれも見ればなんとなくわかるんだけど、

このスキル制限解除って何なの?

あと好印象ってスキルなの??」

「スキルとは、

各職業によって獲得できるスキルが木の枝のように

伸びておるものじゃ。

スキルは本来、1人が獲得できる数が決まっておる。

じゃがお主にはその制限がないということじゃ。」

「チートじゃないっすか。

で、好印象ってのは?」

「そのままの意味じゃ。

じゃあそろそろ準備するぞい。」

「さっきから説明雑すぎない?」


もっと説明してほしいと求めるヒナタを無視し、

神様は慣れた手つきで魔法陣を描き始めた。

(この神様適当すぎるよなぁ・・・・・・)

そう思いつつ、これ以上の説明を諦めたヒナタは、

ずっと疑問に思っていたことを、

質問することにしてみた。


「そういえばなんだけど、

何で転生者に俺が選ばれたの?

もっと有名な人とか、

何か大きなことをした人とか、

そういう人の方が選ばれそうだけど。」

ヒナタの質問に神様は冷や汗をかきだした。

(あれ?なんか様子おかしくない?)

しかしヒナタはなおも続ける。

「もしかして、俺特別な才能あった?

実はすごく有能な人でそれに目をつけたとか!」

「・・・・・・ガチャじゃ。」

「はっ?」

ものすごく小さな声で、神様は呟いた。

「えっ?待って待って、

俺の聞き間違いだよね??

ガチャって聞こえた気がするけど。

さすがに千年に一度の転生をそんな簡単に・・・・・・」

「何度も言わせるな!

ガチャでお主は選ばれたのじゃ!」

自分は本当は特別なんだと、

何か能力があると思いこんでいたヒナタにとって、

それはあまりにも衝撃的な言葉だった。

「ほんとにガチャなの??

さっき神聖な儀式とか言ってなかったっけ?

ガチャなんて俺がいた世界のソシャゲと一緒じゃねぇか!」

「うるさい!

そんなソシャゲなんかと一緒にするんじゃないわい!

千年地道に様々な徳を積み、

やっとの思いで引けたガチャなんじゃぞ!」

「それこそソシャゲじゃねぇか!

結局はガチャ引くための石集めしてたってことだろ!?

何?神様暇なの?」

「凡人のくせに、口も悪いのかお主は!

ガチャ運ないのかのぅ、わし。」

「それって俺に失礼じゃね?」

「あーあ、ボンキュッボンのお姉ちゃん、

引き当てたかったのぅ。」

「欲望丸出しじゃねぇか!

神がそんなんでいいのかよ!?」

「ほんとにうるさいやつじゃのう。

誰だって普通の人よりボンキュッボンの姉ちゃんがええじゃろ?

ほれ、もう時間じゃ。

よい異世界らいふを!」

「ちょっと待てジジィーーーーーー」

そう叫びながら、ヒナタは魔法陣に吸い込まれていった。


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