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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シリアルキラーの美少女が戦国にトリップしたら

 




「アッハハハハハハ!!」



 この世は諸行無常らしい。



「フッハッハッハッハ!!!」



 人の命とは尊いものらしい。



「アッハッハッハッハ!!」



 動物ピラミッドの一番上に君臨する人間だけど、他の動物と同じだよね? 

 みんな、何で人を殺しちゃいけないの?って誰かに聞いてみて。そしたらその誰かはこう答える。



「馬鹿じゃないの? 人間は尊いものなのよ」



 そしたらみんなはこう言おう。



「じゃあ他の動物は尊くないの? 何で人間だけ尊いの?」



 誰かはきっと言葉を失う。だって答えられないから。人を殺すのが悪い事? そんなもの、私にとってはどうでも良いんだ。どっちにしろ、人間は色んな生物を殺めて来たんだから。

 この地球だって、人間という神様の創り出した不良品バグがなければ、きっと自然に生きただろうに。



「祝☆100人目殺害記念に...今回はちゃんとしとかないとね〜」



 東京の今にも壊れそうな廃ビルの一階。可憐な少女は楽しそうに笑っていた。手には1mはあるだろう血がついた日本刀。少女の白い制服の襟とネクタイとスカートは真っ赤で、どうも服に飛び散った鮮血に栄えていた。

 少女の足元には、血まみれの男が倒れていた。既に屍となっている。そこから流れる血は、少女の白い靴にベットリと付いて染み込んでいた。



「う〜ん、此処場違いだったかもね。折角の100人目なのに...まぁしょうがないな。今回は派手な事やろうか!」



 少女は高笑いをすると、制服のうちポケットの中からライターを取り出した。途中、オイルがないのに気づいた少女はため息をついた。



「あー、これじゃあ派手に燃えないじゃんか〜。最悪」



 腹いせに廃ビルの柱に背中をドンとぶつけると、顔をしかめた。ギシギシときしむ音がする。コンクリートのはずの天井に、ひびが入った。



「マズい...廃ビルって忘れてた...」



 少女は祝☆100人目の事なんか忘れて、急いで廃ビルの出口へ向かって飛び出して行った。どれだけ脆くなっていたのか、すぐに天井が崩れ落ちて来、少女の行く手を遮った。



「あー死んだな」



 別に死んでも良かった。だって生きる価値がなかったから。生きててもなんの意味も感じなかったから。だから別に死んでも良いって思ってた。

 正直、つまらない人生だった。テレビでは「シリアルキラー」とうたわれる連続殺人犯。でも、表向きは美人で優しい優等生。人を初めて殺したのは小学5年生の時で、その時は既に「何故人は殺してはいけないのか」という疑問をずっと胸に抱いていた。先生が、



「それは人を殺さないと分からないから、一生知らなくて良いものなんだぞ?」



 と言っていたから殺した。相手は、私にしつこく言い寄っていた6年の男子。正直ウザかったし、人を殺しては行けない理由が知りたかったから刺殺した。でも、その理由は一向に分からなかった。

 簡単に殺す事も出来たし、なんの罪悪感も感じる事はなかった。私はみんなの前で泣いて上げた。この立場を保つ為に。だって、よく話していた人が急に殺されて、悲しくないわけがないーーというのが世の中だからだ。


 その後、私は何度か人を殺した。理由はよく覚えていないけど、”何となく”だと思う。大人も殺し始めると、警察は本格的に捜査を始め、メディアも大きく取り上げた。

 だが、私はその殺人を止める事はなかった。3日に1人のペースで殺される人々。何度殺しても誰にもバレない完全犯罪。全てが台本シナリオ通りに行く。私はこの殺人の快楽に溺れた。


 名前? そんなものはない。だってそんなもの必要ないもん。



「私、何処に行くんだろうなー」



 本に書いてあったような気がする。何か悪い事をすると地獄に、普通に真っ当に生きている人は天国に行くらしいが、さて私はどっちかな?

