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公平に異世界転生する  作者: 黒猫
幼年期
2/10

神との対話

目を開けたら、誰かが覗き込んでいるのが見えた。


「うわっ!?」

「おっ、起きたね〜」


それは俺が意識を飛ばす前、聞いた声と全く同じだった。まるで老若男女のすべてのようで、しかしどれでもない……。

……?

奇妙だった。俺は声の主を見たつもりだった。だが、そこにあるのはノイズーーそう、まるで壊れたブラウン管のような……。

いや、今はそれよりも、この気持ちの悪い空間についてが先だ。


「すみませんが、ここはどこでしょう?」


俺は目の前のノイズに問いかけた。状況から察するにこのノイズが限りなく俺をここに誘拐した犯人に近いように思えたが、反抗的な態度は取らないに越したことはない。


「えっと……神界?」

「……は?」

「いやいや、そんな絶望的かつ蔑んだ顔やめようね。わたしサイコパス誘拐犯違う、いいね?」


ノイズは慌てたように揺らいだ。


「うーん、どう説明したもんだろうねー……。まず、君、死んだ。オーケー?」

「……は?」


……は?

やばいやつだな。どうにかして、ここから脱出せねば……。しかし本当に気味の悪い空間だ。このノイズだけではなく、俺の存在まで揺らいでいるように感じる。

「実際、そうだからね〜。今の君は魂だけの存在だから、すごく不安定な状態なんだよ」


「……は?」


さっきから、……は?としか言っていない気がするが、いったい俺は今、何をしているっていうんだ?

いや、何と、話しているんだ?


「えっ、まだ信じてくれないの?ここに来る、というか黒猫助けてトラックに跳ねられてここに来る人は大体すんなり信じてくれるのに……わたしが神だって」

「……は?」


神だと?

なんの冗談だ……。確かに、この不思議な声、奇妙な姿、気持ちの悪い空間は、この世のものとは思えないが……だからと言っていきなり相手は神だと考えない程度に俺はリアリストのつもりだ。


「え〜、じゃあ、どうしたら信じてくれるのさ〜」

「信じるも何も……そもそも、私はなぜ死んだのですか?黒猫は助けましたが、私は死んでいないと思いますが……」

「……えへっ、殺しちゃった」

「……は?」

「えーっと、まず、神界の話をしようか……」

「……いや、その前に、私を殺したとは、どういうことですか。それに、まだ貴方が神だと証明されたわけではありません。頭のおかしい誘拐犯だという可能性は、少なくとも神だという可能性よりは高いと思いますが……」


俺を殺しただと……?まさかとは思うが……そんな神がいていいわけがない。


「え〜、じゃあね〜……俺を殺しただと……?まさかとは思うが……そんな神がいていいわけがない……とかでどう?」

「なっ!?」


こいつ、俺がさっき考えていたことを寸分の違いもなく……!


「こいつ、俺がさっき考えていたことを寸分の違いもなく……!」


ノイズは、ニヤニヤとした気配に変わりながら、またしても俺の考えていることを真似した。まるで、俺がもう一人いるようだ。


「お前、何者だ……!?」

「だーから言ったじゃん、神だよ」


ありえない……!この世に神なんてものが存在していたっていうのか。馬鹿な、人は卵子と精子が結合してできるものだぞ。この世の全ては科学で証明されたはずだ。

俺は混乱していた。今までの自分の価値観が全否定された気分だった。

……だが、こいつが神だというのなら心を読まれたことも、この奇妙な空間も説明がつく。


「……わかりました。一旦納得しましょう」

「おおー、やっとー?おっかしいなぁ、日本には異世界転生とかそういうのはやってるって聞いたから、わざわざ弱小民族ジャパンを選んできたのに。実際今まで転生させてきた奴らはみんなすぐに納得してくれたよー?」

「知りませんけど……異世界転生という単語は友人から聞いたことありますが……」

「へー。まあ、納得してくれたんならいいよ。じゃあ、説明するよ〜。まず、君にはこれから異世界に転生してもらうよ」


なるほど、ここまでの流れは友人に聞いた通りだが……いや、待てよ?


