~第2章 第1幕 架け橋~ 26~28
注意:殺人が起きます。
登場人物が多すぎてグチャグチャしてます。
中学生の書いた作品です。
無駄に長いです。
似ている作品があったらごめんなさい。
(本読まないのでかぶっているものがあるかもしれません。)
一言:今回で第2章第1幕終了です。秘密が少し解明されて、大きな疑問が発生します。なぜか、脇役設定だった彼女が重要役になってしまいました。やっぱり自分の本名と一緒だから愛着がわくのでしょうか。
26 『出会い』 翔大 万年樹
会議所にいたメンバーは全て万年樹の近くに集まった。朽ち果てた万年樹の姿はとても哀れなものだった。
「なんで・・・。」
俺は立つ気力も失い膝をついている。
「みんな!」
作戦部の集まりに行っていたはずの夕菜が走ってこっちにやって来た。緑ノ国の作戦部アジトからも万年樹が見えたのだろうか。良く見ると夕菜だけではない。
「見事にやられているな。」
智が木の幹を見ながら呟いている。
「何があったの?」
黄ノ国もやって来た。メイは心配そうにあたりを見渡している。
「すごいことになっているな。万年樹以外は無傷。相当の腕利きスナイパーだな。・・・ロケット弾の抜け殻もあるな。どこにロケットランチャーが存在するんだ?」
ジュンは辺りを見渡した。
見渡すと四色全員が集まっている。7人を除いては。
「ここまでの威力の弾ならば、ずいぶん遠くから撃っているわね。視力は並じゃないわ。こんなことが出来るのは銃剣士しかいないはず。」
久しぶりに見た結姫は何も変わっていなかった。
「しかし、こんな武器はだれも持っていないはずだ結姫」
「そこが問題なのよ。一体、誰が何の目的でこんなことを・・・。」
「考えられるのは、例の紫ノ騎士しかないでしょう。」
「いや、7人が帰ってきた可能性もあるぞ。王達ならば余裕で使いこなすことが出来るだろうしな。」
「クレアもデザートイーグルを愛用するくらいだからロケットランチャーも軽々と。」
「7人というならば、先に顔を出すはずでしょう。」
「ラチが開かないな・・・。」
数人が話し合っている。
「ねぇ。美羽。この前、万年樹の寿命が近づいているって言ったわよね。どういうこと?」
夕菜が別のところで美羽にそんなことを問いかけている。
「誰かに聞いたんだけどね。万年樹にも寿命があるんだって。寿命が近づくと自分のクローンを作って次世代の万年樹を育てるの。次世代の万年樹が1メートルくらいになると大きな万年樹は折れてしまうの。折れたときの衝撃で大きな地震と大きな災いが降りかかるって言われているの。」
いつの間にか、全員が美羽の話を聞いていた。
「では、これは悪意ではなく善意ということになるのかしらね?」
「そうね。」
雫や夕菜が微笑みあっている。
「あら?例の方がお越しのようよ。」
結姫の指差した方向を見ると誰かが大きな武器を引きずって歩いている。
大きな武器を持った人は良く見ると女性だ。厳重装備でホルスターには合計15丁以上もの銃を携えている。きれいな金髪には少しウェーブがかかっている。赤いきれいなドレスに、緑色の瞳、青い髪飾り。どこに国の人かは分からないようにしている。
「きれいに焼けているわね。あたしの腕も衰えないなぁ~。」
近づいてきた少女はそんなことを言っている。
「あらあら?たくさん集まって何しているの?」
少女はのん気にそんなことまで言っている。笑っている彼女の表情に、その格好はとても似合わなかった。
「はじめましてわたくし私、ユートピアからクレア様の命令で来ました。ユートピアの王女ステラと申します。」
丁寧にお辞儀をする彼女に誰もがつい返してしまう。
「クレアの命令?」
「はい!いま、あたし達の住むユートピアでは魔王が暴れていて困っているんです。そこで、魔王を鎮圧していただいたのですが、クレア様がこちらの世界に帰れないと言う事実にお怒りになってただいまユートピアはクレア様の支配下に置かれているのです・・・。」
つい言葉を失ってしまう。そんなにクレアは暴れているのか。後々大変なことにならないといいが。
「クレアもやってくれるわねぇ。大丈夫なのかしら?ところで、他の6人は?」
夕菜も呆れきっている。
「え~と今が秋の終わりなので、他6名様はあと1年半後の春に帰って来るはずですよ。・・・では、忙しいのでそろそろ失礼しますね。」
ステラは私たちに背を向けて、また重そうなロケットランチャーを引きずり始めた。
「なんか、よくわからない子だったね。」
美羽が私の耳元で囁いた。ステラの姿はもう夕日に消えていた。
