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姫様見参  作者: さん☆のりこ
10/30

美味しい物には・・・

気を付けよう、その一口が・・・

 アニィは感動していた、この世界に召喚されて初めて良い事が有った(姫様のセミヌードの件はアニィの中ではノーカンだったようだ、案外純情なアニィはパニクッててほとんど見てはいなかったし・・少しは見たわけだ、御免なさいしなさい)と思っていた。


「なにこれ美味い!」


元の世界でも味わった事のない、初めての味覚である。

果たしてこれを味と言って良い物なのか、聖魔石はシャコウの身体の中に溶け込むように入り込み、アニィの魂に馴染んで行く・・それにすべての感覚器官が喜んでいる、そんな感じなのだ。

こんな世界に何故だか無理矢理召喚されて、二度と食事に楽しみは見いだせないのだと絶望していたのだが。諦観していた矢先に、このスイーツ?である・・そう、その聖魔石とやらは確かに甘く感じられた。

こんなゴツイなり?だがアニィは実は甘党だ、一口食べた後はもう夢中になって赤紫蘇の目も気にせずハムハムと食べる。

仕事終わりの疲れた身体が欲するミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒー牛乳の様な甘さでもあり、噛めば噛むほどほんのりと甘さを感じる新米の様でもある、誠に日本人のソウルに訴えてくる心地よい甘さ。

食べながらアニィは素直な感想を述べた。


「お前、あんがい良い奴だな」


美味しい物をくれる奴は、良い奴・・すなわち味方である。

覗き込んでニコニコしている赤紫蘇に向かって、グッとサムズアップしてやる。

喜んでいるシャコウを見て、意味を察したのか赤紫蘇もサムズアップして見せた、案外とノリがいい。


アニィは実に簡単に篭絡されたようだ。

余りにチョロ過ぎる・・チョロにぃだ。

アニィを転がすなんて簡単な事なのだろう・・美味い物を食わせれば良いのだから。


ナイスバディで顔面偏差値が高めのメシマズ女と、ガリで貧乳↓の顔面偏差値を持つメシウマ女に迫られたとしたら(そんな結構なイベントは起きようも無いのだが)、迷わずメシウマ女を選ぶのがアニィと言う男である。そうして心の底からメシウマ彼女に惚れ込んで、彼の純な愛を一生捧げるのだろうが・・残念な事ながら、彼の職場は筋肉のオッサンばかりだった。

たまに現場に来る女の人はヘルメットも勇ましい、インテリなバリキャリタイプの女史で、何かと口五月蠅く説教ばかりされていたからアニィは苦手だったりする、故に彼の純情は発揮されようが無い。

不毛な青春と言っても良いのだろうか?・・その通りだろう。






 実はこの時、遠い異世界(元の場所)では彼の葬式がまさに執り行なわれていたりして、件のインテリバリキャリ女史さんが人目もはばからず号泣して周囲を驚かせていたりするのだが・・。


「あの人、そういえば弁当の差し入れとか、アイツだけにしていたよなぁ~。もっと野菜を食べなさいとかお母さんみたいだったが・・いやぁ~そうだったのか~、人の好みは判んないもんだなぁ」


などと納得されていた・・いや、別に付き合っていた訳では無いぞ?

告られた訳でも無いし、アニィは純情でいながら鈍感男だから、事業報告の様にはっきりと言わないと伝わらない。

肝心の弁当の味の方は、今現在アニィが女史を思い出しもしないのが答えの様だ。失礼な男なのだ・・純情風・鈍感野郎と言う輩は。


喪主の父ちゃんの隣で、涙をバスタオルで抑えているアニィの母ちゃんは


『あんなしっかりした感じの女の人が、家の脳筋息子の為に泣いてくれるなんて(涙)有難い事だねぇ。あの子も生きてさえいれば、モテない悩みも解消できたかもしれないのに。

ナンマイダブ・ナンマイダブゥ。

わたしゃ・・あの女の人を騙くらかして脳筋息子を押し付けて、結婚でも同棲でも何でも良いから、返品不可ですからって言って、問答無用で盛大に祝って家から叩き出したかったわよ』


実に惜しい事をした・・などと思っていた。


アニイは通勤途中の事故だったので労災も下りるし、仕事柄生命保険にも入っていたので<受取人は母ちゃんだ>後顧の憂いなど無かったのだが。

そんな事とは関係なく、両親・親戚一同・生意気な従姉妹にも惜しまれていた。

きっとヤモリもアニィの事故を知れば、悲しんでくれる事だろう。


《閑話休題・・・サクラはアニィが家に帰らなくなってから、ヤモリを取ることを止めてしまった。もう、老猫なので日長が一日アニィの毛布の中に潜り込んで寝ている・・毛布だけに毛だらけだ》


