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戦争人間  作者: ジュリー
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第六章 メディア戦略

続きです。

新しい章に入りました。

キーワードの一つにある『メディア戦略』が世界大戦の鍵となります。

勝手な一言

  「退屈を楽しめないようでは、まだまだ尻の青いガキだ」

                  詠み人  休日のお父さん

 第六章 メディア戦略



 魔界の魔王城へ戻り、すぐさまハンニバルに帰還を報告。

 ハンニバルはヴァージルとリノアに勉学の一環として、人間界視察に対するレポートの作成を申しつけたが、こいつらにレポートの作成がまともにできるかは疑問だ。せいぜい夏休みの絵日記程度だろう。

 そしてハンニバルは俺の報告も聞き、連れてきたエルフ少女の顔を覗き込む。

「わた。し、を、かって。くだ、さい」

 それしか言わないエルフ少女に対し、ハンニバルは大きなため息をつく。

「お母様が見れば……なんて言い飽きてきたよ」

 奥方様がこの少女を見てなにを思うかなんて、ハンニバルじゃなくとも予想できる。

 人間界の暗い闇の一つがこの少女だと、ロクデナシの俺でも分かった。

「それで、このエルフ少女をユーヤはどうするつもりだい?」

「それなんだけどさ……エルムに手伝ってほしい事がある」

 エルムとは現代魔王十五姉妹の十三女。

 本当なら奥方様に甘えたい年頃なのだが、母さんや姉たちが奥方様に代わって、エルムにさびしい思いをさせないように気を使っていた。

 俺も気晴らしに遊んだこともある。

「エルムにかい……?」

 エルフ少女と魔王エルムがどう繋がるのか、ハンニバルも分からないらしい。

「そう、映画制作のお手伝いをお願いしたい」

 映画なんて、人間界はおろか魔界でも知っているものはおるまい。

 暗幕に映す演劇と言えば分かりやすいが、暗幕に映す時点で魔法級の不可思議だ。

「ユーヤは厄神の子供として、厄災の海から魔界や人間界にもない戦争の知識や経験を取り込める。それがユーヤの強みだけど……映画とはね……ユーヤは難しいことをする」

 ハンニバルは難しいと表現できる時点で、ある程度察しているようだ。

「どんな世界でも戦争は人間がかかわるごとに複雑化していく。軍資金も兵隊も兵器もあるに越したことはないけれど、結局のところそれらは地盤となるものだ。人間界の戦争は権力や利権がからんでいるわりに、地盤のぶつけあい以外の戦争を知らない。より多くの軍資金、より屈強な兵隊、より強力な兵器ってね。間違ってはいないが、それだけが戦争だと思っているのであれば、エルフの少女一人に足元を掬われる」

 戦争なんて苦しみと痛みしかないが、だからと言って単純なものじゃない。

 単純な戦争ばかりしていると、戦争を引き起こすことさえ単純になってしまう。

 逆に戦争が複雑怪奇だと、開戦自体が難解となり戦争の抑止力になりえる。

「俺は世界大戦をドロドロの泥沼に沈める……それぐらいやらないと、人間は懲りない」

 すでに大絶望混乱中の人間界だが、地盤の強い国が地盤の弱い国を飲み込み、そうやってのし上がった地盤の強い国同士がぶつかるのだろう。

 勝ち残った国が世界を一つにまとめても、世界中で派閥が作られ、派閥争いからの独立宣言による独立戦争がオチだ。独立戦争が火種となり、前の大戦で飲み込まれていた連中も世界中で反乱を起こす。

 これがすでに予想できる第二次世界大戦の構図だ。

 そうならないために今の世界大戦をドロドロの泥沼に沈め、這いあがれないのであれば滅んでもらい、這いあがれたとしても次の世界大戦は御免だと人間だって懲りる。

「人間が共食いに懲りるのであれば、それはそれで魔界にとっても有益かな」

 ハンニバルの意見もある意味正しい。

 戦争が難しくなれば、人間界と魔界の戦争も結果として難しくなる。

 人間が滅ぶのであれば木端微塵であり、人間が救われるのであれば懲りて欲しい。

 魔界にとっても悪い話じゃない。

「そうだね……エルムが協力を了承するのであれば、私から止める気はないよ」

 ハンニバルからの許可は下りた。

 ハンニバルの統括能力により、エルムも大同小異の範囲なら協力してくれる。

「ちなみに、エルムはミヤビとヴィンセントに保護されているよ」

「保護って……エルムのやつ、またふらついていたのか?」

 エルムは結構な頻度で、本人の意思とは無関係に魔王城を徘徊する。

 徘徊中にヴィンセントかミヤビが見つけ、そのまま保護したってところだろう。

「まあね。能力の性質上仕方のないことだけど、そろそろエルムには付き人が必要だな」

 ハンニバルも姉としてエルムの能力には手を焼いているらしい。

「さすがに付き人は無理だが……俺にできることがあったら言ってくれ」

 技術や能力を利用する……とはまったく関係なく、個人的に現代魔王とは協力的。

 困っているのであれば、もちろん俺は手を貸そう。

「エルムはユーヤにも懐いている。遊び相手や話し相手になってくれると助かるよ」

「りょーかい。エルムにはお願い事もあるからな……遊び半分で手伝ってもらうよ」

 長女からの許可も取れたことだし、さっそくエルムに会いに行くとしよう。

奴隷少女を魔王城へと連れてきたユーヤは、世界大戦を一変しかねない作品を作ります。

作り方は後ほどとなりますが……新しい魔王の名前がエルムとくれば、大体どんな能力を持っているのかが想像できるかもしれませんね。

ついでに一言

      「鉄則は、友情、努力、勝利だ!」

                  詠み人  某国編集長

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