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臨界(仮)  作者: vastum


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18/19

18話

夕方だった。


広場は橙色の光に包まれていた。


石畳の上を風がゆっくりと流れていく。

遠くで鳥が鳴いた。


中央には剣が刺さっている。


何十本もの剣が地面に突き立ち、

錆びた鎖で束ねられていた。


カチャ……


鎖が揺れる。


その近くに、一人の男が立っていた。


背の高い男だった。


長い剣を腰に差している。


男は中央の剣を見上げた。


「……見事だな」


一本の柄に触れる。


びくともしない。


「抜けないか」


その時。


石畳を踏む足音がした。


振り向く。


若い女が立っていた。


旅装の格好。

腰には短剣。


女は周囲を見回す。


「……どこ?」


男が答える。


「知らない」


女は少し笑う。


「やっぱり」


「君もか」


女は中央の剣を見る。


「すごい数」


「そうだな」


女は鎖に触れる。


カチャ……


「重い」


「かなり古い」


「戦場かな」


「違う気がする」


「どうして」


男は夕焼けの空を見る。


「静かすぎる」


女は頷いた。


「確かに」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


女が空を見る。


「綺麗な夕日」


「そうだな」


「こういう時間好き」


「俺もだ」


少し沈黙。


虫の声が聞こえる。


女が聞く。


「剣士?」


男は頷く。


「そんなところだ」


「強そう」


男は少し笑う。


「普通だ」


「嘘」


「なぜ」


「目」


男は肩をすくめる。


「そうか」


風が吹く。


草が揺れる。


男が聞く。


「名前は?」


「ミラ」


「俺は——」


その瞬間。


女が消えた。


男は少しだけ驚く。


「……」


中央の剣を見る。


夕日が沈み始めていた。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は空を見る。


「いい夕焼けだ」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。

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