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臨界(仮)  作者: vastum


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16話

朝だった。


広場にはやわらかな光が差している。


石畳の隙間から伸びた草に、

朝露が光っていた。


中央には剣が刺さっている。


何十本もの剣が地面に突き立ち、

錆びた鎖で束ねられている。


カチャ……


風が吹く。


鎖が揺れる。


その近くに、一人の少年が立っていた。


まだ幼い。


背には大きな剣。


少年は剣の束を見上げていた。


「……すごい」


一本の柄に触れる。


「重い」


その時。


石畳を踏む音がした。


振り向く。


ローブを着た老人が立っていた。


長い杖を持っている。


老人はゆっくりと広場を見回す。


「……また知らぬ場所だ」


少年が言う。


「おじいさん、ここ知ってる?」


老人は首を振る。


「知らん」


少年

「僕も」


二人は中央の剣を見る。


老人が言う。


「不思議な場所だ」


少年

「そうかな?」


老人

「静かすぎる」


少年は少し笑う。


「いいじゃん」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


朝日が剣を照らしていた。


少年が空を見る。


「気持ちいい朝」


老人も空を見る。


「……そうだな」


少し沈黙。


鳥が空を横切る。


老人が聞く。


「旅か」


少年は頷く。


「うん」


老人

「初めてか」


少年

「昨日村を出た」


老人は少し笑う。


「勇敢だな」


少年

「強くなる」


老人

「なぜ」


少年は少し考える。


「約束したから」


老人は頷いた。


「良い理由だ」


風が吹く。


草が揺れる。


少年が聞く。


「おじいさんは?」


老人

「旅の終わりだ」


少年

「帰るの?」


老人は空を見る。


朝の光。


「そうかもしれん」


少し沈黙。


少年が言う。


「名前聞いていい?」


老人

「グレン」


少年

「僕は——」


その瞬間。


少年が消えた。


老人は中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


老人は小さく笑った。


「面白い」


次の瞬間。


老人の姿も消えた。


広場には誰もいない。


朝の風だけが吹いていた。

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