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姫様見参  作者: さん☆のりこ
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洗濯物干し場の死闘

ファイ!魂のゴングが今鳴った!

 【洗濯物干し場は何処にあるのだ】

赤紫蘇は焦っていて、2人に掛ける言葉も命令口調になっている。


「そんなの知らないよ、王城を空から眺めた事なんか無いもの。それに今は夜だよ?月明かりだけじゃ良く見えないよフクロウじゃあるまいし」


JKはツンで答えた、モラハラを感じさせる口調はそれだけで彼女の拒否反応を引き起こす、高校生にして遅い反抗期なのかJKはトゲトゲに尖っていた。

まったくドラゴン(㏌赤紫蘇)の無茶振りにはうんざりさせられるよ、こんな恐い思いまでさせられて・・どうやら自分は高所恐怖症だったようだが・・何だかスライムまで嫌いになりそうだ。JKは内心プンスカしていた言葉には出さないが・・だって今は奴の背中の上だし。


「俺はカラスの背中から見た事あるぞ、夕日が沈んでいった方向にあったから・・もっと西の方だ、森に近くて壁に囲まれた所だった」


アニィの言葉にドラゴンは方向を変えて飛んで行った、あちらが西なのだろうか?鳥みたいに方位が解るのか?不思議な事である。


天空には大きな月が冴え冴えと輝いている。


「デカイ月だよな、あっちにはもう一つ小さなのもある」

「こうして2つも月を眺めるていると、本当に異世界にいるんだなぁ~とシミジミ感じちゃうね~」

【月は3っつだ、もう少しするともう一つ見えて来る】

「ほえ~~~」


焦る気持ちを如何にか冷静にと抑えている<赤紫蘇>には、2人ののんびりとしたアホな感想が癪に障る。姫様の命が危機に晒されていると言うのに、この2人は家臣としての自覚がないのではないかと。

もしそんな事をアニィとJKに言ったら、別に俺ら家臣とか違ぇ~し、友達じゃ無いし~・・とか答えて、更に赤紫蘇の感情を逆なでしそうだなんだが。


「あそこだ、見ろよ干しっぱな洗濯物があるぜ」

「今日はイベントで忙しかったから、取り込む暇が無かったんだろうね~」


あったあった、良かった良かったと騒ぎ立てる能天気な土偶たち。

五月蠅くて気に障るが、姫様の中の人なので絞める訳にも行かない。


【降りるぞ】


ドラゴンが着地しようと降下し始めたその時、突然物干し場である屋上が爆発したように吹き飛んだ。


            バアァァンッ


白い洗濯物、シーツだろうか?端切れとなって舞い散っている。


「きゃっ、なに?」

【魔獣だ!魔獣が屋上を突き破ったんだ、来るぞ!!】

「ヤバぇ、あそこを見ろ!あんな所にお姫がおっ立っているぞ」


見ると屋上の片隅に、月をバックに背負って、手を腰に当てて仁王立ちしている姫様がいた。


【姫!】








「しつこい奴じゃのぉ」


姫のセンターに陣取っている婆の機嫌は斜めどころかオーバーハング状態で、抑えの効かない怒りが魔力となって姫様の身体から湯気の様に立ち昇り取り巻いている。

効果音を付けるとしたら ズズズズ・・・ になるのだろうか?


「結局追い詰められたじゃないの、どうするのよぉ~」


キャリさんはもう涙目だ、魂の何処に目が有るのかは解らないが。


「どうするもこうするも無かろう、乙作戦じゃ」

「はぁ?乙作戦って?何よ」


「戦って 勝つる! 」

『勝てる訳ないでしょーーー』


キャリさんは悲鳴を上げたが、婆は泰然自若としている。

一度死んだ身で、この身体だって借りものだ、しかも好き好んで借りた訳でも無く、赤の他人とごちゃ混ぜにされて無理矢理に突っ込まれたのだ。何の憂いや遠慮がいるものか。


世間の人々は後期高齢者を都合の良い様に誤解しているが、高齢者・・年寄りと言うのは案外と気が短く、怒りっぽくて武闘派な生き物なのだ。

それに怒りを抑える脳の領域が加齢により退化してくるそうだから(諸説・個人差有り)抑えが効かないし、抑える気もサラサラ無いときたもんだ。

そのあたりがかなり退化しているらしい婆の目は、今や怒りでギラギラしていて、魔力は炎の様に燃え盛っている。


「朝の連続テレビドラマが見れなくなったのはお前のせいじゃ、続きが気になって成仏できそうにもないわぃ」

『いや、それは魔獣のせいではないし』


キャリさんはもう隅の方で見ているしかない、老人の暴走は止め難いものだ・・人生の先輩だしな。





屋上に通じる天井を吹き飛ばして出現した魔獣は、重い体をウゴウゴと使い、どうにか屋上に這い上がると首を振って周囲を見渡した。

顔?吸盤の周りの触角をワサワサと動かし、辺りを探っていたかと思ったら・・巨体をぐるりと回して姫様のいる方に向かって ピタリ と動きを止めた。


            ロックオン


ついに美味い魔力を持つ獲物を見つけたと・・喜びに魔獣は咆哮を放った。

          キシャァァァァーーー!!


