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姫様見参  作者: さん☆のりこ
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適材適所でGO!

もし高スペックの人の身体に入ったら・・バク転なんかしてみたい(´-ω-`)

 「今日は気分が落ち着いている様ですね、安心いたしました。失礼ですが今の貴方はバリキャリ様で宜しいのでしょうか」


 姫様の混乱状態も落ち着いた様だと・・侍女から報告が行ったのか、朝食後にまたしてもモノクロがやって来た。今日も安定の真っ黒黒介である、魔術師は黒しか着てはいけない決まりでも有るのだろうか?別に人の趣味をとやかく言うつもりは無いが、陰気臭い感じは拭えない・・モテそうも無い感じだ。


 彼は慇懃に振る舞いながらも、注意深く姫様(魂)の様子を観察している。




『不愉快な目ね、もし私達が姫様の魂として不適格だと判断されれば(誰がするのか?王様か王妃様か?そんな頭が有る様には見えなかったが)サッサと消し去るつもりなのだろうか?殺生与奪の権を握られているのは落ち着かないし腹立たしい気分だわ。

モノクロの立ち位置が未知数な今は、彼と無用な軋轢を起こすのは得策では無いんでしょうけど』


今、不気味な魔術師と対峙しているのはキャリさんだけだった。

社会人として数々の商談・取引を経験していから、彼女が渉外には適任だろうと話し合われた結果だ。


『あれね・・むしろ弱々しく儚げに振舞って同情を集めつつ、モノクロを味方に引き入れるとか・・したいぐらいなのだが・・苦手なんだよなぁ~そう言うの。媚びを売って頼りにしています・・あなたが居ないと生きて行けないの(涙)って女を使う・・ってやつ?

今は美人さんなんだから、その手も有効なのかもしれないけど。

苦節30ウン年・・愛想の無い顔で頑張って来た己の顔面矜持が許さない。

女子力がなんだー!そんなモノ食えるのかー食われるんじゃないのかー』


(いかん、私怨が滲み出て来てしまった)冷静に冷静に。

モノクロは姫様の中に宿っていた、強力な魔力に気が付かない程度の能力(軽く馬鹿にしていたりして)なのだろうが。仮にも師長の肩書が有り、召喚なんか仕出かすマッドサイエンティストさんなんだから、甘く見てはいけない相手なのだろうさ。

・・・さてさて、うちの腹黒部長とどちらが手強いか。


キャリさんは薄く微笑むと、古くてぼろいが一応応接室の様に整えられている椅子に座る様にモノクロを誘った。


「昨日は色々と混乱を致しまして、ご無礼申し上げましたね。

今は私、バリキャリ一人が此処におります。他の魂たちは、突然の異世界に驚きが強すぎたのか、疲れ果ててしまい今は深い所に沈み眠っております」


「深い所に沈み・・ですか?」


「えぇ、この世界の神官が魂をどのように説いているかは存じ上げませんが、魂とは誠に不思議なもので、その内に無限と思われる程のくうを有しておるようです。

今の状態は・・姫様の魂・・存在がからになった<心>と呼ばれる器に、我々が内包されている状態なのだろうと推察しております。

心の大きさにも個人差があり、偉大な人物程その器の容量が大きい。

我々が入り込んいるのにも関わらず、それを許容する程の心の器の大きさには驚きました、姫様の人徳の賜物なのでしょうか?感心しておりますのよ、嘸かし素晴らしい御方だったのでしょうね。

その器の最深部、暗く己の存在さえも紛れて見えなくなる様な闇の中に、他の魂達は安息を求めて沈んで行きました」


そう・・目覚めてしばらくの間は姫様の心の器に馴染めず、通勤快速の満員電車の様に閉塞感と窮屈感で苦しんだものだったが。しばらくして落ち着いてみれば、どうやら器の入り口付近で押し合いへし合いしていたようで、奥に進めば何のことも無い・・広い空間?が広がったいたのだ。




「それは・・どう言う・・」


「姫様が願っていた安息と・・私達・魂の救いを求める心が同調したのかもしれませんね。姫様が安息を求めた理由は皆様方の方がご存知なのでは?是非とも御教え願いたいものですね・・私の今後の活動の為にも」

慇懃に振る舞いながらも、此方の欲しい情報はキッチリ聞き出さねばならぬ、さぁキリキリ吐いて貰うか。



しかし、モノクロも壁際に控えている侍女達も苦い顔をしているばかりで何も話そうとはしない。姫様が自死をした理由を知らないのか、それとも話す気は無いのか・・話すとヤバい目に合うのか。甘い姫様なら良い様に誤魔化せるとでも思っているのだろうか、舐められたものである。

