誓い
先日、購入したいラノベのタイトルがちょっとアレで自力で頑張って探していたけど見つからず、店員に小さい声で聞いたら「○○の○巻は明日からの発売になります」
通常ボリュームで返答されました^_^
発売日はちゃんとチェックしようね。
3話目になります。4話目早々に投稿したいけどネタが…思いつき次第早急に取り掛かろうと思います。
それから、自分と木田はスクールバスに乗り、駅付近のスターボックスという店に入った。スクールバス内では、ほぼ席が取られており、所々にしか空席が無かったのとそれでも立ってるよりは座りたかったので、木田とはけっこう離れた位置になった。おかげで全く話せなかった。でも、話すのはお茶しながらでいい、むしろそうしたいと思った。
スターボックスに入って自分はカプチーノを注文した。木田はコーヒーではないが、スターボックスラテという店のオリジナルを感じさせるものを注文していた。あの日とは違い、テーブルを挟んで2人で向かい合って座った。だが、ラテを一口飲んだところで木田はあの日のように笑いながら言ってきた。
「ブラックには慣れなかったみたいだな」
「あれは俺には似合わないわ」
「苦くて飲めないの間違いだろ」
「そうとも言うな」
生姜なく認めることにした。だが、せめてもの反撃として、木田が手にしているカップを見つめながら言った。
「そう言う木田もブラック飲めなくなったんじゃないの」
木田は自分の言ったことに少し考えてから
「ん?ああ、これ。俺はその店のオリジナルにこだわるからさ。ブラックは好きでも嫌いでもないわ」
「だと思った」
頬杖をつきながら「あっそ」という感じで言った。
「久瀬はブラックが飲めない仲間みたいなのが欲しかったのかな?」
木田が揶揄うように聞いてきたので
「いらねーよ」
と少しむっとしながら答えた。それから気分を落ち着かせるため、カプチーノを少し飲んでから言った。
「同じ大学に通ってたんだ…そう言えば大学の話全然しなかったな」
「確かに」
木田のこの言葉を区切りに少しの間沈黙が続いた。
「俺さ、あんな学力だったし専門大学か就職の2択だと思ってた。」
木田の口調から、何となく長くなりそうなことを悟ったので聴覚だけを意識するようにした。
「でも、親に勧められて塾に入った。まあ、クラスにもけっこう行ってる奴いたし、どうせ暇なら少しでも学力つけるのもいいかなってことで始めた。
そしたら、それなりに学力ついて、一般レベルの大学なら問題ないって塾の講師に言われて、受けた模試も悪くない結果だった。もしかして、俺って案外バカじゃ無かったのかもな」
木田は苦笑しながら言っていた。
「んで、偏差値そこそこの、この大学を受けて、受かった。センターだけどな」
そこで木田の話は終わったようなので、自分は
「なるほど。塾行ってたなんて思ってなかった」
と少し驚きながら言った。だか、木田はそれからすぐに俯いて
「でも…そこにお前がいた」
「だからなん…」
「ごめん」
自分の言葉を遮られ突然謝られたので面食らっていると木田が再び話しだした。
「久瀬はもっと上の大学行くのかと思ってたから何も考えてなかった。大学の話、すればよかったな」
自分の行く大学についてなぜ木田が考える必要があるのかよく分からないが
「ああ、俺推薦で入れるところで考えてたからそんなに上最初から目指す気無かった。まあ、暇つぶしにこっちはバイトしてたけど」
と、この大学に入学した理由を教えた。そして、生まれた疑問を解消すべく聞いてみる。
「えと、俺と同じ大学はなんか困るん?」
木田はすぐには答えずにしばらく俯きながら黙っていた。自分がカプチーノをすすり、カップをテーブルに置いたと同時に顔は上げずに小さい声で言った。
「だって、あんなこと言っちまったじゃんよ」
それから顔を上げて、俺を見て言う言葉は俯いてたときより一層大きな声で
「もう会わねーから言ったのに、これじゃあ高3の俺が馬鹿みてーじゃねーか!お前も本当は今日高校での関係を気にして誘っただけだろ!会いたくねーなら素直にそう言ってくれよ!俺の前でも高校と変わらないお前のその表情を見るのが辛いんだよ!無理に表情作るのやめてくれよ!」
胸の内にある不安が一気に溢れ出た感じだった。
そのまま木田はいつの間にか空になっていたカップを持って立とうとした。
「会えて凄え嬉しかった」
