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姫様見参  作者: さん☆のりこ
15/30

姫様の願い~1

夜の見回りは・・恐ろしい(;´・ω・)

騎士団長の回想からのスタートです。

 夜中の王城はかなり不気味だ、明かりが少ないから薄暗いし、暗い色の石で出来た造りな事も有って幽霊話などがまことしやかに語られていたりする。

先の戦でもこの城が戦場になった事など無かったのだが、何故か首無し騎士や自害した王妃の幽霊を見たとの目撃談が絶えない。

・・・繰り返して言うが、この城にそんな史実は無い。



 厳しい顔をしたこの図体のデカイ中年男(独身)騎士団長は、今夜自ら警備の役を買って出ていた、姫様から警備の不備を指摘された事が心に引っ掛かっていたからだ。

姫様の事故の晩、部下の騎士達は皆真面目に仕事をしていたと言ってはいたが、騎士団長としてはその報告を鵜呑みに出来ない事情があった。

王城の治安を守る騎士と言っても、貴族の出身で有る以上属する派閥が有るものだ。王妃の派閥・・彼女の実家である公爵家に連なる者も多数在籍しているので、残念な事ながら姫様に限っては王族として尊重され身の安全を保障されているとは言い難かったからだ。



【お姫は殺されたんじゃねぇの?】

【こんな飯では、遅効性の毒を盛っているのと変わらないぜ】



姫様の発した言葉が頭から離れられない、喋ったのは中身に詰まった粗野な男だが。


国の中枢に巣くう王妃・公爵家の派閥に敵対する者達の動向が気になる、王に忠誠を誓う家臣とて決して一枚岩な訳では無いのだ。足の引っ張り合いは日常茶飯事で、誰も彼も仲間の失敗を望み落ちぶれ役職が空くのを待っている。

王国の治安を担う騎士団の長としては、大変に気分が悪い・・何か嫌な事が起こる予感がするのだ。


王家には今、二人の姫様しか子供がいない。

敵国から和平の為に輿入れして来た、今は亡き王妃が産んだ姉姫。

王国の重鎮として長い間王を支えて来た、公爵の娘を母に持つ妹姫。


忌まわしい事故が起こり、姉姫が儚くなって(まだ事実は隠されていて、とんでもない魂が呼び寄せられて来た訳なんだけれども。どうすんだアイツら)、妹姫が帝国に輿入れする事になれば王国には後継ぎがいなくなってしまうのだ。


そうともなれば、昔王と仲たがいして出奔し、今は帝国に家臣として仕えている王弟が、帝国からの圧力を背景にして城に意気揚々と乗り込んで来る事も考えられる。そうなれば更なる属国化が推し進められてしまうだろうし、帝国に支払う上納金も値上がりして財政はますます逼迫するだろう。

そうはならなかったとしても、王妃はもう年だからこれ以上御子を望む事は不可能だろう、今更側妃を選定するにしても揉めに揉める事は火を見るよりも明らかだ。

王国内の貴族から前途有望な養子を迎えるのが良いのか、それとも公爵の傀儡に成る様な頭の弱い男を選ぶべきなのか・・どちらにしても、王国内が荒れるのは間違いが無い。

今後の王宮の予測不可能な動きと共に、増えるであろう騎士団への要請と、己の処遇はどうなるのかと考えると溜息しか出ない。


『あの姉姫様が大人しく嫁いでくれれば、事は丸く収まるのだが』


魔術師長め、もっとマシな魂を召喚できなかったのか無能めが!