「えー、また何ー?……ああ、なるほど、だよねー。誤魔化されちゃくれないかー」

「はい、まだ、私を殺したとはどういうことか……説明していただいていません」


おそらく言葉の通りなのだろうが……。


「まあ、言葉の通りだね〜。あの黒猫はねー、そもそも見える人が限られてるんだよ。条件は後で説明するけ

ど……その条件に当てはまり、かつ黒猫一匹のために死んでくれる人だけが転生できる権利を得るってわけ……え、何?」

「話の途中で失礼しますが……権利を得るというと異世界への転生がいかにもいいもののように感じられるのですが……」


異世界への転生?

いきなり勝手のわからない世界によこされて、喜ぶ奴がいたら見てみたい。


「いや、大抵喜ぶよ。だって異世界って言ったらあれだよ?自分に尽くしてくれちゃうかわいい奴隷とか、美人なエルフとか、モッフモフの獣人とか……」

「奴隷がいるのですか……」


人権が保障されている日本では考えらない話だ。いままで来た奴らはそれを聞いて喜んだのか?

信じられん。


「もしっていうか、行くのは決定事項だし……。で、もういい?説明続けるよ?」

「……はい」


決定事項か。口ぶりから察するに、異世界に転生させるために生きていた俺を殺したようだし、もう、どうしようもないんだな……。

先ほどあれだけ取り乱したというのに、もう立ち直っている自分に苦笑した。おそらく神に対面しているという事実が、感覚を麻痺させているのだろう。


「もうわかってると思うけど……黒猫トラップで死ななかった君はわたしが直接殺した。ごめんね」


全くそう思っていないような声色だ。神にとっては人間の一人や二人、芥のようなものなのだろう。


「条件に当てはまる人ってそもそも少ないからさー、しかも猫ごときをトラックから助けようって人どんくらいいると思う?全然いないよ!君は五年ぶりの来訪者だよー。いや、そう聞くとなんだ、割と最近じゃんって思うじゃん?君は知らないんだよ……神がどれほど暇なのか……!神は気が遠くなるほど生きてるけど、だからって意識飛ばしてたら人間界はしっちゃめっかになっちゃうからー!頑張って暇つぶしをしているんだよ……え、違う違う!別に暇つぶしで君を殺したわけじゃなくてー」

「……ここまでの話を総括するとそうにしか聞こえませんが」


暇つぶしで人を殺すーー神のすることとはとても思えないが、案外神というのはそういうものなんだろうな……。


「違うんだよー。君にしてもらいたいのはね、ほら、異世界って言われてピンとこない?」

「……?」


全くピンとこない。あまりそういう書き物は読んだことがないのだ。


「おっくれてるぅ……あ、うーん、つまりねーーーー魔王だよ」

「魔王?」


なぜ、異世界といえば魔王なのだろう……。

だが、魔王ならば聞いたことがある。赤と緑の配管工兄弟が果敢に立ち向かったでかい亀のようなものだろう。


「……うんっ、そんなもんだよっ。それがわたしの管理している世界に現れてね。今までにも何度か現れてきたんだけど、今回の魔王は歴代最強だ。もしかしたら、このまま世界を滅ぼすんじゃないかと怖くて怖くてねー。でも、神は下界に降りちゃダメってことになってるから、もうひとつの管理している世界から何人か引き抜いて、そっちに送り込んでいるんだー。もともとちょっと人増えすぎじゃねって思ってたし」

「……世界を滅ぼす、か」


世界を滅ぼすかもしれない魔王。

俺はそれに対抗するために選ばれたーーというと大げさかもしれないが。

異世界に行くのは決定事項らしい。もし俺にできることがあるのならば、その世界で脅かされている人々のために何かしたい、するべきだろう。

世界が違うとはいえ、同じく生きているのだ。

できることがあればするべきだ。父さんの口癖だった……。


「わかりました、最善を尽くしましょう」

「ありがとう〜!君ならやってくれそうだよー。久しぶりに来たのがこんないい子でよかったー」


ノイズは心持ち嬉しそうに揺らいだ。


「じゃあ、次いこっかー」

「次?」


てっきりすぐに転生させられるのかと思って、身構えていたが……まだ、何かあるのか?


「ばっかだなー、一番楽しいやつだよ?ここに来た子はみーんな超楽しそうに選んでるよ。そう、ズバリーーーースキル選び!!」

「……は?」


また、わけのわからないものが……。





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