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姫様見参  作者: さん☆のりこ
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こんなん出ました

やっと話が動き始めました。

「!」


何か嫌な感じがしてモノクロは口を噤んだ。


『何だろうこの感触は、何かが私の貼った結界に触れたのだろうか』


足の爪先から徐々に這い上がって来るような経験した事のない怖気に、モノクロは全身に鳥肌が立って身震いをした。寒そうに両腕を擦り、身体がムズ痒いのか貧乏ゆすりをし始めた。

・・・令嬢達に囲まれたその只中でである、これは何気に感じが悪い。


モノクロは高位の貴族の3男で、身分の割にはお買い得感が薄いのだが、それでも魔術師団の師長を務める腐ってもエリート様なのだ。

顔の方も薄い感じで、特にこれと言った特徴も無い平凡な容姿だ。

御洒落っ気も無く、寝癖が付いたままの髪で平気で城内を闊歩する猛者でもある。

年がら年中真っ黒な衣装で過ごしていて、話しかけても魔術関係の話ししか喋らず、普通の貴族にとっては面白みの欠片も無い人物なのだが、適齢期の令嬢達敵には<ダークホースの・・大穴>の立ち位置にいる。


その大穴男が突然押し黙って、非常に気分の悪そうな顔をして辺りをキョロキョロしだして大変に挙動不審だ。視線は令嬢たちの頭の上を通り越していて、これは社交の場ではありえない態度だった。


令嬢達は思った、何か私達に文句でもあるのだろうか?と。


『やっぱりこの人、魔術馬鹿の変人男なんだわ。感じが悪いったら!私達だってお父様に言われて、渋々あなたと話をしているんで有って、誰が好き好んであなたなんかと・・・』


令嬢のプライドの鋭い所に触れたのかエライ言われ様である。

本人に聞こえなくて良かった、これで案外繊細で女慣れしていない男なので、聞こえていたらモノクロは泣いてしまうかもしれない。



     ******



「うぉお、凄ぇ何だこれ」


アニィが投げつけた濡れたタオルな様な魔力?は、モノクロの魔力と思われる霞の様な物にぴったりと張り付きアメーバが餌を取り込んで行くように中に包み込むように浸潤して行った。その力に反発するように黒い霞が蠢いている、はっきり言って良いのなら大変に気持ちが悪い。


「何か粘菌大戦争って感じだな」


「どうでも良いけれど、これで扉があくの?」


さあ?此処は赤紫蘇の持たせた魔術具に期待するしかないだろうさ。

黒い魔力?と赤紫蘇色の魔力は混とんとしながらも決して交り合う事は無く、静かにボコり合っているようだ。徐々に赤紫蘇色が広がって黒を扉の外側に押し出し始めた、これは赤紫蘇が優勢なのか?


「おー、良く解んねぇけど頑張れー」


「何か此処の異世界の戦いって地味だよね、魔力の戦いってもっとこうエフェクトが飛び交う派手なものだと思っていたよ」


広がった赤紫蘇の魔力が真ん中から分かれ、ドーナッツの様に穴をあけ始めた。扉の鍵穴の所の魔力を排除している様だ、赤でも黒でも魔力が有ると扉は開かないらしい。


「鍵穴なら任せろ」


アニィのシャコウが魔力のウネウネを気にしながら扉に近づく、アニィに向かって黒のウネウネが伸びて絡めとろうとしてきたが、赤のウネウネがそれをディフェンスした。

こいつら目でも有るのだろうか、アニィは刺激しない様に静かに慎重に鍵穴に取り付いた。


「うえぇ~気色が悪い、触ったら悪い病気になりそうな気がするぜ」


「さっさとやらないと、誰か来たらヤバいよ」


ハッパを掛けているJKはチャッカリと安全圏内に避難していた・・調子のいい奴だ。応援してくれるならポジティブな言葉の方が良いのだが。


鍵穴に腕を入れ込んで、力を込めて回してみる、


          ガチャッ


重い音がして鍵が開いたようだ、あとは開くだけだがこれが重い。


「JK手を貸せ重くて開けられん、全開でなくて良い、俺が入れる隙間が良いんだ」


「うぅええええええぇぇぇぇ~~~~」


全身で拒否を表したが、他に誰もいないんじゃ仕方がない。

ウネウネに近づくのは嫌だが此処で失敗したらまた面倒事がおきそうだ、JKは敵前逃亡したら女が廃るとばかりに駆け寄って小さな手を扉に引っ掛けた、埴輪の手ではニギニギしか出来ないからだ。

いち・に・さん・で力を合わせる。


「どっせーーぃ」


渾身の力と言っても小さな埴輪2体ではたかが知れているが、それでも4cm程の隙間が空いた。瞬時にウネウネを避ける様に扉の内側に滑り込んだ、アニィだけが・・。

ミッションクリアとばかりにJKはまた安全圏内に飛びのいた・・案外素早く命根性が強い奴の様である。


「真っ暗だ・・ライト・・」


シャコウの遮光器の様な目が僅かに開き光を灯した。

『うん、宇宙人感が満載だな。やっぱり遮光器土偶は宇宙人のフギィアなのかもしれない、婆もそんな事言っていたし』


アニィが周囲を見渡すと、すぐ近くに壁と天井が見えて思いの他狭い空間だった。入り口の扉より小さな空間だ、金庫の代わりみたいなものかも知れない、丸まった羊皮紙とかは権利書の様なものなのか?