そんな事を考えながら、騎士団長は塔の回廊を巡視していた。



      「・・・おじ様」


挿絵(By みてみん)


突然話しかけられて、団長は縮上がった・・何処とは言わんが。

案外肝っ玉が小さい男なのである、図体と態度はデカいがな。

騎士団長を驚かし、回廊の暗がりの隅から出て来たのは薄物の上にガウンを纏った姿の姫様だった。


「姫様・・いったいどうなされた、こんな時刻にそのような格好で」


王城内には後継者争いに巻き込まれ、惨殺された王子・王女の幽霊話も残っているので(繰り返して言うがその様な史実は無い)ドキッとしたのだ。

嘘と知っていても怖いモノは怖い、王城の雰囲気はもっと怖い。


そう言えばこの姫様<異世界人>に嫌われて、今まで仕えていた侍女たちは皆内密に(王妃に知らせるとまた大騒ぎ出するだろうし面倒なので)暇を出されていたのだったと思い出した。

今姫様は傍仕え無しのフリーの身だった、フラフラと真夜中に歩き回っても咎める者もいなかったのだろう。




「おじ様、お願いです助けて下さい・・姫様が、姫様がここで泣いているの」


そう言うと、姫様は細く白い腕を晒して、両手で悲しそうに豊かな胸を押さえた。

騎士団長は独身だ・・・。



    *******



遡る事、数時間前・・丑三つ時のミーティングタイムだ、報連相尋問会とも言うのだが・・キャリさんがオカンムリだ。


「へぇ、それでアニィ君は素性も知らない男をあっさり信用して、美味しいモノに釣られてウマウマと食べた挙句、此方の情報をベラベラと話して来たって訳だ」


ふぅ~ん・へぇ~・ほぉ~っと、キャリさんの魂は暗い光を明滅させている。

キャリさんはリーダーに対して報連相を怠り、勝手に話を付けて来たアニィに怒っているのだ。

肝心の他のメンバーはと言うと、別にキャリさんをリーダーとか上司とは思っていなかった、会社勤めの経験が無いから上役とかの実感が無いらしい。

JK的に言うならば、キャリさんは頭脳労働担当の戦隊物で言う所のブルーかブラック的な位置付けだろうか?

婆は戦時中の隣組の班長の奥さんを思い出していた、口うるさい人だった様に記憶している・・数年前に大往生したと風の噂で聞いたが、別に義理は無いので葬式には行っていない。

唯一の社畜であり組織の中で働いていたアニィは、残念なお知らせだが脳筋だから力こそすべてで、腕力の弱そうなキャリさんをリーダーとして認めてはいない。


「報告する暇など無かったんだから仕方がないだろう、赤紫蘇はお姫の母ちゃんと同郷で味方だと言っていたし、お姫の顛末を聞いた時には驚き悲しんで凄く凹んでいたからな、あの様子なら敵では無いだろうと判断したんだ。それにあのカラスは赤紫蘇の命令に従っていたからな・・魔術師だと名乗っていたし、今は味方が少しでも欲しいだろう?たぶん良い奴だったと思うぞ?美味いもんくれたんだし」

「本当にぃ・・食べたの~?」


頷くアニィを見て、JKと婆は思わず顔?を見合わせる。


「あいつ迂闊そうな奴だとは~思ってぇ~いたけどぉ~、本当にぃこっち世界のぉ食べ物たべちゃったんだぁ~。まぁ、自分達の世界にぃ帰れるかぁどうかぁ~何てぇ~分からないんだけどさ・・私達だってぇ」


コソコソと・・いざ帰れるとなったとしてアニィだけ駄目となったとしら・・仕方が無いよね、この世界に見捨てて帰ろう、そうしよう・・JKと婆は目と目で話し合っていた。




「それでさ、色々と貰って来たんだ。

ここの飯は不味いだろう?これが各種調味料、俺達が飯を食べられないとお姫の身体が弱るって酷く心配してなぁ赤紫蘇の奴」

「おっ、何それぇ!」


アニィの遮光器土偶<シャコウ>の小さな肩の上に、いつの間にか水色をしたプルプルしたものが乗っかっている。プヨン~プヨン。


「何それ!何それ~ぇぇ!!異世界のお約束?!」

「これなスライムに偽装させた赤紫蘇が開発したアイテムなんだと、魔力はスライム位しか感じさせないから怪しまれないんだけど、小さい也でかなりの荷物を中に入れられる?超便利グッズらしいぞ?可愛いだろう~」

