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臨界(仮)  作者: vastum
2/10

2話

朝だった。


広場には柔らかな光が差している。


夜露が石畳に残っていた。

草の先には小さな水滴が光っている。


中央には剣が刺さっていた。


何十本もの剣。

それらは錆びた鎖で束ねられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が揺れる。


その近くに、一人の男が座っていた。


白衣を着ている。

眼鏡をかけた中年の男だ。


男はノートを広げていた。


何かを書いている。


「……妙だ」


男は剣を見上げた。


「金属の腐食状態と周囲の風化が一致しない」


ペンを走らせる。


「この剣は数百年以上前のものに見えるが……」


石畳を見る。


「広場はそれほど古くない」


男は息を吐いた。


「いや、そもそも——」


その時。


足音がした。


石畳を歩く音。


男が顔を上げる。


ローブを着た少女が立っていた。


杖を持っている。


少女は辺りを見回していた。


「ここ……どこ?」


男は言う。


「それを調べている」


少女は近づいてきた。


中央の剣を見る。


「すごい……」


男は聞く。


「君も気づいたらここに?」


少女は頷く。


「さっきまで森にいたの」


「なるほど」


男はノートに何か書く。


少女は剣の周りを歩く。


鎖を見る。


「戦場?」


「可能性はある」


少女

「でも骨とかないよ」


男は頷く。


「確かに」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


少女が聞く。


「おじさん、何してるの?」


「観察だ」


男は剣を見ながら言う。


「ここは普通の場所ではない」


少女

「そうなの?」


「まず」


剣を指す。


「これだけの剣がある」


石畳を見る。


「だが戦闘の痕跡がない」


少女

「ほんとだ」


男は続ける。


「さらに」


空を見る。


「太陽の位置がおかしい」


少女も空を見る。


朝の光。


静かな空。


「おかしい?」


「君はどこから来た」


「魔法学院」


男は少し考える。


「私は研究所だ」


少女

「研究所?」


「科学の施設だ」


少女は少し首をかしげる。


「違う世界かもしれないね」


男は言う。


「その可能性もある」


少女は笑う。


「面白いね」


男は小さく笑った。


「そうだな」


風が吹く。


虫の音が聞こえる。


鳥が空を横切った。


少女が空を見上げる。


「気持ちいい朝」


男も空を見る。


「……ああ」


少女

「ここ好きかも」


「私もだ」


少し沈黙。


男が聞く。


「名前は?」


少女

「ミリア」


「私は——」


言いかけた時。


少女が消えていた。


男は周囲を見回す。


「……なるほど」


ノートに書く。


『人は突然消える』


ペンを止める。


男は中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は小さく呟いた。


「興味深い」


その瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


朝の風だけが吹いていた。

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