また、何か人影が見える。ロケットランチャーを持っているわけではない。大きな物を抱えている人影がある。走っている。とても速いスピードで近づいてくる。
「みなさ~ん!」
先ほどまで聞いていた声がする。
「ステラ姫。どうかしましたか~?」
やさしく微笑んでリカは聞いている。なぜかステラが戻ってきたのだ。
「忘れ物がありまして、あの、この鉢をクレア様に渡せと言われていまして。四色の国の皆様へなにか意味があるようなのですが、私にはよくわかりませんね。」
ステラはそういって凄まじいスピードで去っていった。
瑠璃色の小さな花。クレアが残したこのはなは何の意味があるのだろうか。
「どんな意味なのかしら?」
「さぁ。その鉢の花は?誰か知っている人はいない?」
植物に詳しいアキラは帰ってこないためこの植物の名前を調べなければいけないと覚悟はしていたが、以外に知っている人はいた。
「それ、勿忘草。」
花とは無縁なはずの達也が知っていた。
「あぁ、勿忘草!それそれ。花言葉は、“真実の愛”だったかしら?」
「もうひとつ、クレアが本当に言いたかったのは“私を忘れないで”ではないか?」
緑の真央、樹が続けて言った。
「ねぇ、なんで緑ノ国は植物に詳しいの?」
「ルナが緑なんだから植物のことを覚えろってな。アキラは異常に覚えが早かったな。」
「へぇ。なら、みんなが知っているのね。」
意外な事実が発覚した。
「クレアらしいメッセージだな。」
花言葉やメッセージも大切だが謎が多すぎる。
「確か、フェアリーキングダムの近くには“時ノ青薔薇小道”があるのよね。小道での1分はこちらの世界での1年とかいうわよね。」
「あと、フェアリーたちはとても頭がよく技術が発達している。タイムマシンの製造もできているだろうし、ロケットランチャーのような武器も使いこなせて当然。」
「このことを考慮して考えれば、おそらく、7人は小道で3分間の時を過ごし、フェアリーに助けてもらってこっちの世界に帰ってくるわよ。クレアの場合は残されちゃったから魔王の退治を任されたのでしょうね。そこで、クレアが王国を乗っ取った。そして、さっきの王女様がタイムマシンに乗って私たちの世界に来た。ってことかしらね。」
夕菜と智の意味がわからない会話の末、二人は勝手に結論を探し当てた。
「1年半か。長いのか、短いのか。よくわからないな。まぁ、帰ってくるのはクレア以外確実なんだろう。」
「クレア…。自力で帰ってくるかな・・・?」
不安そうな表情をする美羽に誰も何も言うことができない。普段ならば
『クレアだから大丈夫だよ。彼女に敵はいない。』
というのだが今回ばかりは本当に保障のない言葉になる。それは大きな刃となって心に傷をつける可能性だってある。
「さぁ、そろそろ帰ろうか。」
オレンジ色の空も時期に黒くなる。俺たちは各自国へ帰った。妙にきれいな夕日は俺の心をよりいっそう不安にさせる。魔力でも授かったかのように。
27 『疑惑の花言葉』 達也 緑ノ宮殿
万年樹が燃えてから半年の月日が過ぎ去っていった。なんだか、とても早いものに感じた。早くネイミとアキラが帰ってこないか、楽しみにもなっていた。
俺たちは10日ほど前から会議所に身を寄せていた。緑ノ宮殿にいると危険なことが起こるという風の噂を信じたのだ。
「根拠もない噂だが、赤ノ万年樹が燃えるときも発生した噂に従ったら誰一人ケガ人が出なかったのだ。俺たちも従わないわけにはいかない。
「もうすぐね、何も起きなくてよかったわ。」
莉子が明るく振舞っている。
「そうだな。今のところは、だがな。」
そう、何もなかったと決め付けるには早すぎる。赤も帰路での出来事だった。
宮殿も近づいてきた。しかし、なんともいえない不安が体を走る。なにも起きていないでくれ。みんな平和でいてくれ。そう願った。
「・・・!!!」
宮殿に着くと、宮殿には大きなイチイの木が天井を突き破って生えていた。イチイ。これは確実に挑戦状である。最低なものだ。
「死・・・。」
俺より先に樹はつぶやく。
「イチイで間違いないな。悪質ないたずらなのか、仕込まれた挑戦状なのか。」
俺は考え込んでしまった。
「最近はどこの国でも花言葉を学び始めている。どこの国からの挑発でもおかしくはないはず。調査を続けたほうが・・・。」
「いや、今回は見過ごしてやろう。」
次の日、赤ノ国の窓辺にはトリカブト(復讐)が、黄ノ国の庭園にアマリリス(虚栄)、青ノ国の中庭クロユリ(呪い)が生えていたことを知った。
花や草木に罪はないのだが、これらは縁起が悪い花言葉を持つ花。このままにしておくのも不吉だ。魔術師が2人とも不在だから少し苦戦はするがイチイを抜くことができた。
