埴輪達は見た
JKと婆のコンビです、孫とお婆ちゃんの感じかな?
「一時はどうなるかと思ったけど、あの娘が生き返ってくれて良かったわ」
この山城の様な、たいして広くも無い武骨な建物の・・一応後宮と言うべき処なのだろうか?女ばかりがいる一室に何故だか牛がいる。
牛に対して大変失礼な物言いだとは思うが、何故だかゴテゴテと着飾った面妖な牛に似ている生物が優雅にティータイムを楽しんでいるのだ。
この国の宰相を父に持ち、姫様の御母上・前王妃様が儚くなられた後、無理くりに後妻に収まった王妃と姫様とは異母姉妹の立場になる、似ても似つかない容貌を持った妹姫である。
お茶と言っても茶葉では無いのだろうか、ハイビスカスのハーブティーの様な?鮮やかな紫色をしている液体なので、これ飲んで大丈夫なの?・・と心配されそうなものだ。香りも独特で慣れないと少しキツそうだ。
アニィなら秒で降参するだろう・・これは人類の飲むべき汁では無いと。
王妃は満足そうに、豪華な装飾が施されていながらも少々草臥れているのが否めないソファに優雅?いや・・怠惰に寝そべっている。片手でブドウの様な果物をぶら下げて下からモッシャモッシャと咀嚼しながらダベっている。
なぜ牛のように見えるのか・・思うに、横になっている姿と、彼女達の髪が白に黒のブチが入っている為だろう。何その髪色?ダルメシアン?それが・・この世界のファッションなの?
だからガタイの良さも手伝ってホルスタインに見えるのだ。
フックラとしている体に、赤ちゃんの様なプクプクの手(彼女たちが労働も、ピアノのレッスンもサボっていることを物語っている様な・・モミジの様な可愛いおててだ)ニワトリのもみじなら中華では美味しい唐揚げとかになる様だが、この2人のもみじでは何の役にも立ちそうもない。
『姫様の手にはペンダコが出来ていたけど、えらい違いだねぇ』
最も勉強嫌いで、授業中漫画ばっかり描いていたJKの手にも立派なペンダコが出来てはいたのだが。JKが小学生が使う様な自由帳に描いていた、某ゲームのキャラを借りパクした<同人誌的腐り気味漫画>は友達の中を常時回覧されていた。
『今、誰の手元に有るのだろうなぁ~非常に気になるねぇ』
JKは自分の画力の程度を知っているので、同人誌を作って聖地に出店するほどの度胸は無かった。
心優しい友達の間で<絵が上手いね~面白かった、続き早く描いてね!>とか言って貰えるだけで十分満足して幸せでいたのだ。
好きな事は仕事にせずに、趣味に止めておくのが一番だと聞いていたしな。
従姉妹のお姉さんが東京に出てアニメーターになって、番組の最後のテロップに名前なんかが出て凄い凄いと騒いで憧れてはいたが。
お姉さんは、何だかいつも仕事に追われて疲れている様だったし。
隈の出来た顔でキャラ表を眺めてウットリして妄想いるその姿は(多分しているに違いない)、涅槃まで到達し最終解脱している様でとてもその境地までは辿り着けそう無いと悟っていたからだ。
『ど・う・ぞ~友達がとち狂って、これあの子の遺作です・・とか言って、家族にあの自由帳を渡したりしませんようにぃ。頼むよぉ、解ってるよね・・あれ軽いR20だから。うちのお父さんまだ娘に夢を持っているから、愚かにも清純だと思い込んでいるんだから・・』
娘としても、父親の夢を破壊するのは心苦しい。
・・親孝行は、遠くの地に居る友にかかっているのだった。
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ホルスタイン?に見える第2の理由。
それは豊満を通り越した胸の隆起のせいだろう・・果たしてあの盛り上がりはモノホンの乳なのだろうか?かなり怪しいが、あちらこちらから寄せ集めて来た脂肪の塊なのではなかろうか?寄せて上げるのは何処の世も同じらしい、真摯に人は盛り乳を構築し偽装を働く。
どうも自分が貧乳なせいか、他人の隆起には手厳しいJK様だ。
婆も親子を呆れて見ていた。
