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臨界(仮)  作者: vastum
4/6

4話

夜だった。


広場は静かだった。


石畳は月の光に照らされている。

壊れた柱の影が長く伸びていた。


中央には剣が刺さっている。


何十本もの剣が地面に突き立ち、

鎖でまとめられていた。


風が吹く。


カチャ……


鎖が鳴る。


その近くに、一人の少年が立っていた。


年は十五ほど。


旅装の少年だ。


背には古い剣。


少年は辺りを見回す。


「……ここ」


さっきまで山道を歩いていた。


村を出て、初めての旅だった。


だが今は、知らない広場にいる。


少年は中央の剣へ歩く。


「すごい……」


剣を見上げる。


「誰の剣だろ」


一本の柄に触れる。


冷たい。


その時。


声がした。


「抜けないぞ」


少年が振り向く。


老人が座っていた。


灰色のマント。

古い杖。


少年は驚く。


「いつからいたの?」


老人は笑う。


「さあな」


少年は近づく。


「ここ知ってる?」


老人は首を振る。


「知らん」


「でも落ち着いてるね」


「長く生きるとな」


老人は剣を見る。


「面白い場所だ」


少年

「そうかな?」


老人

「静かだ」


風が吹く。


鎖が揺れる。


カチャ……


少年は空を見る。


満天の星だった。


「星がすごい」


老人も空を見る。


「……綺麗だな」


少年は少し笑う。


「旅に出てよかった」


老人

「初めてか」


少年

「うん」


老人

「どこへ行く」


少年は少し考える。


「決めてない」


老人は頷く。


「それでいい」


少年

「そう?」


老人

「ああ」


少し沈黙。


風が吹く。


遠くで虫が鳴いていた。


少年が聞く。


「おじいさんは?」


老人

「旅の帰りだ」


「どこから?」


老人は少し笑う。


「遠くだ」


少年

「また旅する?」


老人は空を見た。


星が輝いている。


「……どうだろうな」


少年は中央の剣を見る。


「なんかさ」


「うん?」


「ここ、好きかも」


老人

「私もだ」


しばらく沈黙。


少年が言う。


「名前聞いてない」


老人

「アルト」


少年

「俺は——」


言いかけた瞬間。


少年が消えた。


老人は静かに頷く。


「そういう場所か」


杖を持って立ち上がる。


空を見る。


「良い星だ」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


次の瞬間。


老人の姿も消えた。


広場には誰もいない。


ただ月の光と、風だけが残っていた。

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