「でも、かわいそうよね。この花たちは罪がないのに人間が勝手に決めた花言葉のせいでこのように抜かれてしまうなんて・・・。勿忘草に嫉妬してしまうでしょうわよね。」
真央の悲しげな表情は心にしみた。
「そうだな。物言わぬ植物には一切罪はない。このようなイタズラが発生するたびに抜かなければならない。早く犯人を突き止めなければ。」
俺の言葉に真央はよりいっそう不満げで、悲しげな表情を見せた。何が言いたいのだろうか。
「それよりもなんでこの国の花言葉が“死”なんだ?」
「悲しいけれど考えられる可能性は1つよ。・・・誰かが死ぬということでしょう。」
リカの尖った言葉は胸に突き刺さる。
「なら、復讐や虚栄、呪いは?」
「赤の復讐は理解できるわ。クレアが過去に行ったことは善であり悪でもあるのよ。本人が忘れていてもされた人は一生の傷となり永遠に復讐心を抱くもの。黄の虚栄はあくまで予測にしか過ぎないけれど、黄ノ国は飾らない国でしょう。そして、偽善の国なのよ。飾らないというのが虚飾ということを示すんでしょう。まぁ、難しすぎて私自身も理解ができないわ。青の呪いはミサが関係していておかしくないでしょうね。詳しくはわからないけれど。」
リカの予想は俺とも一致している。青ノ国はわからないのも含めて。
「でも、不幸中の幸いだよな。会議所に行かなければ枝に突き刺さっていた恐れもある。」
「あの噂はいったいどこの誰が何の目的で流しているのかしら?」
「さぁ。レンア様がいれば彼で決まりだけどいないからね。」
樹が一生懸命話を変えようとしても暗い方向へと進んでしまう。彼も気の毒だ。
「イチイはそこらへんに移植するか!」
「え!?」
俺の突然のひらめきに誰もが驚いている。縁起が悪いのはよくわかっている。でも、生命を絶たせるのが正解とも限らない。真央の表情が一変し明るくなる。
「イチイはね。初秋になると甘い実がなるんだよ。もちろん食べることもできるよ。」
笑顔の真央の言葉はみんなの首を縦に振らせた。夏が近づいてきている。新万年樹は小さな緑の葉がまばらに見える。
「達也!!!!」
朝方大きな声が聞こえた。俺はあわてて部屋を出て声がした前庭に向かった。そこで目に広がったのは信じがたい景色だった。
「リカーーーーーー!!!!」
大声を出してないている真央が抱いているのは変わり果てたリカの姿。傍らに何か粉のようなものが見える。・・・これは?・・・・花粉?・・・確か・・・。
こんなことを冷静に考えている自分に驚いた。しかし、そんな感情もすぐに失った。
― クロユリ ―
「青だ・・・。青に兵を送れ!!!!幼稚な悪戯だけではなくリカのライフを・・・。よくも、滅ぼせ!滅ぼすのだ!!青ノ国を滅ぼせ!!!ミサもレンアもいないんだ!今こそが滅ぼす時にちょうどいい。直ちに出兵だ!!!!!」
気づくと中庭には大勢の人がいる。
「達也、それは・・・。」
樹の言葉など、ろくに耳に入らなかった。大事な友人を失った悲しみに俺は理性を失った。
「わかった。7人が帰ってくるまで1年ある。第四英雄のお前ならば考えがあるのだろう。俺も銃剣士として戦う。しかし、命を落とすつもりは無いぞ。いざとなったら退く。」
「かまわない。」
「そ、そんな。ミサやレンア様がいないのはチャンスだけど、ここもアキラやルナがいないのよ!魔術師は抜きで戦う気?何人死者がわからないわよ。」
戦争に反対の様子を示す莉子。俺はすこし落ち着いている。しかし、
「うるさい!!!俺はお前たちが生きていれば構わない!国民や兵士などはどうでもいい!クレアも彼らはcomだと言っている!国民など死んでも構わないんだ。・・・ただ・・・お前たちが生きていれば構わない。」
俺が平常心を失っていると思っている莉子はまだ信じられないと言うかのような目をしている。
「なぁ、分かってくれよ。」
俺の目から不意に涙が出てきた。本心だ。心からの涙は久しぶりだ。莉子は俺の言葉が本心だと言うことに気づいて戸惑っている。
「私は、達也に従うわ。その代わり最善策を。最善の方法を尽くすのよ。死者の軽減が条件よ。できるでしょう。」
誰もが反対するが、内心はリカを殺した者が憎いはずだ。説得できることは分かっていた。それでは作戦を練るとしようか。
28 『記憶』 翔大 会議所
万年樹が朽ちてから半年がたった。なんだか時がゆっくり流れている気がする。早く美咲が帰ってこないだろうか。クレアは無事なのだろうか。そんなことだけを考えてきた半年。俺は気づくと会議所にいた。赤ノアジトにいたはずなのに何故かあの巨大な穴の前で立っている自分がいた。時間は・・・早朝?