『まったく嘆かわしい!無様な姿だ、シャンと座らんか背骨が曲がるぞ!腰痛の原因は肥満と姿勢の悪さだ。どこの世界の男共も、あの様な盛り乳に騙されるのだ実に嘆かわしい事である。あのような偽乳、脱いで仰向けに寝れば、左右に乳房が流れて真っ平に成りよるわ。ふんっ。乳房は真に赤子の為に有り、決してアホな男のモノでは無いのだ』
哺乳類の一員として清く正しく健やかに、赤子を育むオッパイを崇める事を婆は推奨している。乳房と言うのは、あのようにこれ見よがしに誇張し見せびらかすモノでは決っして無いのじゃ・・婆は3人の息子を育てて来た身だが・・貧乳で有った。別に貧乳だろうと微乳だろうと乳は出る・・まっこと哺乳類・人体の不思議で有る。
貧乳二人組の偏見では無いが・・王族と言うのは、どんな時でもピシッと背筋を伸ばして、泰然と座っているモノなのではないのだろうか?少なくとも多くの書籍化された有名ラノベではそうだった。
それにTVに出ているアナウンサーや芸能人が、だらけた姿勢で座っている所など見た事がないので違和感が半端ない。夏の終り頃の、なんでそんなに長い時間放送しければならないのか、イマイチ解りかねる番組でも、メインキャスターは疲れも見せずに晴れやかな顔で感動を演出していた。たとえお茶の間のTV画面の外では、水鳥の水面下の足の様に必死こいてジタバタとしていたとしてもだ、栄養剤を飲みつつも視聴者の前では弱った姿など見せない・・・プロフェッショナルの矜持を見た思いがしたものだ。
わざと転ぶ芸人や、熱い風呂に飛び込む某氏にも同じ感想を抱き尊敬している。
『大変だなぁ~視聴者で良かった~』などとなっ。
そのくらい(比較対象物が少々的外れだが、JKなので仕方がない。自分にとって世間=TVに映るモノである)、君臨するなら王族としてプロに徹して欲しいものだ。こんな辺鄙な山城で、どのくらい領地が有り、年貢が取れるか判らない様な素寒貧な王族であったとしてもだ。
だらしない姿でアホ話されていると、税金?年貢?・・とにかく払う気持ちも無くなるってなモノだろう。心なしか傍に侍っている女官?侍女?見分けがつかないが、そうして彼女らの表情筋は能面の様で読みにくいが・・王妃達の会話に腹立たしさを感じている様ではある。
だらしなく寝そべり、ポテチをパリパリと箸で食べているのはJKの特権だと思っていたが、この世界ではそうでも無いらしい。箸は使わず手づかみでお菓子を零しながら食べている、何だかポロポロと崩れやすいお菓子の様だな。お姫様が手づかみ・・イメージが壊れまくりだ。
そう言えば古代ローマ時代も貴族達は寝そべり、肩ひじ付いて食事を採ったらしいが。何だか食べた物が気管に入りそうで、誤嚥性肺炎でも起こしそうで体に悪そうだが。かえって疲れそうに思えるが、如何なものだろうか?
「お母様ぁ、これで私~帝国に嫁がずに済むのでしょう?良かったわぁ、私~嫌だものぉ、帝国の皇帝ってエロ好みの爺様なんでしょお」
「ええ、もちろんよ。可愛い貴方をそんな酷い所にやれないもの。貴方はこの王国を継いで女王となり、王配を得て精々働かせれば良いのですよ」
安心したように笑っている妹姫は母親に似たのか、かなり残念なミニ牛の様な雰囲気で、これでは旦那さんをGetするのも難しそうだとJKは思った。
王の身分に釣られて上昇志向が強い野心家の男がキャッチされるのか。
そうしてまんまと王配の地位を手に入れた男は、王城の中庭の陰で男爵令嬢と出会い、真実の愛とやらを見つけて浮気をした挙句腹違いの兄弟が産まれ・・その弟の方が頭の出来が良くて尚且つ垂涎もののハンサムだとかで、貴族の御令嬢にキャーキャー言われちゃったりして。このままでは御家騒動に発展しそうとかで、王妃派の貴族に命を狙われて・・心優しい平民の聖女に助けられ・・。
何だそれ・・鉄板過ぎて面白くも無いわ、小説に書いて某サイトに投稿したらテンプレは読み飽きたと酷評される事請け合いだ。
「私、皇帝の側妃では無くてぇ、皇太子様にだったら嫁いであげても良かったかな~ぁとも思うの。ちょっと残念な気がするぅ、帝国と言ったら豪奢な宮殿と贅沢な衣装、優雅な暮らしが待っているのでしょう」
