7話
夕暮れだった。
空はゆっくりと赤く染まり始めている。
石畳の広場は静かだった。
遠くで風が草を揺らしている。
中央には剣が刺さっていた。
何十本もの剣が、錆びた鎖でまとめられている。
カチャ……
鎖が風に鳴った。
その近くに、一人の男が立っていた。
背の高い男だった。
黒い外套。
腰には長剣。
男は剣の束を見上げている。
「……」
しばらく動かない。
やがて一本の柄に触れる。
「抜けないか」
小さく呟いた。
その時。
石畳を歩く音がした。
振り向く。
若い兵士が立っていた。
槍を持っている。
兵士は辺りを見回す。
「……ここは?」
男は答える。
「知らん」
兵士は少し驚く。
「あなたも?」
男は頷く。
「気づいたらここにいた」
兵士は中央の剣を見る。
「すごい数だ」
男
「そうだな」
兵士は少し近づく。
鎖を見る。
「戦場の跡でしょうか」
男
「わからん」
兵士
「でも骨がない」
男は少し笑う。
「確かに」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
夕日が剣を赤く照らしていた。
兵士が空を見る。
「綺麗な夕焼けですね」
男も空を見る。
「……ああ」
兵士
「久しぶりに見ました」
男
「戦場か」
兵士は頷く。
「はい」
少し沈黙。
兵士が言う。
「あなたは剣士ですか」
男
「そんなものだ」
兵士
「強そうです」
男は肩をすくめる。
「どうだろうな」
風が吹く。
鳥が遠くを飛んだ。
兵士が聞く。
「ここ、不思議な場所ですね」
男
「そうだな」
兵士
「なぜここに来たんでしょう」
男
「さあな」
夕日が沈み始めていた。
兵士が言う。
「名前を聞いても?」
男は少し考える。
「エルド」
兵士
「私は——」
その瞬間。
兵士が消えた。
エルドは少しだけ周囲を見る。
「……」
中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は空を見る。
「良い夕焼けだ」
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




