19話
昼だった。
太陽が高く、石畳が白く光っている。
広場には風が吹いていた。
中央には剣が刺さっている。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
錆びた鎖で束ねられていた。
カチャ……
鎖が揺れる。
その近くに、一人の男が立っていた。
鎧を着た兵士だった。
男は中央の剣を見る。
少し笑う。
「……なるほど」
一本の柄に触れる。
「戦場だな」
その時。
石畳を踏む音がした。
振り向く。
旅人の女が立っていた。
女は広場を見回す。
「……ここどこ」
男が言う。
「戦場だ」
女は眉をひそめる。
「え?」
男は剣を見る。
「見ればわかる」
女
「でも骨とかない」
男
「片付けられた」
女
「誰が」
男は肩をすくめる。
「勝者だろ」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
女は剣を見る。
「でも」
男
「うん?」
女
「血の跡もない」
男は少し考える。
「昔すぎる」
女は少し笑う。
「適当だね」
男も笑った。
「そうかもしれない」
空には雲が流れていた。
女が言う。
「でも」
男
「うん?」
女
「ここ静かだよ」
男は空を見る。
「戦場の後は静かだ」
女
「そうなの?」
男
「ああ」
少し沈黙。
風が吹く。
草が揺れる。
女が聞く。
「戦場いたの?」
男は頷く。
「長いことな」
女
「大変だね」
男は笑う。
「慣れる」
鳥が空を横切る。
女が空を見る。
「昼、いいね」
男
「平和だ」
女
「うん」
少し沈黙。
男が聞く。
「名前は?」
女
「リサ」
男
「俺は——」
その瞬間。
女が消えた。
男は周囲を見る。
「……なるほど」
中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は空を見る。
「静かな戦場だ」
次の瞬間。
男も消えた。
広場には誰もいない。
昼の風だけが吹いていた。