格闘技の仲間にも、惜しい人材を失くしてしまった

『俺が勝てる相手がいなくなってしまったでは無いか』と悔やまれていた。


ちなみに事故現場近くの監視カメラは、しっかり彼が少女チーを庇ったシーンを捉えていたので、お昼のワイドショーにも夕方のニュースにもワールドワイドに海外でも胸熱ニュースとして放送されていた。なんと区民のふれあい葬祭場で行われているアニィの葬儀はワイドショーでLIVE中継され、いつもは毒舌なキャスターも優しい言葉で彼を讃え悼んでいた。

ニュースとかで大事に成った為なのか、小・中・高の学生時代の友達とか先生方(振られた似非天然の彼女と二股片割れ男が来たかどうかは不明だが)、以前係わった現場の仕事関係の人、田舎の飯場の賄いの小母ちゃんまでもが駆け付けて来てくれて思いのほか盛大な葬儀となったのだった。

その為、予定していた香典返しの袋セットではとても足り無い状態となり、葬儀会社は会社の威信を掛けて他の支社から必死に袋を集めまくったりした。

アニィは自覚無く周囲を巻き込み、事を大きくする男で有るが、死して尚手のかかる男であったようだ。




・・ついでと言うのか、故人をしのんで。


アニィがかつて選手として出場したアマチュア総合格闘技の試合で、1ランド2分30秒で三角締めに耐え切れず、タップ負けした姿(誰かが撮っていた動画をTVに売り付けたらしい、馬鹿野郎めが!呪ってやる!)も繰り返しワイドショーで放送されていた。なんか痛がってパタパタとタップする姿が、手足をじたばたさせているハムスターの様で可愛らしかったとか・・・・・何なんだよ、その公開処刑。ワイドショーのアフアフと喋る小母さんの小説家コメンテーターに「この人こんなに痛がりで、なんで格闘技なんかやっているの?」なんて言われてる事など、遮光器土偶になっているアニィは知る由も無かったのだが・・知らない方が幸せな事も有るのだろう。






 その後、与えられるままに聖魔石なる不可思議な物をウマウマと食い、聞かれるままに情報を垂れ流したのは御愛嬌なのだろうか?

キャリさんが聞いたら怒髪天で怒りそうだが、上手い食い物をくれる奴に悪い者はいないと思い込んでいるアニィには緊張感の欠片も無くなっていた。


「姫様が、そんな事になっていたなんて・・」


赤紫蘇野郎も不思議な事に、アニィの言う事を疑いもせず信じている様だ。

最もシャコウ(と中身のアニィ)を見たら、敵の罠などとは考えられないのだろうが・・それほどシャコウの姿かたちは特異で、異世界から来たと言う話に信憑性を与えていた。

食べ終わって気が済んだアニィは、そういえば肝心の事を聞いていなかった・・と遅まきながら気が付いた。


「あんた、姫様あのこのなんなんだ?敵か味方なのか?

難しい事は判らないし、覚えられないから3行で言ってくれ」


赤紫蘇はシャコウの言い草に驚いた様だが、その頭の小ささを見て仕方が無いのかと思った様だ。

失礼な奴だな・・報告は短く端的に、これ職場の常識だ。


「姫様の味方だ、

姫様の母上様が生まれた国から来た者だ、

姫様が困らない様に陰からサポートしていた」


そう言う赤紫蘇に、痛い一言をぶつけてみる。


「それで?何も告げられずに事件が起きたと?困っていたから姫様はダイブしたんじゃ無いの。あんたサポーターなのに心当たりも無い訳?」


赤紫蘇の顔が歪んだ、とても苦しそうな悲しそうな顔だ・・姫のダイブに心を痛めて、心底後悔している様な顔だとアニィは感じた。

もしかしたらアノ姫様に惚れていたのか?それほどの驚き様と嘆き方だった。


姫様がダイブするに至った、心当たりは本当に無いみたいだな。

・・・俺様には話せないのか?もっと突っ込んで聞きたい所だが、打ちひしがれて陸に上がったナマコの様になってしまった赤紫蘇に、それ以上言葉を掛けられないアニィだった。





 古今東西・・世界各地に様々な神話があるが。

異界(冥府)の地を訪れ、その異界の食べ物を口にすると元の世界に戻れなくなる・・と言う、共通した逸話がある事を体育会系のアニィは知らなかった。

前夜の夕食時にJKが、それに近い話をしていた事も、一晩寝たらスッパリと忘れているアニィである。果たして彼の運命は・・




「なぁ、さっきの美味いやつ、もう少しくれない?」



・・・デブの素(´-ω-`)

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