そんな木田に自分が今言う言葉は、照れ臭いがこれしかないと思った。木田は動きを止め、驚いた顔で自分を見ている。その顔が面白くてつい笑ってしまったが、自分は話を続けた。
「話してスッキリしたな。んじゃ今度は俺の番」
「え…」
木田の疑問をよそに話し始める。木田が自分の気持ちを打ち明けたなら今度は自分番である。
「お前のことは全くもって引いていない。これガチな。あと、さっきも言ったけど、大学で再び会えて嬉しい。あ、あと最後に、卒業式の日のあの言葉、は…えと、正直嬉しい」
それを言った瞬間、木田は
「え!?え、久瀬?嬉しいの?なんで?」
と言って、慌てふためいている。この木田も見てて面白いと思いながら自分は自信満々に答えた。
「だってメッチャ大切に思ってくれてるってことだろ?自分のことを大事に思われて嫌な気分になる奴はいないと思うんだが」
「あ、いや、俺はそう言うつもりで言ったんじゃなくて…て、もうこの話やめようぜ」
自分が意図して木田の思いを都合のいいものに変えようとしているのは分かっていた。そして木田は自分のこの弱さを察してくれたのか会話を切った。木田とこの店に入って話す目的を自分で作って自分で壊していた。
でも、しばらく黙っていたらこの意気地なしの自分に腹が立って、
「恋愛感情なんだろ」
気づいたら声に出ていた。
空のカップを見つめていた木田はビクっとしてこちらを見たが、驚いた顔はすぐに元に戻り、今度は何もかも諦めたような顔で
「うん…」
と静かに頷いた。
「知ってたんだ」
木田は静かに呟く。
「うん…」
そんな木田につられたのか、自分も静かに頷いた。
「久瀬は…久瀬はこの感情、俺に抱いてはいないよな?」
どれほどの勇気とどれくらいの可能性をかけて聞いたのだろう。その僅かながらも自分からの否定を望んだ質問に、自分は首を縦に振った。そして、
「ごめん」
と言うと同時に自分にこの感情が目覚めないことに悲しみと憎しみさえ覚えた。
そんな自分に木田は笑って
「久瀬が謝る必要全くねーよ。言い訳みたいだけど、別に俺、男にしか恋愛感情を抱けないとかじゃないんだ。ただ1人の人間としてお前を好きになった。でもそのお前は男だった。まあでも同性のお前を好きになった俺が全て悪い」
と言ってくれた。木田はそんなことを言うが、好意を抱いた人間がたまたま同性だった場合、それに好意を抱き続けるのがいいのか悪いのか、それは好きになった本人が決めればいいと思う。しかし、確実に分かるのは、同性を好きになった人は相手も同じ感情を自分に抱いていない限り、辛い思いをしているということだった。結ぶことを知らない糸が、その2人には握られている。
「高3になってからだった。最初は何度も否定した」
木田は自分がこの感情を抱きはじめた時を思い出して話した。
「でも変わらなかった。むしろ段々と確かなものに変わっていった。メチャクチャ怖かった。自分はなんでこんな感情を抱いているのか、もし、久瀬にバレたらって思う気持ちで頭が支配された。そんな1年間だった」
自分の想像していた辛さよりもはるかに大きいということが、木田の言葉から分かった。
「引いたよな」
そんな声が自分には、木田が「俺の前から姿を消してくれ」と言っているように聞こえた。そんなに辛い思いをしている木田に自分は嫌味を一切感じさせない顔で言った。
「いや、全然」
「なんでそんなに普通にしてられるんだよ」
木田の言ってきた言葉に、自分が返す言葉はもう決まっていた。その言葉を木田の目をしっかりと見ながら言う。
「3年間の鎖はそんなに脆くねーよ」
2人で店を出た時、空はもう夜を迎えようとしていた。時間を確認してあの日の約4倍話していたことが分かった。木田とは乗る電車が違うのでホームで別れることになった。別れ際、木田は自分と少し離れてから言ってきた。
「3年間の鎖、そんなに強いならずっと友達でいられるよな。大学卒業しても友達でいような。じゃーな」
去っていく木田に自分は何も言えず、ただ、その場で立ち尽くすことしか出来なかった。友達…木田の発したこの言葉には、まるで、木田自身の感情の自制と自分にその形であり続けることの誓いをしたように感じられ、しばらく涙が止まらなかった。木田は今日、自分との間に決して超えることの許されない線を、ラインを引いた。
感想くれた方、涙が出そうになるほど嬉しかったです!ありがとうございます!これから少しずつでも読者が増えていったら幸いです。