14話
夕方だった。
空はゆっくりと赤く染まり始めている。
石畳の広場には風が吹いていた。
草が静かに揺れている。
中央には剣が刺さっていた。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
錆びた鎖で束ねられている。
カチャ……
鎖が鳴る。
その近くで、一人の青年が座っていた。
背の低い石に腰掛けている。
ぼんやり空を見ていた。
「……またこの夢か」
青年は小さく笑った。
中央の剣を見る。
「毎回ここだな」
その時。
足音がした。
振り向く。
大きな斧を背負った男が立っていた。
筋肉質の男だった。
男は広場を見回す。
「……どこだここ」
青年は言う。
「夢だよ」
男は眉をひそめた。
「夢?」
青年は頷く。
「たぶんね」
男は中央の剣を見る。
「妙にリアルだ」
青年
「そういう夢あるだろ」
男
「あるな」
二人は中央の剣を見る。
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
男が言う。
「戦場か?」
青年
「違うと思う」
男
「どうして」
青年は空を見る。
夕焼けだった。
「静かすぎる」
男は頷く。
「確かに」
少し沈黙。
鳥が空を横切る。
男が聞く。
「お前、何してた」
青年
「寝てた」
男
「俺は山だ」
青年は笑う。
「熊でもいた?」
男は笑った。
「いた」
風が吹く。
草が揺れる。
男が聞く。
「ここ夢なら」
青年
「うん」
男
「何してもいいのか」
青年は肩をすくめる。
「たぶん」
男は中央の剣を見る。
「抜けないかな」
柄を掴む。
引く。
びくともしない。
男
「抜けない」
青年
「夢でも無理か」
男は笑った。
「変な夢だ」
青年
「そうだな」
夕日が沈み始めていた。
青年が言う。
「綺麗な夕日」
男も空を見る。
「……ああ」
少し沈黙。
男が聞く。
「名前は?」
青年
「リオ」
男
「俺は——」
その瞬間。
男が消えた。
青年は空を見たまま言う。
「おやすみ」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
青年は立ち上がる。
「そろそろ起きるかな」
次の瞬間。
青年も消えた。
広場には誰もいない。
夕焼けと風だけが残っていた。




