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野良のテイムモンスターがあらわれた! 気がついたら不人気モンスターだったので、ゲームの世界でひっそり生きたいと思います  作者: 明和里苳


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第6話 砂漠のモンスター

 当初の予定では、無害な海辺の植物を装って、通りかかった小魚なんかをバックリやろうと思ってたんだけど、トレントーがデカくなりすぎた結果、奴は使えなさそうだ。目立って仕方ない。レイドバトルもやっちゃったことだし。しかし毒霧で植物モンスターを一掃し、地中のモンスターを根こそぎ吸収した俺は、その手軽さが忘れられない。人生って、あんなにチョロくてよかったのか。一度射倖心を覚えてしまったら抜け出せない、まるでギャンブル中毒。次はどうやってごっそり儲けようか。


 違うそうじゃない。俺の目的はキュブモン集めではなかったはず。そもそも最初は、生き延びたいという一心でモコチュウに変化したはずだ。安全で退屈しないキュブモンライフを満喫しなければ。


 しかし人間として生きた記憶のある俺には、圧倒的に娯楽が足りない。てか、キュブモンの身で娯楽って、一体なにをすれば。そういえば人間だった頃は、会社と家との往復で、休みといえば一日中寝転がってゲームをするか、動画でも見るかって感じだった。俺は前世から娯楽とは無縁の人生だったらしい。


 もはやこうなれば、キュブモン収集くらいしかやることはない。そしてあらゆるキュブモンに擬態しながら、世界旅行にでも出かけてみよう。とりあえず次の目的地といえば、隣の砂漠エリアだろうか。俺はゲームではプレイしたことあるものの、実際の砂漠は未踏。ちょっとワクワクする。




 毎回こんなこと言ってる気がする。砂漠舐めてた。


 砂の中には岩タイプのモンスターが多く潜んでいる。ここは岩タイプに強い植物タイプ、初手トレントーで入れ食いしようとしたのだが、あの巨体は遠くからでも目立つ。というわけで、ちょっと小さめのマンドラゴーラに変化して根を張ってみたのだが――


「ゴラ……」


 ゲームのバトルと違い、砂漠で根を伸ばすのはみるみる体力を消費する。うっかり強いダメージ床を踏んで、3歩歩いたら瀕死みたいな状態に。まあそうだよな、ここマンドラゴーラ生息してないもん。普通に枯れる。


 というわけで、入れ食いは諦めて地味に行こう。とりあえずいつものロックイワから。


「ゴロゴロゴローン」


 コイツは岩タイプなのだが、格闘技も持っている。格闘技は岩タイプに効果覿面だ。砂の中から出てきた小物たちを、正拳パンチで各個撃破。しかし。


「シュビビビ!」


 背後からチクチク刺されてる。サボテンモンスターのシャボテが、針を飛ばして遠隔攻撃だ。岩は植物に弱い、しかも近距離専門のロックイワはやられたい放題。


「コホオオオオオ」


 しかし残念だったな、俺の正体はワメーバ。ロックイワの後頭部から自前の頭を生やし、毒霧を吐いて一斉掃射。植物は毒に弱いのだ。




 討伐するのに一番手こずったのが、虫タイプ。コイツらはすばしっこく、毒にもある程度耐性を持っている。倒すのに一番いいのは機動力で上回るモンスターで当たること、火で焼くこと、もしくは強い力で叩き潰すことだ。しかし俺の中には火属性、飛行属性の強いモンスターがいない。結局ロックイワで殴ることになるんだが、これがまあ当たらない。遅いからな。


「シャキイイイン!」


 格下のくせに鈍重なロックイワを狙い、カサカサとやってきてはサクサクと刺していくサッソリー。


 しかし ロックイワの攻撃は はずれた!

 しかし ロックイワの攻撃は はずれた!

 しかし ロックイワの攻撃は はずれた!


 正拳突きがことごとく空を切る中、ダメージだけが蓄積していく。そしてダメージゲージが溜まり、必殺爆裂拳が繰り出せる段になると、嘲笑うかのようにカサカサと逃げていくのだ。ストレス社会!


「ゴロオオオオン!」


 サソリに悩まされること三日。俺はヒールで回復することも忘れ、ついに爆裂拳をぶっ放した。爆裂拳はHPが1になってしまう自爆技だ、迂闊に放っていいものではない。しかし来る日も来る日もカサカサチクチク、俺のメンタルは限界だ。周りにどんなモンスターがいるかわからんが、くらえ! 俺の八つ当たり!


「シャキイイイン?!」


 驚いた。ゲームではわからなかったが、爆裂拳の効果範囲は思ったより広かったらしい。さっき俺を散々刺してバカにしたように逃走をキメていたサッソリーが、岩の弾丸を浴びて目を剥いている。俺はすかさずヒールで回復、脚をやられたサッソリーを易々と捉えてとどめを刺した。


 こうしてスナバ砂漠の戦いは終わった。当初計画していた入れ食いレベルアップもエキゾチックトラベルも叶わなかったが、付近のモンスターは辛うじてコンプしたから良しとしよう。俺は散々悩まされた憎きサッソリーに変化して、カサカサと砂漠を後にするのだった。

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