― コツコツコツ ―
誰かが歩く音がする。女性のヒールの音だ。
「あら?翔大、やっぱりいたのね。」
現れたのは青ノ結姫だった。微笑むその天使のような表情は俺の心のに不安が走る。
「もうすぐ、戦争が起こるわよ。革命が。おそらく緑ノ国が青ノ国に攻めて来るわ。多くの人が死ぬでしょうね。赤ノ王はいつ現れるのかしら?・・・ね。」
「なにがいいたい?」
「要するに、赤ノ王が現れたってことよ。誰かしらね?あと、戦争が起こる。ただそれだけ。」
結姫は嘲笑とも微笑ともいえない恐ろしい美しく、笑みを浮かべ俺を見ている。
「戦争が起きる理由は?」
「さぁ、そこまでは。あくまで私の推理と測定よ。定かとはいえないの。まぁ、信じて損をすることはないはず。」
「・・・・・・。」
「本当よ。」
結姫は「ふぅ」とため息をつき俺から目をそらした。俺はただ、穴を見つめた。そこでふと疑問に思うことがある。
「結姫。なぜ、君がそんなことを?」
俺が振り向くとすぐそばに結姫の顔があった。俺は慌てて顔をそらす。
「なぜだと思う?」
口元をほころばせて笑う結姫。意味が理解できない。瑠璃色の瞳に吸い込まれそうだ。彼女は作戦部なのに巨大な魔力を感じる。普通の人ではないことは分かっていたが近くで見るとさらに圧倒されてしまう。
俺は圧力に耐えられず目をそらしてしまった。降伏と同じ意味を示すのは知っている。
「まだまだね。」
彼女の赤がかった茶色の長いきれいなツーテールはなびき不安をいっそうあおる。
「そういえば、作戦部の戦闘服を着たあなたを見たこと無いですね。」
「そうかもしれないわね。長期間休養をとっていたのもあるけれど、それ以前からこの格好だったかしら?」
彼女は作戦部の服ではなく青いドレスに赤いカーディガンだ。反対色なのに良く似合っている。
「戦争の発端となるのは緑ノ国の勘違い。青ノ国に攻めてくるわね。そして、この戦争は、いや、この疑惑の連鎖は全ての国を包み込むことになるでしょうね。長期の戦になるわ。宝争奪や五色戦争以上に国民が死ぬこととなり、私たち上級階級の戦闘士も数人はライフを減らす。」
急に彼女が発したので驚いてしまった。
「なぜ、今分かった?」
俺は驚きを隠すように言った。
「なぜかしらね?きっと今、緑が動き始めたのかもしれないわ。」
微笑む彼女と彼女の言葉は似合わないものだ。
「皆に知らせてくるのならば今のうちよ。」
俺は彼女の声にハッとしてワープポイントへ走り出そうとした。しかし、疑問があった。
「なぜ?なぜ、君がそんなことを出来るんだ・・・。」
「四色戦争が起こる条件は4人の王が生まれること。別の言い方をすれば全ての国の王が誕生すると言うことになるでしょう。」
「・・・・・。」
「紫ノレイピアは、血染めのレイピア。一つの国に宝は1つ。本当に単純に考えればいいことなのよ。簡単にね。」
「・・・・・。」
「王はレンアが四色戦争が起こると言ったときから4人いたのよ。赤以外の四色の王が。だからね、レンアの言っていた言葉は間違っている。戦争が起こるのは全ての王がそろったとき。すなわち5人の国の五人の王がそろったときなのよ。」
「レンアとファクトとネイミの3つの願いを叶えたのはこの私。私は彼らのように選ばれたのではなく私は王族の血筋なのよ。紫ノ国のね。」
「!!!」
「彼らの願いは私が忠実に叶えてあげたわ。まぁ、数人の死者は出てしまったけれど。彼らが願ったのは“守りたい”と言うことだけ。その場に立ち会わなければ意味は無いし、“守る”と強く願わなければいけないの。だから数人は死者がでているけどね。」
「もしかして!」
「ふふ。私は実行犯ではないわ。実行犯は真央。」
「バカを言うな!」