姫様の形見は宝飾品と言っていたな、宝飾品・・ってなんだ?

あれか指輪とか首輪みたいなものか、女はそんなのが好きだからな、何が良いのかサッパリ解らんが。


『そう言う俺も中2病的な骸骨の指輪とか、何やらオドロオドロシイ腕輪などを持っているんだけどね。中2病感満載のやつを・・あれ結構お高かったんだけど、形見とか言って誰かに持って行かれちゃったかな』


「おぉ・・これか?」


狭い空間に存在感が有る光り物が有った。


「あれか、お姫様が頭に飾る奴か・・ティアラとか言ったか。

可愛くも無い従姉妹のガキに無理やり買わされた玩具に似ていないことも無い、これで良いの~~とか言いやがって。

おっ、指輪や腕輪・耳飾りもあるぞ・・これは首輪か?足輪や鼻輪は無いのか?しかしデカイ石が付いてるな、飴玉みたいだ・・どっかの洋風宿屋の妖怪みたいな女社長が付けているのみたいだ」


有る物全部持って行けばいいか、要らなかったら捨てれば良いんだしと、アニィはスライムを掴むとティアラに投げつけた。

小さなスライムの中に何故か大きなティアラが飲み込まれて行くシュールな光景だ、ティアラを飲み込んだスライムは一度 カッ と光ると、自発的に動き出してどんどん宝飾品を飲み込み始めた。


『何だこいつ、AIでも搭載しているのか?ルンバみたいだな・・なら初めから一人で事を進めてくれれば良かったじゃん』


アニィがそう愚痴垂れていた所、すべてを飲み込んだスライムが突然苦しむようにガタガタと揺れ出した。


「何だ、どうした大丈夫か?」


アニィの呼びかけにも答えずに、スライムはどんどん振動し、上下左右にビヨーンビヨーンと伸び縮しだして、ついにはバウンドまでし始めた。


これはヤバい・・工事現場で働くアニィは各種工作機械を目にして来たが、不具合を発生させた機械はもれなく変な振動を始めて、騒音をまき散らし、熱くなって何やら嫌な臭いがしだしたと思ったら・・爆発・・まではいかなくても壊れるのだ。

オシャカってやつだな。


「やばっ」


野生の本能的にビビッと来るものを感じたアニィは一目散に逃げだした、扉をすり抜けると短い脚をちょこまかと動かしJK目掛けて走る。

物陰に隠れていたJKは驚きに目を丸くさせている、埴輪なのに・・埴輪はどんな時でも横長の目でいるべきなのだが。


「どうし」


「解らんが、何かヤバそう・・赤紫蘇の奴、何をする気だ?」


2人は必死に走ってどうにか衣裳部屋から脱出し、王妃の部屋の壁の穴に隠れた、チュウ達は既に異変を感じたのか姿が無い。

穴から頭だけを覗かせて様子を伺っていると、衣裳部屋から ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・ と不吉な振動が聞こえて来る、これは何だ!

恐いのかJKがしがみ付いて来たが、今は非常時なのでお互いノーカンだ。


「来る」


「だからぁ何がぁ~!」


     ズドオオオオオオォォォォンンンンン・・・・・・


破壊音と共に辺り一面立ち上った埃で何も見えない、何か シュゴーシュゴー と言う生き物が発するような息遣いが聞こえて来た。

生臭い匂いで息も出来ない。


「うわぁぁ、なんだありゃぁ」


「きゃぁーーーー!きもいきもいきもい」


JKの悲鳴は思ったよりも可愛かった。

が、そんな感想を述べている場合ではない。



    *****



「何だ今の振動は」


丈夫な造りの王城でも、流石にさっきの破壊の振動は感じた様だ。


       ザワザワザワザワ・・・


不安げに貴族達が囁き合っている。

モノクロ事、魔術師長は眉間に皺を寄せて目を細め後宮の方角を眺めていたが。




「・・・何故、魔獣が王城に・・」





彼の呟きで、ホール内はパニック状態になった。


「魔獣が出現したもよう!騎士達は集合せよ、侍従たちは高位の貴族達から王城から退避させろ」


騎士団長の声も虚しく、ホールにいた人々は我先へと出口へと殺到し大変な混乱状態となってしまった。


魔獣出現!

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