「何を言っているの、そんな甘い所では無いのよ帝国の後宮は。
皇帝はまだ正式な皇太子様は決めていないの、帝国に嫁ぐ正妃様は何故だかすぐに体調を崩しお亡りになるから・・正当な後継者はお生まれになっていない。帝国の大貴族出身で、有力な実家を持つ側妃様が数人いるのだけれど。その側室様がお産みになった皇士様が1~3人・・え~とたしか、全員で9名いるはずよ、生きていればね。
誰を後継ぎに据えるかで常に争いが起きていて、後宮や帝室は大変な陰謀と謀略のカオスになっているそうよ。人質同然のサンピン家臣の側妃なんか、どんな目に合わされるか判ったものではないわ」
まだ納得がいかないのか、不満そうに口を尖らせる娘に王妃は解説を続ける。
「問題なのはね、その皇帝様自身がもういい歳の爺様であることなのよ。碌に動けない癖に、権力に執着し王座を手放そうとはしない。未だ発表されない後継者、これではもう内乱勃発コースまっしぐらでしょうよ」
新しく皇帝が即位すると、不要になった側妃やその息子の皇士は因縁を付けられて撃ち取られるのがこの世の常だ。運よく遠くの領地でも下賜されて、帝都からお払い箱になれれば、それはそれで命拾いだが・・それもいづれはイチャモンを付けられて捕り潰しになるのがオチなんだと。
『なんだかのぉ、天下を取った後の家康みたいな手口だなぁ』
『何処の世界のぉ~権力者もぉ~、やることはぁ~似たようなぁ~モノとぉ言う事かしらねぇ~』
無害と判断された帝国外からの人質側妃の中には、僅かな手当てを渡されて祖国に帰れるラッキーな者も居るらしいが。その祖国自体が新皇帝の率いる帝国に併合されるか、属国に成り下がるのかは解らない。人質のまま留まって、新皇帝と側妃達に無害をアピールし、阿って祖国の窮乏を防ぐのも人質側妃の重要なお仕事だ。そうして留まるにしても、前もって新皇帝の派閥に付いていないと待遇は悪いし命の危険も有る。どの皇士が王座に近いのか・・誰の派閥に擦り寄るか・・非常に政治的(数多いる皇士の中で、真の実力とカリスマ性を持つ者を看破し、人間関係と派閥の力学を察知できる、卓越した知性と勘が必要になる)なセンスが必要なのだ。
『そんな魑魅魍魎が蠢く、恐ろしい後宮でこの娘が生きて行ける訳が無い』
王妃は親馬鹿なれど、冷静な部分も十分持ち合わせているので娘を帝国に行かせようとはしなかった。母心と言うより、保身の為だ・・娘のドジで我が国が危うくなったら堪らんし。もともと王妃自身のポリシーが<苦労して栄光を目指すより、楽して程々の贅沢>だったからなのもある。
「でも~あの根暗女が皇帝の側妃になるんでしょ、果たして務まるのかしらぁ?」
「気分を損ねて、お手打ちにでもされるのなら事は軽く済むが・・我が国に迷惑を掛けぬよう精々しっかりやって貰わねばの」
ホルスタイン・・略してホル親子は、姫様の中身がウチらに代わっている事を、もうすっかり忘れている様だ・・短期記憶が弱いのか?まだ牛の方が記憶力が良いと思うぞ。牛は一度嫌いになった人間の事はシツコク覚えているからな、伯父さんの牧場の牛に嫌われているJKはそう思った。
その後、散々食い散らかして牛母子や侍女達が退席して行った。
掃除する人は別にいるらしい、ワーキングシェアなのか?
チュウと共に零れたお菓子の所に駆け寄りお宝をGetした、何だか粉っぽくて堅い破片だった。その場でチュウがコリコリと食べていると、扉の向こうから足音が聞こえて来たので素早く家具の隙間に逃げ込む。音が良く聞こえる・・薄い扉の様だ、蹴とばせば簡単に穴が開きそうな感じ・・家庭内暴力は良くないけど。気分は鼠のジ〇リーだね、相方の猫のト〇がいない事を祈る。
ものは試しでトライしてみたが、埴輪の身体ではお菓子は食べられなかった。口に押し付けても体の中に入って行かない、残念な気もするがどうせ不味そうだから、別にいいやと痩せ我慢をしてみる。
掃除道具を持って入って来たのは、さっきの侍女と違ってエラク貧相ななりをした下女?の人達だった。
反隆起同盟で気が合いそうな二人です(´-ω-`)