「そして、扇に真央とファクトをシンクロさせたのも、クレアに鋏とレイピアをシンクロさせたのも、ネイミと石をシンクロさせたのも、刃とレンアをシンクロさせたのもこの私。」
「!」
「私は明確な記憶を持っている。紫が滅びたことも、私たちが引き離されたことも、クレアの犯した罪もミサがクレアの記憶をいじったことも、私がレイ・・・今ではミサのものになっているけどその記憶も操作してある。間違っている。五色戦争のことも、私が王女だったことも、貴方が赤ノ王だったことも、健太とクレアの関係も全て知っているのよ。ただ、1つ何かを除いては。」
「お前がレイを殺したのか・・・。俺が赤ノ王?・・・全ての記憶・・・。」
俺の脳内はグチャグチャになっていた。もう何にも分からない。意味が分からない。なぜ彼女が俺にこんなことを話すのかも分からない。そして何よりこの感情。この記憶。
「お前はそんな性格じゃなかったはずだ。か弱い普通の娘だったはず。なぜ?」
「過去は捨てたのよ。私は新しい自分を作り出したの。不良品の昔の私に興味は無い。」
不良品・・・。彼女は自分のことをそう思っていたのか・・・。俺は、一体何を考えているんだ。記憶はないのに彼女のことは少しだけ覚えている。
「この世の全ては偽りなのよ。誰かの手によって作り出された。」
『虚しいこの世界には意味が無いよ』とでも言いたいのだろうか。彼女の瞳は少し潤んでいるようにも見えた。彼女の涙などは見たことも無い。
「なぜそんなことを俺に話す?」
「あなたの記憶を消させてもらうわ。・・・全てではない。戦争は緑が発端で起こると言うことまでは覚えている。でも、私とのこの会話は忘れるでしょうね。でも、またいつかこの記憶は自分の下に還って来る。」
「いつ?」
「それは分からない。でも、私はこの戦争で死ぬ。その前に教えてあげようと思ってね。」
「そんなはずは無い!おそらくクレアは王になり、4色全員が生き延びることを願う!“守る”ではなく“生きろ”と願うはず。だから、死ぬわけが。」
「確かにクレアは“4色の死を見たくない”と言ったわ。そこまではあなたの予想通りでしょうけど、“全部の国”とは言っていないのよ。私は青ノ作戦部ではないのよ。“紫ノ人間”なのよ。正しく言えば“紫ノ王女、メイリス・グレット”私はあなたに“メイリス”と呼ばれていたわ。キーワードでないほうで呼ばれるのが主なのよ。・・・話がずれたわね。あと、ミサ、健太、真央、クレアも不死身ではないのよ。」
メイリス・・・。その言葉に俺は妙な反応を示してしまった。幼少のころの記憶は存在している。でも、結姫に操作されている。もう1つの本当の記憶では、俺はメイリスと仲が良かった。だからあの時・・・。だって、あの時は・・・。
「真の王はまだいるのよ。黄は健太、緑は真央、青は崇。紫の第1王妃は私、私が逃げ出したときにクレアが王になる予定だったのよ。」
齢一桁の王女様メイリス・グレット
「思い出したところ悪いけれど、ごめんね。翔大。」
彼女はレイピアを取り出して最後に言った。
「紫色のレイピアの真の使い方は記憶を操作する道具なのよ。戦闘にも向いているけれど戦闘用ではない。紫ノ王女第二候補のクレアにも出来るはず。ただ、忘れているだけで。」
彼女がレイピアを横に振った。
「皆に知らせてくるのならば今のうちよ。」
彼女の声で我に帰った俺は少し違和感に気づいた。妙に太陽の動きが早い。しかし、そんなことを考えることもせずに俺は走ってポイントへ向かった。
なにか、忘れ物をした気がしたが後でとりに来ればいいと思うだけだった。
これが大きな絶望への架け橋になるとも知らずに。
ご覧頂ありがとうございました。
続きは同時に出ています。(どうしても同日に出したかったのでこうなりました。)
話に矛盾点または人名ミスが出てくると思います。
指摘・レビュー・評価をしていただくと幸いです。