5話
夕方だった。
空は橙色に染まり、広場を長い影が覆っていた。
石畳は静かだった。
遠くで鳥が鳴いている。
中央には剣が刺さっている。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
錆びた鎖で束ねられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が揺れる。
その近くに、一人の男が座っていた。
鎧を着ている。
だが鎧は傷だらけだった。
男は兜を外している。
疲れた顔だった。
男は中央の剣を見上げる。
「……戦場じゃないな」
ついさっきまで戦っていた。
敵の軍勢。
味方はほとんど倒れた。
だが、今は静かな広場にいる。
男は深く息を吐く。
「静かだ」
その時。
足音がした。
振り向く。
少女が立っていた。
白い服。
小さな袋を抱えている。
少女は広場を見回していた。
「……どこ?」
男は答える。
「知らない」
少女は驚く。
「知らないの?」
「ああ」
少女は少し近づく。
中央の剣を見る。
「すごい」
男
「気づいたらここに?」
少女は頷く。
「森にいたの」
男
「俺は戦場だ」
少女は少し黙る。
「怖かった?」
男は少し笑う。
「慣れている」
少女
「すごいね」
男
「そうでもない」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
少女が剣を見る。
「これ誰の?」
男
「分からん」
少女
「戦い?」
男
「たぶんな」
少女は空を見る。
夕焼けが広場を染めていた。
「綺麗」
男も空を見る。
「……ああ」
少し沈黙。
少女が聞く。
「おじさん、強いの?」
男は少し考える。
「普通だ」
少女
「嘘」
男は笑う。
「どうして」
少女
「顔が強そう」
男は肩をすくめた。
「そうか」
風が吹く。
遠くで鳥が飛んだ。
少女が言う。
「夕日、好き」
男
「俺もだ」
少女
「戦場でも見える?」
男は空を見る。
沈む夕日。
「見える」
少女
「それならいいね」
男は頷く。
しばらく沈黙。
少女が言う。
「名前聞いてない」
男
「ガルド」
少女
「私は——」
その瞬間。
少女が消えた。
男は周囲を見る。
「……またか」
中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は空を見た。
夕日が沈みかけている。
「……悪くない」
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
ただ夕焼けと風だけが残っていた。