「いあやぁぁ~~触らせて!きゃぁ~プルプルぅ」


JKは素直に喜んでいる、異世界に来たのなら会いたいのはスライムでしょう・・それも可愛い奴。臭いのはお断り。

そう言うと、アニィは街の外れのゴミ捨て場にスライムが自生していて、環境の清潔に貢献しているとカラスに教わったと話してくれた・・そこのスライムは餌の為か臭いらしいので残念だ。いつかベビちゃんスライムを捕まえて、美味しい餌を与えて臭くない個体を作ろうと密かに野望を持ったJKさんである。


慎重派のキャリさんはまだ疑っている、

「その男は本当に信用できるの?アニィ君が信じられる奴だと判断した理由は、単に美味い物をくれたからなんでしょう」

「それ以外で何を判断し信じる?」


良い笑顔で答えるアニィに、話にならないとキャリさんは頭?を抱える。

ハニートラップ以前に、飯トラップでこの男は簡単に引っ掛かり会社の機密を漏らすであろうと。キャリさんは深刻に考えがちだが、アニィは会社の機密など難しい事は覚えられないのでスパイに成るような心配はないのだが。


キャリさんだとて、人生は単純に考えた方が楽だし、考え込んでも仕方が無いとは思うのだが・・アニィの言い草にムカッ腹が立ってしまう。こればかりは性分なので仕方がない。


JKはスライムモドキで遊んでいるし、婆さんは疲れたのか背中を丸めて正座している・・魂なのに、くたっと座っている所が正座っぽいのだ。



はぁ~大きな溜息をひとつ吐いて婆が言う。


「どちらにしてもよぉ、このままこの城におったら、無理やりにでも帝国に嫁に行かされるのは決定事項だしのぉ、そんな所に連れられても碌な事には成らんだろうによぉ」


「ねぇ~、この子のぉ~名前何にするぅ?♂♀有るのかなぁ~」


「逃げるにしても、協力者がいるといないとでは大違いだろう?俺らこの辺の地理も解らないし、食い物も必要だし、追手から逃げながらサバイバルしつつ、尚且つ飯を探すと言うのは、こんなか弱そうなお姫にはとてもじゃ無いが無理だろう」


「スライムだからぁ~」


「姫様でなくても無理でしょう、知識が無さすぎるぁもの」


「スーとかぁスイとかぁ、よく有る名前はぁ拙いから・・大人の事情的にぃ・・スライムだからぁ~~ポヨン!そう!ポヨンにするぅ~」


JK以外はさして興味が無いので、スライムモドキは反対意見も無くポヨンと名付けられた。


「お前、名前なんか付けたら情が湧いて、向こうの世界に帰り難くなるんじゃないのか。置いて行くのかポヨンの事、可哀想~ひでー女~~」


「いや?野生に帰すだけだし、全然大丈夫、あたし帰るし」





騒ぎを余所にキャリさんは一人沈思黙考する、情報の整理と状況判断は大事だ。


『下女達の話を盗み聞きして来た<婆JKコンビ>は城に残るのは反対の様だ、帝国に移動するよりは、亡き母親の祖国の方がまだ待遇が良いのではないかと考えている。アニィが言う赤紫蘇男が本当に味方なら、脱出するのも良いかもしれない・・でも・・・』


キャリさんは・・判断しかねていた。

今日習った一般教養ではこの世界の不備ばかりが目につき、恐ろしくてとてもじゃ無いが、外に出る勇気が起きなかったからだ。現代人がいきなり中世以前の修羅の国にトリップして、無事に馴染めるだろうかと・・こんなお姫様の柔な身体で果たして生きて行ける世界なのかと。


仮にも社会人13年目、年長者として安全第一に他の魂達を導かなければならないだろう・・元々苦労性なのか、頼まれてもいないのにキャリさんは思い詰めていた。




皆が無駄話をしているとやっとチーが帰って来た、何だか疲れた様子で心配になる。


「お帰りなさい遅かったね、大丈夫?顔色・・は解らないけど、疲れている感じは解るよ何か有った?」


「疲れたわけでは無いのですけど、どうしてもお姫様の感情に引きずられて・・鬱モードになってしまう様な気がします。前に拾った欠片が共振するように鳴るので、探すのは前程には苦労しなかったのですけれど・・小さな欠片しか見つからなくて。何だか此処にはもう欠片は無い様に感じるんです」


これがその欠片です・・と、差し出されたそれは昨日の者と比べても小さいと言うか、弱々しい感じで今にも消えそうだ。魂の欠片って、いずれ消え去ってしまう物なのか?

