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臨界(仮)  作者: vastum


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15/20

15話

夜だった。


月が高く、広場を白く照らしている。


石畳の影が長く伸びていた。

遠くで虫の声が聞こえる。


中央には剣が刺さっている。


何十本もの剣が地面に突き立ち、

錆びた鎖で束ねられていた。


カチャ……


風が吹き、鎖が鳴る。


その近くに、一人の男が立っていた。


長い外套。

背には大きな荷物。


男はゆっくりと広場を見回した。


「……また迷ったか」


男は地図を取り出す。


古い紙だった。


だが、広場は地図に載っていない。


男は中央の剣を見る。


「こんな場所、記憶にない」


一本の柄に触れる。


冷たい。


その時。


足音がした。


振り向く。


鎧を着た女が立っていた。


背には槍。


女は広場を見回す。


「……ここは」


男が答える。


「それを考えていた」


女は少し警戒する。


「あなたも?」


男は頷く。


「気づいたらここだ」


女は中央の剣を見る。


「すごい数」


「そうだな」


女は鎖に触れる。


カチャ……


「古い」


「かなりな」


「戦場の跡?」


「違う気がする」


「どうして」


男は空を見る。


満天の星だった。


「静かすぎる」


女は頷く。


「確かに」


風が吹く。


草が揺れる。


女が言う。


「星が綺麗」


「そうだな」


「夜の空は好き」


「旅の楽しみだ」


少し沈黙。


虫の声が聞こえる。


女が聞く。


「あなたは旅人?」


「そうだ」


「私は兵士」


男は笑う。


「どちらも似たようなものだ」


女は少し笑った。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男が聞く。


「名前は?」


「エナ」


「私は——」


その瞬間。


女が消えた。


男は少しだけ空を見上げる。


「……そういう場所か」


中央の剣を見る。


月が刃を照らしていた。


男は地図を畳む。


「覚えておこう」


次の瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


月と風だけが残っていた。

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