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200文字小説&エッセイ

無力

もしも、「今すぐ死にたい」と、まるで絹がすれるような小さな声で震えている人がいたら、僕はこう言いたい。


「君が”死ぬ”と決めたその覚悟を僕は否定する気はありません。でもね、”今”はやめて、明日にしたらどうかな? そしたら僕が、君が「死ななくて良かった」・・・・・・いや、「もっと、ずっと、生きたい」そう思えるような、最高におもしろい物語を創ってあげるよ!」



・・・・・・わかっています。僕は無力です。そんな、人の生死を変えてしまうような文章を書くことはできません。


それでも、何の根拠もなくても自信だけはたっぷりで、こういうことを言える人間になりたい。


そして、たとえ最高におもしろい文章を書けなくても、結果的に嘘をつくことになっても、「次こそは最高におもしろい物語を創るからさ、明日まで生きていてよ」と笑いながら言える人間になりたい。


僕に人を救う力がないのなら、無力なら、その無力な自分をうまく使って、人を救いたい


嘘つきでも、汚くても何でもいい


とにかく、どんな方法を使ってでも、命を繋ぐ人間でありたい


無力を嘆くな! 無力をあきらめるな!


何も出来ない自分を嘆く暇があったら、何も出来ない自分が何か出来る環境を作ればいい


何も出来ない自分の力が、実はとても価値のあるものだという新しい概念を作り出し、それを広めればいい


出来ない自分を、世界のスタンダードにしてしまえばいい


何度でも言うよ、あきらめるのはまだはやい


もう一度考えるんだ


君に足りないのは本当に『力』なのかい? 『知識』なのかい? 『経験』なのかい? 『権利』なのかい? 『立場』なのかい?


実は今君が持っているもので十分なのではないかい?


そして、変えるべきは自分ではなく、周りの人や環境ではないのかい?


今するべき努力は、自分を変える努力ではなく、自分の存在意義を人に伝える努力なんじゃないかい?


それはきっと、今まさに死を望んでいる君にも言えることだよ


死ぬのはやめよう、明日にしよう、明日にしてよ


明日はきっと、僕が世界をおもしろくするからさ


そんな風に思っているのが僕一人ぼっちだったら、きっと叶わない


でもね、きっとそんな風に思っているのは僕だけじゃないんだ


この考えを僕が誰かに伝えるから


だからお願い、君も誰かに伝えて欲しい


小難しい語録はいらないから


「何かを変えたい」というその意思を、そして、「君も変わってよ」という気持ちを、伝えて欲しい


だから僕はあなたに向けてこう言いたい


「僕は世界をおもしろくしたい。そのためには、君の犠牲が必要だ。君の惜しみない苦労と労力が必要だ。だから、僕のわがままのために、変わって欲しいんだ。おもしろい世界を作るためには、死を望む君は邪魔なんだ。死んで死体になってしまったらもっと邪魔。だから、頼むから生きて欲しい。そうすればお礼に、僕が最高におもしろい物語を、見せてあげるから」


―――それが何年後になるかは、わからないから、それまで生きていてよ



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― 新着の感想 ―
[一言] 読み進むにつれて、視界が涙で滲むような、そんなお話でした。  そして、あぁそうか。とたこきさんのこの作品に影響が与えられました。  死にたいと思っていたときがありました。今も時々そう思いそう…
2012/03/07 15:21 退会済み
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