18話
夕方だった。
広場は橙色の光に包まれていた。
石畳の上を風がゆっくりと流れていく。
遠くで鳥が鳴いた。
中央には剣が刺さっている。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
錆びた鎖で束ねられていた。
カチャ……
鎖が揺れる。
その近くに、一人の男が立っていた。
背の高い男だった。
長い剣を腰に差している。
男は中央の剣を見上げた。
「……見事だな」
一本の柄に触れる。
びくともしない。
「抜けないか」
その時。
石畳を踏む足音がした。
振り向く。
若い女が立っていた。
旅装の格好。
腰には短剣。
女は周囲を見回す。
「……どこ?」
男が答える。
「知らない」
女は少し笑う。
「やっぱり」
男
「君もか」
女は中央の剣を見る。
「すごい数」
男
「そうだな」
女は鎖に触れる。
カチャ……
「重い」
男
「かなり古い」
女
「戦場かな」
男
「違う気がする」
女
「どうして」
男は夕焼けの空を見る。
「静かすぎる」
女は頷いた。
「確かに」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
女が空を見る。
「綺麗な夕日」
男
「そうだな」
女
「こういう時間好き」
男
「俺もだ」
少し沈黙。
虫の声が聞こえる。
女が聞く。
「剣士?」
男は頷く。
「そんなところだ」
女
「強そう」
男は少し笑う。
「普通だ」
女
「嘘」
男
「なぜ」
女
「目」
男は肩をすくめる。
「そうか」
風が吹く。
草が揺れる。
男が聞く。
「名前は?」
女
「ミラ」
男
「俺は——」
その瞬間。
女が消えた。
男は少しだけ驚く。
「……」
中央の剣を見る。
夕日が沈み始めていた。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男は空を見る。
「いい夕焼けだ」
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




