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臨界(仮)  作者: vastum


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13/24

13話

夕方だった。


空は橙色に染まり始めている。


石畳の広場は静かだった。

遠くで鳥が鳴いている。


中央には剣が刺さっている。


何十本もの剣が、錆びた鎖で束ねられていた。


カチャ……


風が吹き、鎖が鳴る。


その近くに、一人の少女が立っていた。


長い黒髪。

白いワンピース。


少女は中央の剣を見上げている。


「……」


しばらく動かない。


風が吹く。


少女は一本の柄に触れた。


「重い」


小さく呟く。


その時。


石畳を歩く音がした。


振り向く。


鎧の男が立っていた。


大きな剣を背負っている。


男は少女を見る。


少し驚いた。


「……子供?」


少女は首をかしげる。


「そう見える?」


男は困った顔をした。


「ここはどこだ」


少女は少し考える。


「知らない」


「君も?」


少女

「気づいたらいた」


男は中央の剣を見る。


「妙な場所だ」


少女

「そう?」


「戦場でもない」


少女

「うん」


「墓でもない」


少女

「うん」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


夕焼けが剣を赤く照らしていた。


男が空を見る。


「綺麗な夕焼けだ」


少女も空を見る。


「好き」


「夕焼けが?」


少女

「うん」


少し沈黙。


虫の声が聞こえる。


男が聞く。


「君はどこから来た」


少女

「遠く」


男は笑う。


「それじゃ分からん」


少女は少し笑った。


「そうだね」


「俺は北の戦場だ」


少女

「大変」


「そうでもない」


風が吹く。


草が揺れる。


男が聞く。


「名前は?」


少女は少し考える。


「……ミナ」


「俺は——」


その瞬間。


男が消えた。


少女は驚かない。


ただ中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


少女は小さく呟いた。


「またね」


次の瞬間。


少女も消えた。


広場には誰もいない。


夕焼けと風だけが残っていた。


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