「喧しいわ!図体のデカイ泥鰌めが、今こそ決着をつけてくれる。喰えるものなら喰ってみろ、返り討ちにしてくれよう」


覚悟しろ!!

婆がそう叫ぶや、王城に使われている石を魔力で変化させた。


       ズズズズオオオォォォォーーーンン


魔獣に壊された屋上の破片が塊になって盛り上がり、瞬時に重なり合って立ちあがり始め、人形・・ゴーレムを形成しだした。そのゴーレムは何やら昔懐かしい巨大ロボットの様な形で、婆が子育てしていた遥か昔むかし、子供向けのTVドラマに登場していた画面に雑に合成されていたロボットそっくりだったのだが。


・・昔の事だし?著作権も消失しているかもしれないし?


婆のいい加減な記憶で再生されたロボット(ゴーレム)は、原作破壊の代物だったので何処からもクレームは来ないだろう。

若い異世界人の仲間も古すぎる事と、特撮オタクが居なかったので出典が解らない様だ。

ただただ、すげーすげーと喜んでいる。


       ピコピコピー ピコピコピー



     巨大八目鰻異世界バージョン VS 婆ゴーレム



婆ゴーレムは先手必勝とばかりに八目に組み付いた、腕を回して八目にしがみ付き絞め殺すつもりなのか、ギュウギュウと胴体をベアハッグの様に締め上げている。

八目からは ギュエェェェ~~ と苦しそうな悲鳴が上がった。

婆はそのまま力任せに持ち上げると、ブリッジをする様に背中をそり返して後ろに向かって思いっきり放り投げた。


「おぉ、投げっぱなしジャーマン!やるな婆!技が古臭いけど」


アニィもう怪獣大戦争に大興奮である。


婆が若かりし頃はプロレスの黄金時代だったから、7時のゴールデンタイムにはプロレス中継が放送されていたものだった。東洋の巨人ジャイアント 対 盆梅絵・・今では知る人も少ないだろう。

亭主と息子3人、男ばかりの家庭だったから嫌でも中継は見せられた、だから婆はプロレスの技にはちょっとばかり詳しいし五月蠅い。


ぶん投げられて伸びている八目の頭らしき部分をヘッドロックで締め上げる、魔力を吸う吸盤さえ気を付ければ倒せない相手では無いだろう。

このまま首を引きちぎってくれようと、婆の攻撃の手は緩まない。

八目は苦しがっているのか、長い身体を左右に振ってもがいていたが、突如尻尾の部分を振り上げると、後ろからゴーレムの後頭部に被り付いた。


「何あれ!尻尾でも吸い付くの?ちょっと待って!あっちはお尻でしょう?

なんでなんで!あれ、まさか肛門でチューチューする気なの?えっ?まって!

いや~~肛門でチューチューって、サイテーいや~~~~~」


確かにどちらが頭か判りにくい生き物だが、尻尾の方にも吸盤が有ったのか触角が蠢いていて、チューチューと何やら吸収しているようだ。


「いや~~肛門で~~」

「しつこい!肛門肛門って連呼すんなよっ」




【拙い!あいつは魔力を吸収する魔獣だぞ、後ろの小さな吸盤でゴーレムの魔力を吸収し始めた。あのゴーレムは姫様が造り出した物だ、このままだと姫様の魔力があいつに全部吸い込まれてしまう】

「あいつ物理攻撃は効かないしな、魔術は魔力に変換して吸収するらしいし・・もう詰んでね?」

【~~うぅ諦めるな!姫ーーーー!!】


赤紫蘇が絶叫した、こいつホント姫の事好きだな。

アニィが感心していた時に、ドラゴンの背中から突然JKが叫んだ。


           「凍れ!」


某有名錬金術師さんの様に両手を パンッ と合わせて叫ぶと、魔獣に向けて腕を伸ばし指パッチンする・・その途端、派手にエフェクトが飛び出して魔獣の身体を包み込むとピキピキピキッと凍らせていく。


「うぉう、凄ぇ!何か色々と技が混じっているみたいだけどな?」

「ふふん、空気読まずにその場の雰囲気を凍らすのは私の得意技だからね」


雰囲気と魔獣を同列に語るのは如何なものかとも思うが、アニィはあえて突っ込みはいれなかった、結果オーライ終わりよければすべて富士吉田だ。


【あの魔獣は魔力を餌にするはずなんだが、どうやって凍らせたのだ】

「生き物の身体は、ほとんど水分で出来ているでしょう?その体の中の水分が凍りつく様子をイメージをして命令・実行したんだよ」

【魔術を使いながら、細胞に直接物理攻撃した感じなのか?】


JK良くやった、すげーすげー。

「伊達に漫画ばっかり読んでいないよな、いい仕事したぜグッジョブだ」


氷で覆われた魔獣は体の中の水分が凍り膨張していくせいなのか、内側から膨れ上がりボロボロと崩落していく。

吸盤攻撃から逃げ出した婆ゴーレムは、魔獣から距離を取ってその様子を見ていたが。

不敵にニヤリと笑うと。


「良い頃合いじゃろうて」

そう呟き、後ろ廻し蹴りの一発で魔獣を粉々にうち砕いた。


婆最強伝説爆誕!( *´艸`)

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