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戦争人間  作者: ジュリー
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奴隷少女3

続きです。

襲ってきた人攫いを逆に捕まえ売りさばく。

健全ではありませんが、この世界の奴隷業界では稀にあります。

勝手な一言

    「ちゃぶ台クラッシュをやってみたい」

                詠み人  亭主関白に憧れる恐妻家

 第五章 奴隷少女3



 観光に来るような場所でもないこんな町だが、それでも宿舎ぐらいはある。

 二階建ての古いコンテナハウスで、一階は食堂、二階は宿として利用されていた。

 大きな奴隷商は自前の大きなコテージを使い、個人で商売をしているものは手軽なテントを使っているため、一階の食堂はともかく、二階の宿を利用する客は少ない。

 食事と寝床の確保は案外すんなりと達成できた。

「別に野宿でも良かったのに」

 一階の食堂での夕食中、ヴァージルが乾し肉を噛みながら残念そうにつぶやく。

 もはやキャンプ感覚だな。

「私はてっきり、夜営しているところを襲わせてカモにするのかと思ったよ」

 リノアはキャンプ感覚どころか、もはや逆盗賊の発想だ。

 俺が人攫いを誘き出してカモにしたのが気に入ったらしい。

「ボクもそれサンセー、獲物が向こうからやってくるんだもの」

「人間って面白いよね」

 きゃっきゃっうふふと物騒な話をしている現代魔王たち。

 魔王として頼もしいと思うべきか、少女らしくないと嘆くべきか……原因は俺か。

 か弱い存在に偽装して獲物を引きつけて襲うやり方は、わりと一般的な手法。

 ヴァージルとリノアには、その手法がぴたりと合い過ぎてしまった。

「ハンニバルからも制止されているのだから、あまり派手に動かないでくれよ」

 俺の言うことをまともに聞くような連中じゃないが、ハンニバルの言葉は忘れまい。

 人間に正体をばらさないこと……小異にかなり不安があるが、大同は守るはずだ。

「私たちだって、ハンニバル姉様の決定にはちゃんと従うわよ」

 リノアが厳守事項を確認すると、ヴァージルも『そうだね』とうなずく。

「ただ、襲われちゃったら仕方ないよね」

 リノアが厳守事項を確認しつつもそう言うと、ヴァージルも『そうだね』とうなずく。

 こいつら本当に大丈夫か?

 火の粉を振り払うは良いが、火の粉を振り払うのに台風発生では洒落にならん。

「明日は自由時間と金をやるが、俺の買い物が終わるまで町を壊さないでくれ」

 贅沢は言わない。

 最低限俺の用件が済むまで、町だけは存続させておいてくれ。

 火の粉を振り払うのも良いし、人攫いグループならいくら潰してくれても構わないが、町ごと吹っ飛ばされてしまうと、俺の探し物まで木端微塵になってしまう。

 ホント、贅沢は言わない……お願いだから、そこだけは小異に入れくれ。

「壊さないのは分かったけれど、ユーヤは奴隷を買いに行くんでしょう?」

 ヴァージルに比べれば、まだ俺の話を聞いていたリノアが訊ねてきた。

 奴隷商と接触するために人攫いをカモにし、金と情報を手に入れた。

 金と一緒に奴隷の情報を手に入れたのであれば、やることは一つだ。

「お買い物ならボクも行きたい」

 明日とはいえ、自由時間と金を与えられるヴァージルは買い物に興味を示す。

 普通の買い物なら俺は止めないが、さすがにダメだ。

「奴隷の売買なんて人間らしいことをおまえたちはしちゃいけない」

 ハンニバルの大同とはちょっと違うが、厳守して欲しい俺の願いがそれだ。

「奴隷の売買って人間らしいの?」

 ヴァージルが首をかしげてしまったが……そうだな……。

「魔族や魔物が同胞を売っているところって、みたことあるか?」

「ボクはない」

「私もない」

 俺の質問に即答したヴァージルとリノアだが、ようするにそう言うこと。

 魔族や魔物は、魔族や魔物の売買なんてしない。

 同族を商品として売買しているのは人間だけだ。

「売買されているのは人間だから、おまえたちが人間を売買するのはむしろ正常かもしれない……だからと言って奴隷取引となるとさすがに止める。魔族が人間を売買しているのであれば構わないが、人間が人間で売買しているのであれば、それは俺の仕事だ」

 俺も人間だからこの表現もどうかと思うが……魔族が人間を売買するのは納得できる。

 他種族が他種族を食べたり飼育したりするのは、むしろ知的生物の健全な経営だ。

 しかし同種族が同種族を食べたり飼育したりするのは、健全とは言い難い。

 人間が人間を売買しているこの異常事態に、魔王は関わっちゃいけない。

 人間の異常事態に関わっていいのは、やっぱり人間である俺だけだ。

「とにかく、金銭内ならなにを買っても構わないが、奴隷は買わないでくれ」

 理由の説明はしてやったつもりだが、どこまで理解しているかは分からない。

 でもそこだけはきつく止めておかないと、それこそ奥方様に申し訳が立たない。

「うん、了解」

「分かった」

 ヴァージルもリノアも俺がマジで嫌がっていると判断したらしく、素直にうなずいた。

 他人の話を聞かないだけで、基本的に悪い娘たちじゃない。

 昔から構って欲しくて困らせることはあっても、意味もなく嫌がることはしない。

 これでこいつらも、ハンニバルの大同と俺の最低限のルールは守ってくれる。

現代魔王が全員女性ということもあり、ユーヤも自分がハーレム状態にあると自覚しています。

男として羨ましい状況だと自覚しつつも、ハンニバルの影響を受けた姉妹からは小言を言われ、ヤシャの影響を受けた姉妹の奇行には頭痛がします。

ついでに一言

      「我ら童貞こそが最大派閥!」

                詠み人  反リア充を掲げる革命家

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