舞踏会~4
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ダンスに誘われてホールの中央に向かった姫様(inチー)は、プルプルと子羊の様に震えていた。いきなりキャリさんに交代しろと言われ、姫様のセンターに押し出された事にも驚いたが、何よりもさっきの<公爵>と名乗っていた老人の濁って澱んだ敵意の籠った目に晒されたショックが大きかったのだ。
チーはあんな怖い目で睨みつけられた事は今まで一度もなかったし、手の掛からない良い子で通っていたので(アニィとは大違いだ)大人から酷く叱られるような事は皆無だったからだ。
「・・怖かった・・・」
思わず漏らした一言にあの場から連れ出してくれた男性(たぶん騎士の人)は、エスコートで自分の腕に掛かっている姫様の手を優しくポンポンした。
「恐れるのも無理は有りません、彼は策を弄して人を陥れる恐ろしい人ですからね、今日は警備の騎士も多数出ていますが・・くれぐれもご用心なさりますように」
『くれぐれも用心しろと言われても、どうしたらいいのかしら』
年若いチーにはとてもじゃ無いが、対応しきれない・・・。
「人を陥れる・・・まさか姫様のお母様が早く亡くなったのも・・・」
騎士は何も答えてくれずに中央まで着くと、恭しく姫の手を取りホールドの姿勢に入った。美男美女のカップルの立ち姿に周囲から「ほうっ」と感嘆のため息が漏れる。
アニィ渾身の作である<イケてるドレス>は腰の括れが良く見えるから、この世界のトレンド<テルテル坊主シルエット>のドレスより断然見栄えが良い。
=社交ダンスの女性パートの美しさは、撓る様に反りかえった背中のラインに有ると力説していたアニィだったが、はたしてどうであろうか?アニィは背中の筋肉フェチなのだろうか・・キモいぞ。
まぁあのヘタレの事だから、ボディビル風に鑑賞していただけなのだろうが=
週に3回バレエ教室とピアノ教室に通い、日々のストレッチも欠かさなかったチーにはダンスの素養が有った。最も彼女の将来の夢は獣医さんらしいのだが、踊れる獣医さんなんて素晴らしいでは無いか。
他の貴族達が忖度して?開けた広いスペースで、2人は腕を絡め見つめ合いながら音楽を待っている、騎士は微笑んで姫様は目を潤ませて。その様子は心から思い合っている恋人同士が、他国の干渉による政略結婚で無理矢理引き裂かれ、泣く泣く離れ離れになる前に・・最後の思い出を作ろうと惜別の念が思いっきり籠められたラストダンスの様に見えた。
ホールの隅では令嬢達が姦しく囀っている、あのお二人はもしかして恋人同士なのではないだろうか?と、もう脳内は妄想で大変な騒ぎになっている様で、今日の噂は尾ひれも胸鰭も盛大に付けて瞬く前に広がるであろう事は間違いは無いだろう。この世界はまだ羊皮紙を使っていて紙は大変な貴重品だから、薄い本は作れないだろうが、たぶんお抱えの吟遊詩人とかが<悲恋の物語り>を流行らすのだろう。
見つめ合い踊ろうとしている美形同士の様子を黙って鑑賞しているしかない妹姫は色々と、もう何だか色々と悔しくてムカついて、歯噛みして実際にハンカチを噛みしめてキーッとなっていた。
音楽が奏でられた・・3拍子、ワルツモドキだ。
2人はリズムに乗って風に浮かぶ花びらの様で軽やかにクルリクルリとターンをする、動きや息もピッタリで流れるような見事なダンスは見る者の目を奪って行った。
「素敵・・」
令嬢が頬を染めて見つめている、姫様のドレスは確実に流行しそうだ・・
「姫様、私と踊って下って有難う御座います、申し訳ありませんがもう少し私を助けては下さいませんか?」
「はぃ?」
何の事だと?を浮かべたチーに、彼はとつとつと語り始めた。
何でも彼は侯爵家の次男坊で実家の柵も少なく、騎士団に所属して気楽な生活を謳歌していたそうなのだ。そのフリーな所と適当な能力(㋖仕事が出来過ぎる婿は王妃の実家・公爵家に歯向かうかもしれないから良くないんだろう)が丁度塩梅が良かったらしくて(㋖褒めて無いよね)宰相・・王妃の実家である公爵家に目を付けられてしまったのだと言う。
「妹姫のお相手にどうかと実家に打診が来たそうですが、妹姫の配偶者は王配に成らねばならぬ運命をもれなく背負わされます。私はその様な面倒臭い立場になるのは御免被ります、嫌なんです、あの妹姫の旦那に成るなんて冗談じゃない・・この舞踏会で殊更に姉姫様との仲を見せ付ければ、あの妹姫でも興ざめする事でしょう、ああ見えてプライドの高い妹姫ですからね」
「はぁ?」
チーは何の事だと解りかねているようだが、キャリさんにはバッチリと解った、これも年の功なのだろう。成程ねぇ・・姉のお古を宛がわれるなど、全世界の妹族にとっては屈辱以外何ものでも無いだろう・・でもさぁ。
㋖『ふ~ん、そんな事言うんだ』
キャリさんはセンターにいるチーの脇にスルリと紛れ込んで、騎士で侯爵家の二男で、気楽な暮らしが好きな、面倒臭い事が嫌いな男を見つめて小首を傾げつつ微笑んでやった。
「でも・・そうかしら?人の大事なものほど欲しがる輩もおりましてよ。
憎い相手の大事な者を無理矢理にでも奪い捕り手に入れて、悔しがる様を想像して優越感に浸るとか・・手に入れたら入れたで、もう用は無いし見ているとムカつくから殊更に雑に扱うとか・・2人にとっては(相方は姫様になるのだろうが)最高の嫌がらせになるし、結構気分の良い復讐になるのではないかしら?」
にっこりウフフフ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
㋖『どうも黙って引っ込んでいられない所が良くないんだよね』
そうです・・毒を吐いてビビらせたのはキャリさんでした、踊る二人は揃って驚き目を見張っていたが。特にチーは思ってもみなかった言葉が口からスルリと出て来て驚いていた、自分が考えてもいなかった事が勝手に口を付いて出て来る感覚は恐ろしい・・二重人格の人はこんな感じなのでしょうか。
とにかく、驚き過ぎて蒼白に成っている騎士のフリーズを溶かなければならないとと健気にチーは考えた。
「えっと・・その・・御免なさい?↝」
「いえ、私こそ失礼しました。姫様を私事ごときで利用しようなどと、身分を弁えず考えも足りずにご無礼いたしました」
㋖『その足りなかった考えって只の自分の保身だよね、姫様が妹に八つ当たりでもされて苦労したらどうしてくれんだ!この馬鹿ちんの自己中野郎めが!』
キャリさんの嫌味がさもこれから起こりうる<真実>の様に感じて、心底怖じ気付いたのか1曲踊り終わると婿養子候補の騎士さんは挨拶もそこそこに脱兎の如くに消えて行った。ばいばい。
・・・まて、護衛はどうした!?
姫様の中の人が5人・・誰かをメインにしようと考えていましたが、誰もかれもセンターを張れるような魅力も無く・・どうしましょうね。
その為視点がコロコロと変わるので、読みにくい所が多々ありますが・・王城脱出編まで書き進めていますので、王城をトンズラした後に一旦お休みして、ゆっくり書き直そうと思っております。
御眼汚し申し訳ありません・・(;´Д`)
お話書くって、やっぱり難しい~~~~(◎_◎;)ですね。




