8 空っぽの心
納得いかぬ…。
仄かな光を感じて、私の意識は浮上する。
「ん・・・。」
光から逃れようと寝返りを打とうとした時、ベッドの違和感を感じた。柔らかいは柔らかいのだけど妙にチクチクして、時折カサリと音がなる。
なんだ?この嫌な感じ。
私は寝ることが大好きだから布団に入って三秒で就寝を目指し、心地よく爆睡できるように、寝具は何気すごい高級なのを使用している。
自慢じゃないよ?うん、自慢じゃない。
高級マットと自分に合ったオーダーメイドの枕と100%羽毛布団のおかげで、朝起きたら肩こってるとか、腰が痛いとかとは無縁なのだ!
ごめん、やっぱり自慢です。(どやぁ・・・)
だから、カサカサとかチクチクとは程遠い筈なのに・・・。
その違和感を調べるため、引きつる瞼を開けた。
まず目に入ったのは、いつもの白い天井・・・ではなく、緑に茂った葉っぱとその向こうに見える空。
首を横に向けると、落ち葉と雑草に覆われた地面と木々たち。
そしてベッドだと思っていたのは、先程からチクチク・カサリを繰り返していた地面だった。
「え”。」
まさかまさかまさかまさか。
急いで身体を起こして、ほっぺたを手で思いっきり引っ張ると、確かに走った鋭い痛み。
つまり、夢で夢を見てたんじゃなくて、本当にただ夢をみていて。そして、今の痛みも本物で。それって、つまり今のこの状況は・・・・。
「夢じゃ・・・ない・・・?」
思考の果てに、たどり着いたその結論に愕然とする。
それじゃ、帰り道穴に落ちたのも。気付いたら見たことのない森にいたことも。月が三つあったことも。大きな見た事もない大蛇に襲われたのも。全部全部全部。
「・・・現実ってこと?」
穴に落ちた時よりずっと大きな虚無感に襲われる。混乱が一周回って、脱力した。
制御していた意志がなくなってしまったのか、今まで無意識に押し込めていた不安が一気に溢れ出す。
許容量を超えた不安や悲しみが涙という形で現れた。
でも、不安に押し潰されそうな精神とは逆に、以外にも泣き崩れる事はなかった。
ただ涙が頬を滑り落ち、濡らしていくだけ。
これではまるで人形のようだ、と思った。
ここはどこだろうか。
家はどこだろうか。
家族はなにをしているだろうか。
友達はなにをしているだろうか。
私は、何故ここにいるのだろうか。
私は、なにをしたいのだろうか・・・・。
*** ***
どれくらい泣いていたんだろう。
もう出てくる涙は枯れて、目も大分腫れ上がっているような気がする。
なんというか、涙と一緒に”帰りたい”っていう大きな波が流れてしまったらしい。
今は何もない・・・というか、清々しい気持ち。すごく凪いだ気分。
やる気も出ないし、体もだるい。でも、代わりに悲壮感もない。本当に空っぽみたい。
でもさ、今心が空っぽな状態になって良かったと逆に私は思う。
なんかよく、「心が空っぽなんて、可哀想!!」的なことを漫画や小説で聞くけれども、私にとっては、(まぁ今限りで)そんな事無いと思うよ。
だって、空っぽならポジティブな気分をいっぱい詰め込めばいい。悲しいことをポイポイしちゃえばいい。
それは確かに今の私にとっては、とても有難い事だよ。
だから、この空っぽ状態の心にポジティブ気分をいれてしまおう。
明るい心にしてしまおう!
ふっふー!!
「ん~~。森の寝起きも新鮮でよろしな~。うわ、目が腫れぼったい。これは絶対いけない奴だ。うん。」
元気づけに思ったことを、そのまま口に出してみる。
あー、でも私は普段もっとクールだから!こんな口うるさいタイプじゃないから!自称お姉様だから!!
『アホ~』
「うっさい烏!!」
・・・こほん。 まぁ、鳥はほっといてだね。
さあ、やってまいりました!恒例の周囲確認ターイム!!
ちなみに、周囲確認タイムとは、周りをみて今現在の場所や時間を確認する時間のとだよ!
脳内で空想の観客に説明しつつ、私は目を凝らして周囲を見る。
周りは朝日に照らされて明るいね。結構早くに起きてたっぽい。 んー、他には?
首を180度、西から東に動かした時、東方面の木々の間が周りの木の間と比べ、明るいことに気が付いた。
うん。明るいよね?うん。
とりあえず見てみようか。
近づいていってよく見ると、向こうが草原のようになっていて、そのすぐそばに塗装もされていないけど確かに人が通ったことによってできた道があるのが見えた。
「み、み、みみみ・・・ 道だぁーーーーー!!」
魂の響が私の喉から声としてでた。
やっと、やっとだよ!
時間としてまだ一日ぐらいしか見てないけど、人工物にやっと巡り会えたよ!!
こんな自然物ばかり見て、マイナスイオンはもうお腹一杯だよ!飽き飽きしてたよ!!
とりあえず、道に出よう!!
私は草をかき分け進んで行った。
ふふふふふ・・・・。これで、かつる!!
さあさ!レッツパーリィィイイ!
久しぶりの人の気配のするものを見た私は、凄く舞い上がっていた。
私のキャラじゃない言葉を発するぐらい可笑しかった。
これで、勝てると疑っていなかったのだ。
だから目の前の勝利に向かって全力疾走してしまった。
舞い上がったせいで、いろんなことを忘れていることを忘れてしまっていたのに。
もっと慎重に動くべきだったのに。もっと深く考えるべきだったのに。
私は何もかもに気付いていなかった。
ここが地球ですらない《異世界》だということ。
ここの文化が地球ほど発展していないこと。
私が女で一人ぼっちだということ。
湖で反射して見た私の顔のこと。
飛躍的に上がった身体能力のこと。
そして
夢の中でした約束があったこと。
完璧だと思っていた私の行動はその実、穴だらけだった。
ええ。ええ。
主人公は色々忘れてます。
あぁ、でも異世界ってのは何となく勘づいています。
分かりたくないものだな…。異世界だとは…。状態。
あとキャラ設定がもろぶれまくってます。
ぶれぶれです。
ど、どーしましょー?
キャラ設定多少無視して、思いのまま書いた方がいいのでしょうか?