どうも外見に引っ張られて、目の前にいる人物が姫様御本人と錯覚している様なので、この際ハッキリ言っておこう。


「私は今、姫様の身体の中に宿って居る状態ですが、彼女の記憶や知識まで共有している訳では無いのですよ。この国の言葉を話せるし、何故か字も読めますが・・此方の世界の知識は幼児程度と言っても良いでしょう。父王の名前も知りませんし、この国が置かれている状況も解りません、勿論禁忌を冒してまで王家の方々が姫様を生かしておきたい理由もね」


姫様の身体の中に取り敢えず突っ込めば、それなりの姫様が出来上がるとでも思っていたのだろうか、幼児相当の状態と聞いて魔術師長は愕然としている。

何故そんなに驚くのか?当然の事だろうよ、いきなり異世界人を連れて来て、状態キープでいろだなんて、それはどう考えても無理と言うものでしょうよ。


「姫様の婚姻まで、あとどのくらい時間が有るのかは知りませんが。

いま必要なのは一般教養を教える教師でしょう、取り敢えず・・生活習慣から文化・歴史・地理・政治・経済・法律・軍事、この世界なら魔術か・・秘密を守りつつ教えられる教師を集めて下さい」


「姫様、その他にも社交術や貴族年鑑から家系・派閥の知識、ダンスや音楽の練習も御座います。姫様はピパノがお上手でしたが、如何でしょうかそちらの方は」


「善処しましょう」

『暗記系の受験勉強は得意だったからね、知識系の面倒は引き受けた、資格取得の鬼・ガリ勉バリキャリを舐めるなよ。任せなさい!何でも来いやぁ~』


勉強しますの言葉に救いを感じたのか、侍女達やモノクロは喜んで活動を始めた。

魔術はモノクロさん自身が教えるそうですよ、何気に嬉しそうだが姫様に気でもあるのか?この人もうすぐ嫁に行くんだろうよ?



そうです、今朝の魂のミーティングの時に、簡単な自己紹介と役割分担は決めて居たのだ。

適材適所これ重要!!沈んでなんかいないで行動しよう!なのだ。



    ******



「そう言えばまだ自己紹介もしていなかったわね、本名は言わない方が良いらしいから。私は・・」


「バリさんでしょ」  うん うん はい ふん


「バリは勘弁して、せめてキャリに・・そう言えばキャリーとか、昔ホラー映画が有ったわよね。ブサ可愛系の主人公で・・」  ? ? ? 豚の血サバーだの


「知らん、今はキャリーならパミュちゃんでしょ」 うん うん ? ?


「知らんわそんなん、もうキャリで良いわい。

あぁ~某商社の北米・食品事業・第2営業部の一応総合職です。

有能なんです!頭は良いはずなんです!人望はないけどな、以上!全員で折衝すると話がややっこしくなるから、あちら側との交渉役は任せて、異世界の知識を勉強するとかも引き受けるわ・・どうせあんたら嫌いでしょ?お勉強」  はい×3 


「キャリさんってぇ~特技が有るよねぇ~?昨日ピコピコハンマーを出してぇ~、頭ピコッとしたのはぁ~キャリさんでしょ~?」


そう言えば・・そんな事が有ったわね・・。

いつも会社でミスを連発する派遣のお嬢ちゃんとか、年上の部下とか・・文句を言いたいけど、言うと自分が悪者みたいに見えてしまうようで(ワザと涙ぐんだり、不貞腐れて俯いたりするのが奴らの手口わなのだ)やりにくい時、憂さ晴らしに頭の中にピコピコハンマーを思い浮かべて、思いっきりピコッと殴っていたのだ。

へぇ?それが具現化した?


「えぇ~凄いじゃん!頭にぃ思い浮かべたぁ~物を実体化できるってぇのぉ~?やってみて!便利グッズを~出せるかもぉ~しれないしぃ~、ほらぁ~青いデブ猫ロボットみたいにぃ~」






・・・・・すいません、出来ませんでした。

作れるのはピコピコハンマーだけでした、我ながら凄くショボイ。


「チッ、使えねえな。

どうせぇ~想像でぶん殴るならぁ~、鬼の金棒とかぁモーニングスターとかぁ、脳梁がぁ~飛び散るぅ~ぐらいのぉ~重量級でぇ~ヤレば良かったのにぃ~」


何それ・・怖い・・この子・・ドン引き×4

その後色々と話合った結果。


「俺は此処にいても退屈だから、シャコゥの中に入って、あちこち偵察して何か情報でも集めて来るぜ。お貴族様はスカしていて感じ悪いから、出来れば平民の城下町の方に遠征したいものだが。」


