4話
夜だった。
広場は静かだった。
石畳は月の光に照らされている。
壊れた柱の影が長く伸びていた。
中央には剣が刺さっている。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
鎖でまとめられていた。
風が吹く。
カチャ……
鎖が鳴る。
その近くに、一人の少年が立っていた。
年は十五ほど。
旅装の少年だ。
背には古い剣。
少年は辺りを見回す。
「……ここ」
さっきまで山道を歩いていた。
村を出て、初めての旅だった。
だが今は、知らない広場にいる。
少年は中央の剣へ歩く。
「すごい……」
剣を見上げる。
「誰の剣だろ」
一本の柄に触れる。
冷たい。
その時。
声がした。
「抜けないぞ」
少年が振り向く。
老人が座っていた。
灰色のマント。
古い杖。
少年は驚く。
「いつからいたの?」
老人は笑う。
「さあな」
少年は近づく。
「ここ知ってる?」
老人は首を振る。
「知らん」
「でも落ち着いてるね」
「長く生きるとな」
老人は剣を見る。
「面白い場所だ」
少年
「そうかな?」
老人
「静かだ」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
少年は空を見る。
満天の星だった。
「星がすごい」
老人も空を見る。
「……綺麗だな」
少年は少し笑う。
「旅に出てよかった」
老人
「初めてか」
少年
「うん」
老人
「どこへ行く」
少年は少し考える。
「決めてない」
老人は頷く。
「それでいい」
少年
「そう?」
老人
「ああ」
少し沈黙。
風が吹く。
遠くで虫が鳴いていた。
少年が聞く。
「おじいさんは?」
老人
「旅の帰りだ」
「どこから?」
老人は少し笑う。
「遠くだ」
少年
「また旅する?」
老人は空を見た。
星が輝いている。
「……どうだろうな」
少年は中央の剣を見る。
「なんかさ」
「うん?」
「ここ、好きかも」
老人
「私もだ」
しばらく沈黙。
少年が言う。
「名前聞いてない」
老人
「アルト」
少年
「俺は——」
言いかけた瞬間。
少年が消えた。
老人は静かに頷く。
「そういう場所か」
杖を持って立ち上がる。
空を見る。
「良い星だ」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
老人の姿も消えた。
広場には誰もいない。
ただ月の光と、風だけが残っていた。