 このまま死んだら、間違いなく天国行きね。だって、私悪い事なんて全然してないもん。



「ハハハ...結局、なんのスリルもないまま終わるのか」



 目の前で廃ビルが崩壊する。そして、自らもコンクリートの下敷きをなった事は言うまでもない。



 **



 気がつくと、広い道に倒れていた。馬の鳴き声や声が聞こえる。目が重いーー。



『信長様、信長様』

『うるさいぞ恒興。介抱が出来ないだろう...』

『何言ってるんですか? 体触りたいだけですよね?』

『そ、そんな事は...ない。血まみれだから...きっと怪我をしているに違いない』



 胸辺りに違和感を感じる...けど、ツッコまないよ?

 手の感覚が戻って来た。だが、持っていたはずの日本刀は握っていなかった。また声がしてくる。



『お前、起きたか?』



 一先ず目を開ける事は出来た。散切り頭をした、目付きが悪いが顔立ちの良い男が私を覗き込んでいた。背中が痛くないという事は、この男が支えてくれているという事だろう。



「あ...此処は...」

「患部が見当たらないな...大丈夫か?」

「はい...」



 男は私の頭を優しく撫でた。あの、一言言いますけど私16歳ですからね?

 男は肩衣に袴の格好をして、近くには馬二頭と優しそうな髷をしたもう1人男が居る。



「お名前は?」



 もう1人の男が聞いた。



「名前...う...」



 頭が痛い。つい頭を痛そうに押さえると、男が言った。



「俺は織田信長だ。あっちは俺の乳兄弟の恒興だ」

「の、信長...?!」



 織田信長というと、あの戦国時代に活躍した武将さんの事だね。という事は...こっちが池田恒興なのか...というか、二人とも絵と随分違うね。

 戦国なのに信長さん散切り頭だし、恒興美形なんですけど...。



「おのれ、信長様を呼び捨てにするとは、何と無礼なーー」

「恒興、刀を収めろ」



 怒りが顔をゆがめた恒興は、舌打ちをして刀を懐に収めた。そして私は信長さんに聞いてみた。



「あの...私の刀は?」

「あぁ、あれは...うん、危ないから没収だ」

「えぇ?!」



 あの私の命より大切な刀を没収だと?! 織田信長! 何て事するんだ!



「それでお前...名前ないのか?」

「え...?」

「名前。さっき恒興が聞いた時頭押さえていたろう」

「ま、まぁ...無いですね。あ、でもそれなら...」



 良い事を思い付いた私は、信長さんを上目遣いで見た。



「信長様、私の名前をつけて頂けないでしょうか?」

「え...」

「私、信長様にお使え申したい所存でございます。道中に倒れたまう私を救って頂き、何とお礼申し上げればよいのやら...」

「い、いや...そんな事は...」

「信長様は、私の人生を捧げてもよろしい方です...駄目、ですか?」



 正直、元々怪我なんてしてないし介抱してもらっただけだけど、徐々に赤く染まって行く信長さんは案外チョロいのだと思う。

 ただ、若干お尻や腕が痛いという事は、多分夢ではない。刀を没収されてこの危険な戦国時代を生きて行くわけにもいかない。とりあえず、信長さんを取り込むのが良いだろう。

 恒興は少し私に嫌悪の視線を送っているが、私が目を向けるとすぐに微笑んだ。



「貴女、戦えますか?」

「えぇ、この血が誰のものか分かりますか?」

「...」



 私は優しく信長さんに微笑むと、彼は頬を緩めた。



「恒興、こいつを城に連れて帰るが異論はないな」

「...信長様の決定でしたら。ですが、帰蝶様がお怒りになるのでは?」

「んー、帰蝶か...」



 帰蝶、というのはきっと、信長さんの結婚相手の「濃姫」の事だろう。



「ま、良いだろ。そうだ、名前決めないとな...う〜ん...りんなんてどうだ?」

「藺...ですか? とっても良い名前です! ありがとうございます!!」



 こうして私は「藺」という名を貰い、信長様のお使えする事になったのだが、その後濃姫ともめたり戦いに参加したり恒興に迫られたりするのはまた別の話。



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