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野良のテイムモンスターがあらわれた! 気がついたら不人気モンスターだったので、ゲームの世界でひっそり生きたいと思います  作者: 明和里苳


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第7話 古巣のモンスター

 あれから俺も考えた。そもそも俺は、舐めプ(なめたプレイ)しすぎだったんじゃないか。いくら人間時代の俺がこの世界をプレイしていたとはいえ、ゲームとリアルでは雲泥の差がある。そもそも今の俺はプレイヤーですらない、一体の野良モンスター。自分のテリトリーを離れ、海や砂漠で無双しようなどという発想がおこがましかったのだ。ここは一旦初心に帰り、計画を練り直さなければなるまい。


 というわけで、俺は古巣へと舞い戻ってきた。


 ピチャン、ピチャン。


(ううっ、臭いでピ!)(ビチビチ!)(ズモ……)(ビビビ……)(ゴロ……)


 俺の中から不満の大合唱。それもそうだ。ここは下水道、悪臭と不潔の殿堂。ほとんどの生き物が好んで住む場所ではない。大抵の環境をものともしないロックイワが退くほどだ。


「コホオオオオオ」


 しかし俺にとっては圧倒的ホーム感。この薄暗さ、この湿度、濁った水音が最高に馴染む。そしてそれがまた、人間だった俺のSAN値(サンち)を直撃する。下水道に癒される俺に絶望する俺。救いがナッシング。




 そもそも俺は、キュブモン「槍」のイベントモンスターだ。「下水道で異常発生したマッドスライムを撃退しよう」というクエストを受注すると、ボスとして現れる。このイベントはメインクエストとは関係がなく、必ずしもこなす必要はないが、難易度が低い割に経験値が美味しい。そして初心者にも簡単にクリアできるよう、アドバイスを与えるNPCが手厚く配置されている。いわば初心者用のお助けクエスト、エクストラチュートリアルのようなものだ。


 普通は俺を討伐して終了、「みんな環境に優しくね!」で終わるクエストなのだが、弱った俺をキューブで捕えると、それなりに強いキュブモンとして活躍する。ただし俺を連れて街に入ると、名声値に強いマイナス補正がかかり、街の人に避けられたり罵声を浴びせられたり、施設によっては入れなかったり一定のサービスが受けられなかったりする。だからワメーバの運用は、基本キューブに塩漬け。フィールドに出て、初めてバトルに出すというのが定石じょうせきだ。したがって、俺を徹底的に冷遇した元マスターの挙動。実はあれが正解なのだ。


 なお、マッドスライムの異常発生とワメーバの誕生のくだりについては、物語終盤に種明かしクエストが用意されている。下水に投棄された薬品や廃棄物、ヒトから発生した負の感情、大事にされなかったキュブモンたちの怒りや悲しみ、そういった穢れが凝縮して、人型を真似るマッドスライムが出来上がったということだ。序盤で俺を討伐しなかった場合、街のあちこちで黒い人影を見かけるという不可解な事件が起こる。大量発生したスライムを取り込み、擬似人格を得てパワーアップしたワメーバを退治してみれば、実は工業排水と某実験施設の薬液が悪さをしていたというストーリーだ。そして俺が倒された後、不正が明るみになり、下水に溜まっていた穢れや人々の不安が一気に明るくなるんだが、俺のこの世界への貢献度って高くないか。神話には穢れから生まれた神様もいるくらいだ、もうちょっと待遇が良くてもバチは当たらないと思うんだが。


 話が逸れたが、そういうわけで俺はここに戻って来た。元マスターがワメーバ討伐クエストをこなした結果、マッドスライムは大幅に減ってしまったわけだが、元々ここは奴らの生息地。素材になる汚水は常に流れている。ここで無限に湧くスライムを取り込んでいれば、終盤にボスとして活躍するほどの強力なワメーバへと成り上がるのだ。地上生活はその後で考えればいい。


「クチャァ……」「クチャ、クチャァ……」


「コホオオオオオ」


 水路から這い上がるスライムを、毒ガスで溶かして取り込む。というか、俺の本体と毒ガス、マッドスライムとは、ほぼ同じ物質で出来ている。俺の一部を伸ばして同化するという方が、正しい表現かもしれない。


 生まれたばかりのスライムには、自我や思考は存在しない。ただ人の負の感情を内包している分、元々ダウナー気味な俺のテンションがじわじわ下がっていく感覚はある。


(チュピイイ!)(ビチ……)(ゴロォ……)


 そしてパワーアップと比例するように、俺の中の他のモンスターたちの不快感ボルテージが上がっていく。とかく世の中ままならぬ。

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