心の欠片を集めて、姫様を復活させ元の世界に帰還すると言う<龍玉計画>はどうなるのだ。その方法でしか、元の世界に戻れる気がしないのだが。

でも肝心の欠片がこれでは・・。




「そうそう、そう言えば赤紫蘇に頼まれていたんだ・・え~~と、魂の欠片が見つかったらこれに包んでくれって言われて預かった物が・・たしか」


アニィが聖魔石outと唱えるとスライムの中から何かがポワンと飛び出して来た、淡い光を発する温かく柔らかい不思議な固形物だ。


「聖なる魔石とか言っていたぞ、これな食うと旨いんだ・・魂のご飯に成るくらいなんだから、お姫の欠片の修復に良いのかも知れないな」


「これって食べられるのぉ~確かにぃ~いい香りがするぅ~。

いやいや・・食べませんけどねぇ~私はぁ~」


チーが魂の欠片を摘まむんで、その聖魔石とやらの光の中にムニョンと埋め込んでみたら・・更にポワンと光が強くなった。

しばらく眺めていたら、欠片の輝きが更に強くなり震える様に音を出し始めた。


「・・欠片が話しています・・お姫様の呟き・・」


皆で耳を傾けてみたが、どうやらチーにしか聞こえないらしい。

青少年にしか聞こえない音波って奴か?それなら何であたしに聞こえないとJKがゴネたが、心根の美しさも関係しているのかもしれないとアニィに言われて怒っている。


「あたしだって心は・・まぁ、多少腐っているかも知れないけど」


JKは基本身内(友達を含む)とお気に入りのアイドル・俳優(二次元を含む)以外には冷たい人間だ、本人がそう言うのだから間違えは無い。



雑音をシャットアウトして、チーはひたすら熱心に耳?を傾け、魂の欠片となってしまったお姫様の悲しい事情を聴いている・・良い子だねぇ。


「あの、お姫様のお母様の形見の宝石が王妃様に盗まれて、偽物にすり替えられているそうです。大事な物なので取り戻したいと悲しんでいます」




「おし!取り返そうぜ」

「何で私達が・・」



「何でもないだろう?

お姫は死ぬほどこの城を出たがっていたようだし、魂になった今でも大事な形見を取り返したいと願っているんだろう?願いは叶えてやるべきだろう。お姫の体に間借りしている俺達は店子の様なものだからさ、大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然!一宿一飯の恩が有ろうよ・・俺達が尽くせば、お姫が蘇った時に協力してくれる可能性が増えるだろうしな」


「打算かよ!」


話し合いの結果、姫の意向を優先に行動する事になった・・城の奴らに協力してやる義理は更々ない事だし。

そうして冒頭の騎士団長との邂逅シーンに巻き戻る。





「あのねあのね、お姫様のお母様の形見の宝石が、意地悪な人に盗られて偽物とすり替えられてしまっているそうなの・・それがお姫様は凄く悲しいんだって。お母様の瞳の色に良く似た宝石が使われていて、それを見るたびに、お姫様はお母様に慰められている気持になれて、あのね・・嬉しかったんだって・・・」




姫様の姿かたちに、ロリ風の語り口・・・鳴呼尊い。




「チーに頼んで正解だったな、俺様の人選に狂いはない」


子供に免疫がない(若い女性にも悲しい事に無いのだが)騎士団長は瞬殺で落ちた、JKやキャリさんではこうはいかなかっただろう。

美女と野獣では無いが・・野獣は純粋無垢な者に弱いのだ。

外された2人は何気に面白くなさそうだが、戦隊ピンク枠はチーで決まりだね。


「承りました、この騎士団長・・騎士の名誉に掛けまして姫様の憂いを晴らしてごらんに入れましょう」



・・・ちょろいね、ちょろ団だ。


騎士団長・・良い人なんですたぶん( 一一)

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