「どうやって外にでるの、窓には錠前が掛かっているわよ」


「ふん、俺は<鉄骨鳶>だぞ、金属とはお友達だ・・ほらよっ」


アニィはシャコウの指を錠前の穴に突っ込み回すと、いとも簡単に開錠してしまった。昔の錠前など、単純な造りでチョロイ物らしい。別に向こうの世界で、ピッキングなんかのヤンチャをしていた訳ではないらしいが。俺様は根は真面目な好青年なんだと(イケメンとは言わない、正直者なのか?)言い張ってるし。



塔の窓を開けると冷たい風が吹き込み、鳥たちがバルコニーに舞い降りて来た。


「なになにこれぇ、お姫様の属性・・プリンセススキルってやつ?」


某夢の国のプリンセス達は、窓を開けると小鳥や小動物達がやって来て、親し気に懐き共に歌い踊るのがクオリティーなのだが・・リアルに出来るとは思いもしなかった。

これは姫様の魔力スキルのせいなのだろうか、凄い凄いとJKが興奮して話していると、チビがおずおずと手を上げた。


「あの、お姫様の御力も有るかと思いますが、私鳥に友達がいます。

学校の帰りに、怪我をして弱っていたカラスを手提げ鞄に入れて病院に連れて行った事が有りました。それから元気になって退院した後でも、よく家のマンションのバルコニーに遊びに来て餌を食べたり、朝学校に行く時も飛びながら駅まで着いて来て電線から見送ってくれていました・・だから私の力も有るかもしれません。動物はどんな子でも大好きですから」


挿絵(By みてみん)


「何それぇ、かっこ良いぃ~!あたしなんてぇ駅のホームでぇ鳩のフン頭に直撃くらってさぁ、それ以来鳩の××子ってぇ呼ばれてぇいたのにぃ~・・ねぇ、チビちゃん友達だったのは鳥だけ?」


JKが指す方をふと見ると、部屋の隅にチュゥと鳴く小さな齧歯類が3~4匹。


「ハムスターも飼っていました、キンクマちゃんです・・あの子達と耳の形が良く似てます。尻尾の長い所は違いますけど」


チビ(は、嫌だとかで)約してチーは、動物使いであるらしい。

チーが手招きすると恐れもせずに近寄って来るし、話掛けると小首をかしげて聞いている様な仕草を見せる。何気に可愛い、姫様の身体を使っているので正にプリンセススキルだ。うふふ・・おほほ・・と和みたい。

そうしてチーに話を付けて貰い<鉄骨鳶>で金属とお友達の、仕事柄高い所が平気なアニィはカラスに跨って颯爽と城下町に向けて飛んで行った。此方のカラスは鮮やかな青に白のツートンで、お洒落な感じでカッコいい。


「凄い、本当に飛んでっちゃった~恐くないんだぁ~。

じゃぁ、お婆ちゃん~、私達も体を作ってぇチュゥに乗ってぇ城内の情報収集にでも~行こうかぁ~」


婆さんは陶芸が趣味なので、土とお友達なのかゴーレムを作れる。

縄文好きな婆さんは<縄文のビーナス>でゴーレムを作った。


「何それぇ!縄文人センス半端ねぇ~まじウケル~」


散々ウケていたがその体は嫌らしい、我儘なJKは婆さんにフツーので良いから~とお願いし、違う埴輪を作って貰った。ビーナスは婆さんが入り込むそうだ、国宝ってとこが良いらしい。

凝り性な婆はJKに<鷹匠>のゴーレムを作ってやった、鷹も動くのだろうか?


「じゃぁ、チュゥさんやお願いするがの。

夜までには帰るから、キャリさんとチーちゃんも心配しないで、其方の仕事を頑張ってな」


チュゥ達はベットの下の床の割れ目から壁の隙間に入り込んで、使用人の通路を使いつつ城内探訪の旅に行くのだそうだ。

何気に目で会話できるところが凄い、流石プリンセススキル。

チュウ達は<ビーナス>と<鷹匠>を背中に乗せるとサッと身を翻して、足音も無く走り去って行った。小さなチュゥと言えども動物の動きは速い、JKのひえぇ~~~ッという悲鳴が聞こえやがて・・消えて行った。

呆れた様に眺める姫様が部屋の中にただ1人、中身は現在2人だが。


「貴方が一番心配だわ、闇に囚われない様に気を付けて頂戴ね」


チーちゃんは姫様の心の深淵に再度潜り、心の欠片を探して来ると言う。

異世界に来て2日目、それぞれの活動が始まった。


鳩糞の直撃を受けると、殴られたくらい痛い(-"-)

・・・いえ、知人の経験です知人の。

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