無力
もしも、「今すぐ死にたい」と、まるで絹がすれるような小さな声で震えている人がいたら、僕はこう言いたい。
「君が”死ぬ”と決めたその覚悟を僕は否定する気はありません。でもね、”今”はやめて、明日にしたらどうかな? そしたら僕が、君が「死ななくて良かった」・・・・・・いや、「もっと、ずっと、生きたい」そう思えるような、最高におもしろい物語を創ってあげるよ!」
・・・・・・わかっています。僕は無力です。そんな、人の生死を変えてしまうような文章を書くことはできません。
それでも、何の根拠もなくても自信だけはたっぷりで、こういうことを言える人間になりたい。
そして、たとえ最高におもしろい文章を書けなくても、結果的に嘘をつくことになっても、「次こそは最高におもしろい物語を創るからさ、明日まで生きていてよ」と笑いながら言える人間になりたい。
僕に人を救う力がないのなら、無力なら、その無力な自分をうまく使って、人を救いたい
嘘つきでも、汚くても何でもいい
とにかく、どんな方法を使ってでも、命を繋ぐ人間でありたい
無力を嘆くな! 無力をあきらめるな!
何も出来ない自分を嘆く暇があったら、何も出来ない自分が何か出来る環境を作ればいい
何も出来ない自分の力が、実はとても価値のあるものだという新しい概念を作り出し、それを広めればいい
出来ない自分を、世界のスタンダードにしてしまえばいい
何度でも言うよ、あきらめるのはまだはやい
もう一度考えるんだ
君に足りないのは本当に『力』なのかい? 『知識』なのかい? 『経験』なのかい? 『権利』なのかい? 『立場』なのかい?
実は今君が持っているもので十分なのではないかい?
そして、変えるべきは自分ではなく、周りの人や環境ではないのかい?
今するべき努力は、自分を変える努力ではなく、自分の存在意義を人に伝える努力なんじゃないかい?
それはきっと、今まさに死を望んでいる君にも言えることだよ
死ぬのはやめよう、明日にしよう、明日にしてよ
明日はきっと、僕が世界をおもしろくするからさ
そんな風に思っているのが僕一人ぼっちだったら、きっと叶わない
でもね、きっとそんな風に思っているのは僕だけじゃないんだ
この考えを僕が誰かに伝えるから
だからお願い、君も誰かに伝えて欲しい
小難しい語録はいらないから
「何かを変えたい」というその意思を、そして、「君も変わってよ」という気持ちを、伝えて欲しい
だから僕はあなたに向けてこう言いたい
「僕は世界をおもしろくしたい。そのためには、君の犠牲が必要だ。君の惜しみない苦労と労力が必要だ。だから、僕のわがままのために、変わって欲しいんだ。おもしろい世界を作るためには、死を望む君は邪魔なんだ。死んで死体になってしまったらもっと邪魔。だから、頼むから生きて欲しい。そうすればお礼に、僕が最高におもしろい物語を、見せてあげるから」
―――それが何年後になるかは、わからないから、それまで生きていてよ