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臨界(仮)  作者: vastum
7/13

7話

夕暮れだった。


空はゆっくりと赤く染まり始めている。


石畳の広場は静かだった。

遠くで風が草を揺らしている。


中央には剣が刺さっていた。


何十本もの剣が、錆びた鎖でまとめられている。


カチャ……


鎖が風に鳴った。


その近くに、一人の男が立っていた。


背の高い男だった。


黒い外套。

腰には長剣。


男は剣の束を見上げている。


「……」


しばらく動かない。


やがて一本の柄に触れる。


「抜けないか」


小さく呟いた。


その時。


石畳を歩く音がした。


振り向く。


若い兵士が立っていた。


槍を持っている。


兵士は辺りを見回す。


「……ここは?」


男は答える。


「知らん」


兵士は少し驚く。


「あなたも?」


男は頷く。


「気づいたらここにいた」


兵士は中央の剣を見る。


「すごい数だ」


「そうだな」


兵士は少し近づく。


鎖を見る。


「戦場の跡でしょうか」


「わからん」


兵士

「でも骨がない」


男は少し笑う。


「確かに」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


夕日が剣を赤く照らしていた。


兵士が空を見る。


「綺麗な夕焼けですね」


男も空を見る。


「……ああ」


兵士

「久しぶりに見ました」


「戦場か」


兵士は頷く。


「はい」


少し沈黙。


兵士が言う。


「あなたは剣士ですか」


「そんなものだ」


兵士

「強そうです」


男は肩をすくめる。


「どうだろうな」


風が吹く。


鳥が遠くを飛んだ。


兵士が聞く。


「ここ、不思議な場所ですね」


「そうだな」


兵士

「なぜここに来たんでしょう」


「さあな」


夕日が沈み始めていた。


兵士が言う。


「名前を聞いても?」


男は少し考える。


「エルド」


兵士

「私は——」


その瞬間。


兵士が消えた。


エルドは少しだけ周囲を見る。


「……」


中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は空を見る。


「良い夕焼けだ」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。

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